アルケマ(Arkema)とはどんな会社?会社概要や業績を解説

アルケマ(Arkema)は、フランスに本社を置く化学メーカーです。世界55カ国に拠点を持ち、日本では東京と京都に拠点があります。京都の拠点では、2024年7月に新たにイノベーションラボを開設しました。これにより、接着剤用途のUV(紫外線)/LED(発光ダイオード)/EB(電子ビーム)硬化性樹脂、添加剤のイノベーションを加速させるとのことです。本記事ではアルケマの会社概要や経営状況、成長戦略について詳しく解説します。

参考:アルケマ「アルケマ、京都テクニカルセンターにUV/LED/EB技術イノベーションラボを開設

アルケマとはどんな会社

出典:アルケマ

アルケマは先端材料や接着剤ソリューション、コーティングソリューション、中間体の4つの事業を展開している化学メーカーです。同社の製品やサービスは、自動車・化粧品・航空・包装・電化製品・スポーツ用品など、様々な分野で利用されています。この章では、アルケマの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。※中間体とは、原料から目的の化合物になるまでの途中の化合物です。

会社概要

アルケマの会社概要は以下のとおりです。

会社名Arkema S.A.
本社フランス
設立2004年
生産拠点55カ国に151拠点
ヨーロッパ:60カ所
北アメリカ:44カ所
アジア:34カ所
その他:13カ所
従業員数21,100人(2023年度)
売上高95億ユーロ(2023年度)

歴史

アルケマは、2004年にトタルエナジーズの化学部門の再編により設立されました。アルケマの歴史の特徴は、イノベーションやターゲットを絞った買収により、事業拡大や海外進出を推進してきたことです。そこで、これまでに買収した企業の一例を紹介します。

  • 2007年:塗料やコーティング剤、包装材に使われるレオロジー添加剤のCoatexを買収
  • 2010年:ダウ・ケミカル社からアクリルモノマー及びエマルジョン事業を買収
  • 2011年:トタルグループからサートマー及びクレイバレー特殊樹脂事業を買収
  • 2015年:特殊接着剤の世界第3位のボスティック社を買収
  • 2016年:断熱材及び建築用高性能シーラントのデン・ブレイベンを買収
  • 2017年:軟質床材用接着剤のアメリカ企業XL Brandsを買収
  • 2020年:高性能熱接着粉末を専門とするFixatti社を買収

これらの買収により、2023年にはTIME誌の「2023年の世界最優秀企業」の1つに選出されるほどに、世界的な知名度と実績を持つ企業に成長しています。

※トタルエナジーズは、1924年に創業した石油・天然ガスなどを生産・販売する大手エネルギー企業です。

経営理念

アルケマは経営理念として、以下の5つの柱を掲げています。

  • ソリダリティー(連帯)

「One Arkema」を合言葉に、団結・連帯すること。

  • パフォーマンス(成果)

財務パフォーマンスや業務パフォーマンス、質的かつ統合的なパフォーマンスを高めること。

  • シンプルさ

本質的なことに集中できるように物事をシンプルに提示する方法を知ること。

  • エンパワーメント(権利委譲)

エンパワーメントは信頼に基づく関係性のことで、相手が前進できることを信頼し、その信頼に応えること。

  • インクルージョン(包括)

多様性はグループが目標を達成するための不可欠な資産で、全員が関与する必要があること。

アルケマの経営状況

アルケマの経営状況として、過去6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。

参考:アルケマ「Key figures

2023年度の売上高は95億ユーロ(1兆4,250億円)で、2022年度の115億ユーロ(1兆7,250億円)から20億ユーロ(3,000億円)減少しました。2023年度の営業利益は6億8,000万ユーロ(1,020億円)で、2022年度の12億8,000万ユーロ(1,920億円)から6億ユーロ(900億円)減少しました。経営状況が悪化した要因として、全体的な需要の低迷による販売数の減少が挙げられます。※1ユーロ=150円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アルケマ「Financial results

