ミシュランは130年以上の歴史を持つ、世界最大級のタイヤメーカーです。本記事では「ミシュランってどんな会社?」や「最近の業績はどうなの?」という疑問をお持ちの方に向けて、ミシュランの会社概要や事業内容、業績などを徹底解説します。
ミシュランとはどんな会社?
出典:ミシュラン「Michelin heritage」
ミシュランはフランスに本社を置き、世界中に展開しているタイヤメーカーです。また、1964年に日本でのタイヤ事業を開始しており、日本と古くから関係を構築しています。この章ではミシュランの会社概要や歴史、事業内容を紹介します。
会社概要
ミシュランの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | COMPAGNIE GÉNÉRALE DES ÉTABLISSEMENTS MICHELIN |
本社 | フランス |
設立 | 1889年 |
従業員数 | 132,500人(2023年時点) |
拠点 | タイヤ生産:86拠点 ハイテク素材・生産設備:45拠点 |
ブランド数 | 120以上 |
売上高 | 283億ユーロ(2023年) |
ミシュランは「ミシュラン」ブランドだけではなく、クレベールやストミール・オルスチン、タイガー・タイヤなど120以上のブランドがあります。このようにマルチブランド戦略をとっているのがミシュランの特徴です。
また、ミシュランは世界的に有名なグルメガイドの「ミシュランガイド」を発刊している企業としても知られています。
歴史
ミシュランは1889年、アンドレ・ミシュラン氏とエドゥアール・ミシュラン氏の兄弟により設立されました。1891年、当時の自転車のタイヤは接着されており修理が困難な状態でした。そこでミシュランは取り外しが可能なタイヤを開発します。
1895年には開発した自動車用タイヤをエクレールという車両に付けて、パリ・ボルドーレースに出場します。レースでは優勝を逃したものの、タイヤの信頼性・耐久性・安全性・快適性を示しました。1946年には従来のタイヤよりも2~4倍という驚異的な長寿命で、高い安全性を実現したラジアルタイヤの開発に成功します。
1975年、ラジアルタイヤで成功を収めたミシュランは米国に4つの生産拠点を建設します。さらに1980年代・1990年代にかけて海外進出を推進し、日本・タイ・韓国・中国・スロバキアなどに新しい工場を建設しました。
2019年、エアレスタイヤの開発に成功します。エアレスタイヤは空気を利用しないため、パンクしないタイヤとして注目を集めています。
事業内容
ミシュランの事業内容は主にタイヤの開発・製造です。世界に86のタイヤ生産拠点を有しており、年間2億本のタイヤを生産しています。乗用車だけではなく、大型トラック・小型トラック・航空機用タイヤなど、多種多様のタイヤを製造している点が特徴です。
また、タイヤ部門以外にもハイテク素材部門があり、ハイテク繊維やフィルムの開発・販売をしています。2023年にはハイテク素材を専門とするフランスのFlex Composite Group(FCG)を買収し、ミシュランのハイテク素材部門の売上が約20%増加する見込みです。
ミシュランの経営状況
ミシュランの経営状況を売上高・営業利益の推移から分析します。直近6年間の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Regulatory Information CGEM – AMF」
ミシュランの2023年の売上高は283億ユーロ(4兆2,450億円)、営業利益は27億ユーロ(約4,050億円)でした。前年と比較すると売上高・営業利益ともに減少していますが、どちらも高い水準を維持しています。※1ユーロ=150円換算
また、地域別の売上高は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Regulatory Information CGEM – AMF」
2023年の北米の売上高は110億ユーロ(約1兆6,500億円)、ヨーロッパは98億ユーロ(約1兆4,700億円)でした。なお拠点を置くフランスは、25億ユーロ(約3,750億円)で全体の約8.8%を占めています。全体の売上高が283億ユーロであることから、ミシュランの海外売上比率は91.2%となります。
ミシュランの事業別売上高
ミシュランの業績を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てます。ミシュランの3つの事業、各売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Regulatory Information CGEM – AMF」
グラフからもミシュランは、タイヤ事業が本業であると分かります。ここからは、各事業の内容や売上高・営業利益の推移を紹介します。
自動車用タイヤ及び物流事業部門
自動車用タイヤ及び物流事業部門は、主に乗用車の純正タイヤや交換用タイヤを開発・販売している事業です。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Publications」
2023年の売上高は143億ユーロ(約2兆1,450億円)に達し、前年から売上高・営業利益ともに増加しています。好調の大きな要因は18インチ以上の高級タイヤの販売が拡大したことです。ただし、インド市場では輸入制限により苦戦を強いられており、過去3年間で販売量が90%減少しています。
輸送用タイヤ及び物流事業部門
輸送用タイヤ及び物流事業部門は、主に大型トラック・小型トラック・バンのタイヤを開発・販売している事業です。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Publications」
2023年の売上高は69億ユーロ(約1兆350億円)で、前年より約5億ユーロ(約750億円)の減少となりました。コロナ禍後の2年間は陸上貨物輸送の需要が強く、2021年・2022年の売上を後押ししました。しかし、2023年は需要が一服し、特に欧州における急激な需要の減少が売上高を下げています。
特殊事業部門
特殊事業部門は鉱業用・農業用・建設用のトラックや重機のタイヤ、航空機用タイヤに加えて、ハイテク素材を開発・販売している事業です。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ミシュラン「Publications」
2023年の売上高は前年と同水準の70億ユーロ(約1兆500億円)でした。営業利益は11億ユーロ(約1,650億円)で、前年から1億ユーロの増加となっています。このように好調を維持した要因は、利益率の高い農業トラック事業の成長や航空機用タイヤの需要の拡大が挙げられます。
ミシュランの成長戦略
ミシュランは今後の成長戦略として、タイヤ事業の拡大・投資・革新を進める予定です。特に電気自動車の拡大に伴い、電気自動車専用タイヤの開発・販売でさらなる成長を目指しています。
また、タイヤ関連及びタイヤを超越した事業創設を目指しており、以下の5つの分野を推進する予定です。
- サービス&ソリューション(IoTや収集データを活用したサービスの開発)
- 3D金属プリンティング(製造業者向けのソリューションの展開)
- フレキシブルコンポジット(コンベア・ベルト・コーティング生地などの複合材料)
- 水素モビリティ(水素燃料電池システム)
- 医療機器
ミシュランのCEOフロラン・メネゴー氏は、2030年までに「タイヤに関連した」もしくは「タイヤを超越した」新たな付加価値市場を開拓すると発言しています。
新たな分野に挑戦するミシュランに注目
ミシュランはミシュランガイドで有名ですが、本業は世界最大級のタイヤ事業です。120を超えるブランドで構成されており、タイヤ事業以外にも様々な事業に取り組んでいます。
また、成長戦略として「タイヤ関連」または「タイヤを超越した」事業創設を目指しているのも特徴です。新たな分野への取り組みなど、ミシュランの今後の動向にも注目しましょう。