ロレアル(L’Oreal)は、フランスに本社を置く世界最大の化粧品メーカーです。化粧品やヘアカラー、へアケア、香水などを世界150カ国以上で展開しています。本記事では、ロレアルの会社概要や経営状況、成長戦略を紹介します。
ロレアルとはどんな会社
出典:ロレアル
ロレアルは、100年以上の歴史を持つ化粧品メーカーです。日本においても、「ランコム」「イヴ・サンローラン」「キールズ」などのブランドで知られています。ここでは、同社の会社概要や歴史、経営理念について紹介します。
会社概要
ロレアルの会社概要を紹介します。
会社名 | L’Oréal S.A.(フランス語) |
本社 | フランス |
設立 | 1909年 |
進出地域 | 150カ国以上 |
従業員数 | 90,000人以上(2023年12月31日時点) |
売上高 | 411億ユーロ(2023年度) |
ロレアルは日本とも関係の深い企業です。1963年に日本に進出し、1983年にはアジア初の研究開発施設を東京に開設しました。現在では、日本を戦略的な重要拠点と位置付けています。
歴史
化学者のウジェーヌ・シュエレール氏は、後のロレアルとなるフランス無害染毛株式会社を1909年に設立し、ヘアダイと呼ばれる染毛剤を販売していました。1928年に、バスソープのモンサヴォンを買収します。以降、同社は積極的に企業の買収を続け、事業の拡大に成功しました。1928年以降に買収した企業の一例は以下のとおりです。
1964年:香水のランコムを買収
1970年:スキンケアブランドのビオテルムを買収
1988年:ヘレナ・ルビンスタインを買収
2000年:キールズを買収
2014年:ニックス・コスメティクスを買収
このようにロレアルは、長年にわたって買収を続けることで、現在のブランドポートフォリオを構築しています。
経営理念
ロレアルは経営理念として、以下の6つの価値観を重要視しています。
- 情熱
ウェルビーイング・自信・他者への寛容など、化粧品が人々にもたらす影響への情熱です。
- イノベーション
イノベーションは創業時の価値観の1つで、ビジネスの根幹に位置付けています。
- 起業家精神
起業家精神はロレアルのマネジメントで体現されており、グループの原動力となっています。
- オープンマインド
オープンマインドは、世界中の美への熱望に応えるために絶対的な優先事項としています。
- 卓越性の追求
顧客に最高の製品を届けるために、常により良いものを追求していく姿勢や考え方です。
- 責任
ロレアルの最初の発明である安全な染毛剤に代表されるように、製品の品質やコミュニティに対して責任感を持っています。
ロレアルの経営状況
ロレアルの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
2023年度の売上高は411億ユーロ(6兆1,650億円)で、2022年度の382億ユーロ(5兆7,300億円)から29億ユーロ(4,350億円)増加しました。2023年度の営業利益は81億ユーロ(1兆2,150億円)で、2022年度の74億ユーロ(1兆1,100億円)から7億ユーロ(1,050億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因として、コンシューマー・プロダクツ事業とダーマトロジカル ビューティ事業の好調が挙げられます。※1ユーロ=150円換算
また、地域別売上高の推移は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
グラフより、ロレアルの主要地域はヨーロッパ・北アメリカ・北アジアと言えます。
ロレアルの事業別売上高の推移
ロレアルの経営状況を深掘りするために、事業別売上高に焦点を当てて解説します。まずは、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
さらに、各事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。
コンシューマー・プロダクツ
コンシューマー・プロダクツ事業は、「ロレアル パリ」「メイベリンニューヨーク」「ガルニエ」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ」のブランドを展開している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
2023年度の売上高は151億ユーロ(2兆2,650億円)で、2022年度の140億ユーロ(2兆1,000億円)から11億ユーロ(1,650億円)増加しました。2023年度の営業利益は31億ユーロ(4,650億円)で、2022年度の27億ユーロ(4,050億円)から4億ユーロ(600億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因として、主要ブランドの2桁成長が挙げられます。
ロレアル リュクス
ロレアル リュクス事業は、「ランコム」「イヴ・サンローラン」「ジョルジオ・アルマーニ」などのグローバルブランドを含む26ブランドを運営している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
2023年度の売上高は149億ユーロ(2兆2,350億円)で、2022年度の146億ユーロ(2兆1,900億円)から3億ユーロ(450億円)増加しました。2023年度の営業利益は33億ユーロ(4,950億円)で、2022年度と同水準を維持しました。売上高が増加した要因として、香水の売上拡大が挙げられます。
ダーマトロジカル ビューティ
ダーマトロジカル ビューティ事業は、国際的な6つのスキンケアブランドを展開している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
2023年度の売上高は64億ユーロ(9,600億円)で、2022年度の51億ユーロ(7,650億円)から13億ユーロ(1,950億円)増加しました。2023年度の営業利益は16億ユーロ(2,400億円)で、2022年度の13億ユーロ(1,950億円)から3億ユーロ(450億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因として、中国における業績の好調が挙げられます。
プロフェッショナル プロダクツ
プロフェッショナル プロダクツ事業は、美容師向けの6つのグローバルブランドと3つのローカルブランドを運営している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ロレアル「Annual Reports Archives」
2023年度の売上高は46億ユーロ(6,900億円)で、2022年度の44億ユーロ(6,600億円)から2億ユーロ(300億円)増加しました。2023年度の営業利益は10億ユーロ(1,500億円)で、2022年度の9億ユーロ(1,350億円)から1億ユーロ(150億円)増加しました。売上高と営業利益が増加した要因として、中国とインドの業績の好調が挙げられます。
ロレアルの成長戦略
ロレアルの成長戦略の中でも特徴的なのは、「多極化モデル」「世界各地に拠点を設置」「買収による事業拡大」です。これら3つの成長戦略について解説します。
- 多極化モデル
ロレアルは、成長戦略の1つとして多極化モデルを採用しています。多極化モデルとは、事業や地域、製品などを分散することで、成長の機会を捉えるビジネスモデルです。この戦略をもとに、ロレアルは4つの事業で世界150カ国以上に進出しています。
- 世界各地に拠点を設置
美容分野には極めて多様なニーズがあるため、ロレアルは消費者に近づくために、世界中に20の研究センター・13の評価センター・37の製造拠点を有しています。
出典:ロレアル「Strategy」
- 買収による事業拡大
歴史の章でも紹介したように、ロレアルは積極的な買収で事業を拡大してきた企業です。買収により構築した多様性に富んだブランドポートフォリオが同社の強みとなっています。
ロレアルは企業買収で成功した企業
ロレアルは化粧品やヘアカラー、ヘアケア、香水などを世界150カ国以上に展開する世界最大の化粧品メーカーです。同社は成長戦略として買収による事業拡大を重視しており、100年以上の長い歴史の中で数多くの企業を買収してきました。また、多様な美容ニーズに応えるために、「一人ひとりのための美」を追求した製品を展開しているのも特徴です。海外進出を検討している経営者様は、ロレアルの海外展開・事業展開の仕方を参考にしてみてはどうでしょうか。