時計業界の業界転換。スマートフォンの台頭やコロナ禍による新しい付加価値が求められる業界。

スマートフォンの登場が腕時計メーカーに与えた影響は甚大です。

私達の日常は、スマホで時間が分かるため、腕時計をする必要がなくなってきました。従って、10万円以下の中価格帯の腕時計の需要は落ち込み、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、更にこの状況は窮地に立たされています。大手日系時計メーカーの前年実績比で70.1%減と大幅減益を見込んでいるなどのニュースが出ています。

確かに、この業界は縮小傾向にありますが、一概にそうとは言えません。実は、コロナ渦をきっかけとして、腕時計の購買において、新たな潜在ニーズが明らかになってきているのです。

ここでは、コロナウイルス感染拡大によって世界の腕時計市場の動向がどのような影響を受けたのかについて、また、今後のこの業界の明るい見通しについてお話します。

 

時計の市場縮小の動きと世界市場ランキング

市場縮小の背景

腕時計市場は縮小しており、背景は大きく分けて2つあります。1つ目は、2000年代以降に急速に浸透した携帯電話やスマホの普及です。日用品の消費データを分析するプラネット社が2018年に行った調査によると、30代の男性の28.5%、女性の33.3%が腕時計を使用していないと回答しました。

その理由について約7割が「スマホや携帯で時間が分かるから」と回答しています。

 

次の市場縮小の波が来たのは、2015年にスマートウォッチの「アップルウォッチ」がアップルから発売されたタイミングです。小型のタッチスクリーンとコンピューター搭載の腕時計型の多機能ウエアラブルデバイスは世界を驚かせました。

このスマホやスマートウオッチの普及は、低価格帯の時計市場を侵食しました。セイコーウオッチの担当者は「スマートウオッチがクオーツ時計の需要を奪っている」と言及しています。

スイス時計協会の統計を見てみると、約2万3000円未満の低価格帯の輸出本数は、2000年の2279万本だったのが、2019年は1162万本に半減しており、その影響は非常に大きいものとなっています。

 

そして2020年、新型コロナウイルスという、時計業界への第3回目の波が来ました。高級腕時計の店舗は人が集まる都市部にあることが多く、感染拡大を防ぐために人々が外出を控えるようになりました。

外出の機会も減り、ますます高級時計を身に着けることがなりました。しかし一方で、意外なことに、高級時計の分野でEC需要が伸長しています。こちらは後程詳しくご説明します。

 

腕時計業界の市場規模

調査会社スタティスタによると、2019年の腕時計の市場規模を700億ドルとしています。調査会社マーケットウォッチは、2020年の腕時計の市場規模は573億ドルと予測しています。2021年から2026年までに、6.2%での成長が見込まれています。

「最新業界別売上高世界ランキング第4巻」に記載された2019年の時計メーカー各社の売上高のランキングは、以下の順位となっています。

 

1位 アップル

2位 スウォッチグループ

3位 ロレックス

4位 LVMH

5位 リシュモン

6位 フォッシル

7位 シチズン

8位 セイコー

 

2019年の時計業界の市場シェア1位が、米国のアップルです。

伝統的な時計メーカーを、最先端のスマートウォッチを展開する企業が凌駕しているということがはっきりと分かり、時代の移り変わりを感じます。

 

アップルとスマートウォッチの動向

スマートウォッチとは

アップルウォッチ

https://www.nojima.co.jp/support/koneta/26973/

 

スマートウォッチとは別名「コネクテッドウォッチ」とも呼ばれ、無線接続でスマートフォンとの連動機能を備えた腕時計状のウェアラブルデバイスの総称です。スマートフォンと同じくOSで制御し、アプリの利用が可能です。

時刻を知るだけでなく、時刻表示もできる多機能デバイスというイメージで認知されています。

スマートウォッチのメリットは以下が挙げられます。

  • スマートフォンと連動して電話やメールの通知を受けることができる
  • スマホ連動のアラーム設定
  • 手首で反応するためスマートフォンより通知を見逃しにくい
  • 時刻確認とともに天気のチェックができる
  • 音楽ストリーミングサービスが利用できる
  • 心拍数、走った距離が正確に分かるのでランニング中のパフォーマンス管理ができる。健康管理もできる
  • おサイフケータイアプリと連動させ電子決済端末としての利用も可能

 

デメリットとしては、操作がしにくい点、電池の寿命が短いため長く使えない点が挙げられます。

 

腕時計型端末の歴史は、1980年代から始まります。現在のようにスマートフォンと連動できるスマートウォッチは2012年に開発されました。

2015年以降にアップルウォッチが発売されて、爆発的に市場を拡大していきました。

発売直後は「スマートフォンがあるから必要無い」や、「機械式時計にはかなわない」などと言われましたが、通信機能だけではなく時計としても使えることからクォーツ時計市場に肉薄していっています。

 

アナログとデジタルの便利すぎる融合

しかし、スマートウォッチが高級機械式時計市場を完全に圧迫しているとは言えません。

なぜなら、それぞれでターゲットとする顧客が異なり、市場の棲み分けができているからです。

 

スマートウォッチの購入層は「20代~30代の若年層で、コスパや機能性を重視し、スマートフォンをより便利に使いたい方」ですが、機械式時計は「年齢が35歳以上、ステータス重視で、社会的・情緒的価値を求める方」とターゲットが異なります。

しかし、「スマートウォッチが欲しいけど、あのいかにもガジェット的な外装デザインが受付けない」という方も多いようです。といった方もいらっしゃいます。ステータスシンボルと機能性の両方を求めるニーズがあるのです。

