エスティ ローダー カンパニーズ(以降は、「ELC」と言います。)は、アメリカに本社を置く世界的な化粧品メーカーです。世界150カ国でスキンケア用品・化粧品・香水・ヘアケア用品を展開しています。本記事ではELCの会社概要や経営状況、成長戦略について解説します。
ELCとはどんな会社
出典:ELC
ELCは「ル ラボ」「ドゥ・ラ・メール」「ジョー マローン ロンドン」など、20のブランドを展開している化粧品メーカーです。この章では、会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
ELCの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | The Estée Lauder Companies Inc. |
本社 | アメリカ |
設立 | 1946年 |
進出地域 | 150カ国 |
従業員数 | 約62,000人(2024年6月30日時点) |
売上高 | 156億ドル(2024年度) |
※ELCの2024年度の期間は、2023年7月1日から2024年6月30日までです。
歴史
ジョセフ・ローダー氏とエスティ・ローダー氏の夫妻は、1946年にELCを設立しました。設立当初は美容クリームやパック、クレンジングオイル、スキンローションの4つのオリジナル商品を販売していました。1960年代には、3つの製造工場の設立や海外展開の開始、2つの主要ブランド「アラミス」と「クリニーク」を立ち上げます。
1993年には中国へ進出し、トミー ヒルフィガーと初のグローバルライセンス契約を締結しました。1994年には化粧品ブランドのマックの株式の過半数を取得し、1995年には、化粧品会社のボビイ ブラウンを買収しました。2012年には、ブランドの「エアリン」を立ち上げ、現在では20のブランドを世界150カ国で展開しています。
経営理念
ELCは経営理念として、以下の6つの価値観を重要視しています。
- 思いやり
他者を元気づけ、地域社会にプラスの影響を与えるときこそ、最高のパフォーマンスを発揮するとのことです。
- 勇敢な粘り強さ
成功への鍵は、運ではなく、粘り強く取り組むことです。
- 最高のビューティスタンダード
上質で心奪われるビューティを提供することです。
- 個人への敬意
クリエイティブでダイナミックな業界リーダーになるために、個性を追求し賞賛することです。
- 妥協のない品質へのこだわり
消費者が喜び、愛され、信頼される製品を生み出すことです。
- 倫理的価値観と統一性
倫理的かつ誠実に行動し、長期的で持続可能な成長に焦点を当てることです。
ELCの経営状況
ELCの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。
参考:ELC「Annual Reports」
2024年度の売上高は156億ドル(2兆3,400億円)で、2023年度の159億ドル(2兆3,850億円)と比較して3億ドル(450億円)減少しました。同様に、2024年度の営業利益は9億ドル(1,350億円)で、2023年度の15億ドル(2,250億円)と比較して6億ドル(900億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、中国事業やアジアの旅行者向け小売事業(免税店など)の低迷が挙げられます。※1ドル=150円換算
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ELC「Annual Reports」
グラフから、ELCは世界中で売上を確保していることがわかります。
ELCの製品別売上高の推移
ELCの経営状況について、製品別の売上高に焦点を当てて解説します。まずは、製品別売上高の構成割合です。
参考:ELC「Annual Reports」
グラフから、ELCの主力製品はスキンケア用品・化粧品・香水です。各製品の売上高と営業利益の推移を紹介します。
スキンケア用品
スキンケア用品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ELC「Annual Reports」
2024年度の売上高は79億ドル(1兆1,850億円)で、2023年度の82億ドル(1兆2,300億円)と比較して3億ドル(450億円)減少しました。同様に、2024年度の営業利益は7億ドル(1,050億円)で、2023年度の12億ドル(1,800億円)と比較して5億ドル(750億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、中国事業やアジアの旅行者向け小売事業の低迷が挙げられます。
化粧品
化粧品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ELC「Annual Reports」
2024年度の売上高は44億ドル(6,600億円)で、2023年度の45億ドル(6,750億円)と比較して1億ドル(150億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は9,000万ドル(135億円)で、2023年度の2,000万ドル(30億円)の赤字と比較して1億1,000万ドル(165億円)増加しました。売上高が減少した要因として、化粧品ブランド「マック」の低迷が挙げられます。
香水
香水の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ELC「Annual Reports」
2024年度の売上高は24億8,000万ドル(3,720億円)で、2023年度の24億5,000万ドル(3,675億円)と比較して3,000万ドル(45億円)増加しました。一方、2024年度の営業利益は2億6,000万ドル(390億円)で、2023年度の3億7,000万ドル(555億円)と比較して1億1,000万ドル(165億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、ブランドの「エスティ ローダー」の低迷が挙げられます。
ヘアケア用品
ヘアケア用品の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ELC「Annual Reports」
2024年度の売上高は6億2,000万ドル(930億円)で、2023年度の6億5,000万ドル(975億円)と比較して3,000万ドル(45億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は5,200万ドル(78億円)の赤字で、2023年度の3,600万ドル(54億円)の赤字と比較して1,600万ドル(24億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因として、北アメリカにおける事業の低迷が挙げられます。
ELCの成長戦略
ELCは2024年度の業績が悪化した要因として、中国市場の低迷を挙げています。2025年度も中国市場の低迷は続くとみていますが、2026年度には中国市場が安定し、成長する見込みです。
そして、2025年度の世界の高級美容市場は2%~3%増加する見込みです。
同社は、2025年度は先進国市場と新興国市場の両方で業績を向上させるために、以下の項目に取り組むとしています。
- スキンケア製品の活性化
- 香水における複数の成長ドライバーの活用
- マーケティングの強化
- コスト構造の適正化
- 組織の簡略化
これらの取り組みにより、2025年度の売上高は、2024年度比1%の減少から2%の増加の範囲になると予測しています。
ELCの今後の動向に注目しよう
ELCは70年以上の歴史を持つ世界的な化粧品メーカーです。世界150カ国に20のブランドを展開しています。同社は2023年に「トム フォード」、2021年から2024年にかけて「DECIEM」を買収しました。しかし、2023年度と2024年度は減収減益で、業績が悪化しています。そのような中、2025年1月1日にCEO(経営最高責任者)が交代すると発表されました。新たなCEOのもと、どのような事業展開をするのか、同社の今後の動向に注目しましょう。