地域別売上高の構成割合から、同社は北アメリカ・ヨーロッパ・アジアの経済圏で売上を確保していることがわかります。

アルケマの事業別売上高の推移

アルケマの経営状況を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アルケマ「Financial results

スペシャリティ材料を取り扱う事業(先端材料・接着剤ソリューション・コーティングソリューション)が、全体の売上高の92%を占めています。

先端材料

先端材料事業は高機能ポリマーやフッ素ポリマー、有機過酸化物などを製造・販売する事業です。売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:アルケマ「Financial results

2023年度の売上高は35億ユーロ(5,250億円)で、2022年度の43億ユーロ(6,450億円)から8億ユーロ(1,200億円)減少しました。2023年度の営業利益は2億6,000万ユーロ(390億円)で、2022年度の5億6,000万ユーロ(840億円)から3億ユーロ(450億円)減少しました。営業利益と売上高が減少した要因として、製品価格の低下と販売数の減少が挙げられます。

接着剤ソリューション

接着剤ソリューション事業は、工業用や家庭用の接着剤を製造・販売する事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アルケマ「Financial results

2023年度の売上高は27億ユーロ(4,050億円)で、2022年度の28億ユーロ(4,200億円)から1億ユーロ(150億円)減少しました。一方、2023年度の営業利益は1億5,000万ユーロ(225億円)で、2022年度の1億3,000万ユーロ(195億円)から2,000万ユーロ(300億円)増加しました。売上高が減少した要因として、製品価格は上昇したものの、需要の低迷により販売数が減少したことが挙げられます。

コーティングソリューション

コーティングソリューション事業はアクリルや添加物、光硬化樹脂などを製造・販売する事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アルケマ「Financial results

2023年度の売上高は24億ユーロ(3,600億円)で、2022年度の32億ユーロ(4,800億円)から8億ユーロ(1,200億円)減少しました。2023年度の営業利益は1億9,000万ユーロ(285億円)で、2022年度の4億6,000万ユーロ(690億円)から2億7,000万ユーロ(405億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、製品価格と販売数の大幅な減少が挙げられます。

中間体

中間体事業は、エアコンや冷蔵、冷凍庫の触媒に使われるフルオロガスを製造・販売する事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アルケマ「Financial results

2023年度の売上高は7億ユーロ(1,050億円)で、2022年度の10億ユーロ(1,500億円)から3億ユーロ(450億円)減少しました。2023年度の営業利益は1億7,000万ユーロ(255億円)で、2022年度の2億6,000万ユーロ(390億円)から9,000万ユーロ(135億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、販売数の減少が挙げられます。※2021年度の営業利益が増加した要因は、PMMA(アクリル樹脂)及び機能性ポリオレフィンの事業の売却によるものです。

アルケマの成長戦略

アルケマは成長戦略の目標として、「2028 ambition」を掲げています。具体的な目標は以下のとおりです。

  • 2028年までに売上高120億ユーロの達成
  • 2024年~2028年にかけて、売上高の年平均成長率4%を達成
  • 株主還元は2024年~2028年にかけて、過去5年間と比較して30%の増加
  • 2050年までにネットゼロの達成

※ネットゼロは温室効果ガスの排出量と削減量を合算して正味ゼロにすること。

また、アルケマは今後の成長を牽引する市場として、以下の5つを重要視しています。

  • グリーンエネルギーと電気自動車
  • 先進的な電子機器
  • 持続可能なライフスタイル
  • 効率的な建物と住宅
  • 水ろ過、医療機器、作物の肥料

これらの分野で、アルケマは年間12%の成長を目指しています。

アルケマの事業展開の仕方を参考にしよう

アルケマは55カ国に151拠点を持つ、世界的な化学メーカーです。設立から20年でここまで事業を拡大できた要因の1つは、積極的に買収を行う経営手法です。そのため、事業拡大や海外進出を検討している経営者様は、アルケマの事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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