 

そこで最近、タグホイヤー、ウブロ、ブライトリング、ルイヴィトンなどの「高級ブランドメーカー」がスマートウォッチ事業を始めるようになりました。時計メーカーだからできる美しいデザインやスペックの高さが評価され、人気が高まっているようです。高級ブランドメーカーのスマートウォッチにはどのようなものがあるか、見てみましょう。

 

シチズン Eco-Drive Riiiver

シチズン

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1248513.html

 

シチズンのEco-Drive Riiiverシリーズは、Nature RemoやBOCCOなどの他のデバイスと繋ぐことで、リモコン機能を使用できます。

「Nature Remo」との連動

シチズン連動

家電の赤外線信号を受信させ、学習させることによって家電をコントロールできるスマートリモコンとなっています。暑い夏の日に、家の外から帰宅途中に時計のリモコンを押すと「Nature Remo」に繋がり、Nature Remoがエアコンを起動します。エアコンだけでなく、テレビなど身の回りにある赤外線信号を持つ家電に対応します。

 

コミュニケーションロボット「BOCCO」との連動

シチズン連動2

コミュニケーションロボット「BOCCO」は、スマートフォンのアプリと連動することのできるデバイスです。外出中の家族と留守番中の子どもや、離れて暮らす高齢の家族にロボット音声によってメッセージのやりとりが可能です。

 

カシオ G-SHOCK 「G-SQUAD PRO GSW-H1000」

カシオGshock

https://kakakumag.com/hobby/?id=16775

 

G-SHOCKおなじみの耐衝撃と気圧防水に対応し、マルチセンサーとGPS機能を搭載し、ランニングやスイミングなど15種類のアクティビティ、24種の屋内ワークアウトの計測が可能です。

今回、G-SHOCKとしては初めて、「Wear OS by Google」を搭載し、「Google アプリ」だけでなく、メール、SNS通知に対応しています。ビジネスシーンにおける使用に期待が高まります。

 

時計ビジネスの変遷

国内ではAmazonや楽天などのネットショップを利用したことがない人は少数派になってきているほど、浸透してきましたECに高級品が参入してきた際、「何十万円もする時計のような高級品をネットで買うなんて」という声がありました。

実物を目で見たり触ったりして確認できないことが致命的なリスクとなって敬遠されていたためです。しかし、最近この動向は変わってきています。

 

二極化する高級時計ブランドのEC化

銀座時計

https://ginza.keizai.biz/headline/1518/

 

かつてはブランド時計の購入は、おしゃれをして、ドアマンを通して店内に入り、購入相談をする。このようなスタイルが、店側にとっても消費者にとってもある種のステータスでした。

しかし、ここ数年の間、多くの高級ブランドがECでの売上高を上げています。撮影素子など飛躍的な技術向上も手伝って、市販のカメラで高画質な商品画像が撮れるようになったことも理由の一つになるでしょう。SNSなどで口コミが拡がりそのお店の信頼度を図りやすくなった点も挙げられます。

 

ロレックスなどの一部ブランドはオンライン販売を敬遠していましたが、最近ではウブロを筆頭に、カルティエ、ブルガリなどの有名ブランドが公式ホームページで通信販売に参入しており、伝統や格を重んじるブランドと、販路拡大のためならにニーズのある手法を取るブランドと、二極化していると言ってもいいでしょう。

 

新型コロナウイルスで明らかになった隠れたニーズ

コロナ時計

https://www.webchronos.net/features/51805/

このような二極化する時計業界において、EC化を余儀なくさせたのが新型コロナウイルスです。ブティックは都心部にあり、感染が懸念されるような環境下にあるため、老舗高級ブランドもネット販売の要性に迫られています。

時計という性質上、「実物を触ってみたい」というニーズはデメリットに感じるかもしれませが、これらのデメリットをカバーするために、ブランドによっては「返品規定」を設けています。一定日数までの申告と返送で返品を受付けるサービスは、消費者にとってもリスクなく購買できるため安心です。

 

「試着してみたい」というニーズが他の産業よりもある入ブランド商品は、試着サービスによって長所にも転じます。これまで店舗に出向いて購入する機会がなかった方でも気軽に購入できるようになったことは、時計業界にとって予期せぬ嬉しい市場動向になっています。

コロナ渦において、このような現象は実は高級時計だけに起こっているのではありません。宝石などの高級品市場においても同様です。外出できる楽しみが減った分「自分のために」と考えて購入する女性の増加が理由とされています。

 

最後に

2017年、アップルウォッチの収益がロレックスを超えたという驚くべきニュース。かつて、カメラメーカーがスマホの台頭によって業績低迷に追い込まれたように、時計業界もそれと同じ道を辿るのでは?とささやかれています。

スマートウォッチに業界ナンバーワンを奪われた伝統的時計ブランド各社が、スマートウォッチの機能を備えた製品を作り始め、ECに乗り出すなど、今、時計業界は過渡期にあります。スマートフォンやスマートウォッチの台頭によって、伝統的な老舗時計メーカーがカメラと同じ道を辿るかどうか、今が正念場かもしれません。

 

<参考>

https://www.webchronos.net/features/51582/

https://mainichi.jp/premier/business/articles/20200819/biz/00m/020/024000c

https://mirrorless-camera.info/market/4797.html

https://deallab.info/watch/

https://www.webchronos.net/features/42472/

https://www.rasin.co.jp/blog/special/news-of-watchindustry/

https://citizen.jp/news/2020/20200421.html

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