ダノン(Danone)は、フランスのパリに本社を置き、ヨーグルトやオーツミルク、飲料水などを販売している企業です。世界120カ国以上の市場で事業を展開しています。本記事ではダノンの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。
ダノンとはどんな会社
出典:ダノン
ダノンは100年以上の歴史を持ち、日本との関わりも深い企業です。日本では、「ダノンビオ」「ダノンヨーグルト」「エビアン」などのブランドで知られています。この章では、同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
ダノンの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Danone S.A. |
本社 | フランス |
設立 | 1919年 |
進出地域 | 120カ国以上 |
従業員数 | 96,000人 |
売上高 | 276億ユーロ(2023年度) |
歴史
1919年に、創業者のアイザック・カラソー氏がヨーグルトの工業化に成功し、ダノンを設立しました。1929年に、息子のダニエル・カラソー氏がフランスのパリで「ダノン」を展開します。
1967年に、フランスのフロマージェリーズ・ジェルベと合併したことで、ダノンはフランス最大の乳製品企業となりました。1986年には、フランスのジェネラル・ビスキュイ社を買収し、ビスケット事業においてヨーロッパ最大手に成長します。
1990年には、東ヨーロッパ市場への投資を拡大し、食品事業においてヨーロッパ大手になりました。2001年には、アメリカのストーニーフィールド社を買収し、チルド乳製品、ウォーター、ビスケットの3事業のリーダー企業に成長します。
2007年には、ビスケット事業をアメリカの「クラフト社」に売却し、2010年には、ロシア最大手乳製品企業「ユニミルク」を買収しました。さらに2017年には、アメリカ最大手のオーガニック食品企業のホワイトウェーブ・フーズを買収しました。
このようにダノンは買収により、事業規模の拡大に成功した企業と言えます。
経営理念
2017年よりダノンのビジョンは、「One Planet. One Health(ひとつの地球、ひとつの健康)」です。同社のビジョンは、人々の健康と地球の健康は相互関係にあるというダノンの考えを示しています。
そして、ミッションは「世界中のより多くの人々に食を通じて健康をお届けする」です。このミッションに基づき、多角化し過ぎた事業を見直し、2007年にビスケット事業を売却しました。現在は、幼児から高齢者まで、あらゆる年齢層の健康に役立つ製品を展開しています。
ダノンの経営状況
ダノンの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
2023年度の売上高は276億ユーロ(4兆1,400億円)で、2022年度の売上高を維持しました。一方、2023年度の営業利益は20億ユーロ(3,000億円)で、2022年度の21億ユーロ(3,150億円)から1億ユーロ(150億円)減少しました。※1ユーロ=150円換算
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
グラフから、ダノンは世界各地で売上高を確保していることがわかります。
ダノンの製品別売上高の推移
ダノンの経営状況を深掘りするために、製品別売上高に焦点を当てて解説します。製品別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
ダノンは、EDP(乳製品と植物性食品)と専門栄養食品が主要製品で、全体の83.6%を占めています。さらに、各製品の売上高と営業利益の推移を紹介します。
EDP(乳製品と植物性食品)
EDP(乳製品と植物性食品)は、ヨーグルトやオーツミルクなどの製品が該当します。同製品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。※オーツミルクとは、オーツ麦から作られる植物性のミルクです。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
2023年度の売上高は143億ユーロ(2兆1,450億円)で、2022年度の147億ユーロ(2兆2,050億円)から4億ユーロ(600億円)減少しました。一方、2023年度の営業利益は12億2,000万ユーロ(1,830億円)で、2022年度の12億ユーロ(1,800億円)から2,000万ユーロ(30億円)増加しました。営業利益が増加した要因として、ヨーロッパにおける販売数の増加が挙げられます。
専門栄養食品
専門栄養食品は、幼児向け栄養食や医療用栄養食などの製品が該当します。同製品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
2023年度の売上高は85億ユーロ(1兆2,750億円)で、2022年度の83億ユーロ(1兆2,450億円)から2億ユーロ(300億円)増加しました。一方、2023年度の営業利益は17億7,000万ユーロ(2,655億円)で、2022年度の17億9,000万ユーロ(2,685億円)から2,000万ユーロ(30億円)減少しました。売上高が増加した要因として、アジアや中東における販売数の増加が挙げられます。
ウォーター
同社の飲料水のブランドには、「エビアン」や「アクア」などがあります。ウォーター製品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ダノン「Registration documents/URD and consolidated financial statements」
2023年度の売上高は47億ユーロ(7,050億円)で、2022年度の45億ユーロ(6,750億円)から2億ユーロ(300億円)増加しました。2023年度の営業利益は4億8,000万ユーロ(720億円)で、2022年度の3億7,000万ユーロ(555億円)から1億1,000万ユーロ(165億円)増加しました。2023年度のウォーター製品は、全地域で売上高が増加しています。
ダノンの成長戦略
ダノンの2025年から2028年にかけての中期戦略は、「Renew strategy(リニュー戦略)」です。その中期戦略において、以下の項目に取り組むことを発表しています。
- プロテインと腸の健康に関するカテゴリーの取り組み方を段階的に変えていくこと。
- 医療栄養分野の事業を拡大し、加速させること。
- 地理的な拠点をさらに拡大すること。
ダノンはローカルファーストを重視
ダノンは100年以上の歴史を持つ企業で、120カ国以上で事業を展開しています。日本でも1992年に「ダノンジャパン株式会社」を設立し、日本市場向けの製品を提供しています。その一例が、離乳期の乳幼児向けのヨーグルト「ベビーダノン」です。この製品は離乳食として、多くの家庭から支持されており、ダノンが日本のニーズに合わせて商品を開発していることを示しています。
このように、ダノンは「ローカルファースト」(地域のニーズを重視する姿勢)を大切にし、各国の市場に合った商品展開と積極的な買収によって事業を拡大してきました。海外進出を検討している経営者様は、同社の展開方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。