
企業の持続的な成長や規模の拡大には、新規事業の立ち上げが有効です。新たな市場で収益源を確保することで、成長を加速できるためです。しかし、新規事業は必ず成功するとは限りません。そのようなリスクを抑え、成功率を高めるには実現可能性や採算性を検証することが重要です。そこで役立つのが、フィージビリティスタディ(以降は、「F/S」と言います。)です。本記事では、F/Sの意味やメリット、進め方についてわかりやすく解説します。
フィージビリティスタディとは
フィージビリティスタディ(Feasibility Study)とは、新規事業や新商品のアイデアについて、実現可能性や採算性を評価するための調査・分析プロセスです。日本語では「実現可能性調査」と呼ばれ、事業を始める前の重要な判断材料となります。事前に可能性を検証することで、無駄な投資を避けられるだけでなく、より精度の高い意思決定に役立ちます。
目的
F/Sの目的は、事業化に必要な判断材料をそろえ、「実行すべきかどうか」の判断に役立てることです。F/Sを実施することで、次のような効果が期待できます。
- 市場機会の把握
- 失敗リスクの予測と回避
- 投資判断の妥当性の確認
- 事業計画の精度向上
- 必要なリソースやコストの明確化
- 課題の洗い出しと対策立案
- プロジェクトの優先順位づけ
このように、F/Sは多様な視点から事業案を検証し、リスクを抑えつつ成功確率を高めるための重要なプロセスです。
F/SとPoCとの違い
PoCとは、日本語で「概念実証」と呼ばれ、新しいアイデアや技術が実現できるのか、実際に効果を発揮するのかを確認するための検証です。
一見するとF/Sと似た取り組みに思えるかもしれませんが、両者には細かな違いがあります。特に大きな違いは、実施するタイミングと検証の内容です。
F/Sは、アイデアが生まれた後の初期段階で実施される分析手法で、主に市場性や採算性など、事業として成り立つかどうかを判断するために行います。
一方、PoCはF/Sの後に続く次のステップです。F/Sで「実行に値する」と判断されたアイデアについて、試作品の作成や小規模テストを行い、技術的に成立するかどうかを検証します。
海外進出におけるF/Sの重要性

新規事業やプロジェクトを立ち上げる際、F/Sは欠かせない調査ですが、海外進出ではその重要性が増します。その理由は、海外市場には次のような「国内とは異なる外部環境」が数多く存在するためです。
- 文化や価値観の違い
- 法規制の違い
- 商習慣の違い
- 競争環境の違い
これらの要素は、どれか1つでも想定と異なるだけで、事業失敗のリスクを押し上げます。さらに、海外展開は初期投資が大きくなりやすいため、失敗した場合に損失も膨れがちです。
そのため、海外進出では事業が本当に成立するのかをF/Sによって徹底的に検証することが不可欠です。十分な調査を行うことで、リスクを回避しつつ、成功確率を高められます。
F/Sの進め方
F/Sを活用して的確な経営判断を行うためには、正しい手順で進めることが重要です。進め方を誤ると、必要なデータが集まらなかったり、調査が長期化して意思決定が遅れたりと、本来の効果を発揮できません。ここでは、F/Sを効果的かつ効率的に進めるための流れを、5つの手順に分けて解説します。
ステップ① 目的・目標の定義
最初の手順は、プロジェクトの目的や目標を明確にすることです。海外進出を想定した場合、次のような目的が挙げられます。
- 新規市場の開拓
- 収益源の多角化
- 事業ポートフォリオの拡大
- ブランド認知の向上
- 新たな供給源の確保
これらの目的を踏まえ、どのような成果を目指すのか、具体的な目標を設定します。定量的な指標をあらかじめ設定しておくことで、調査結果を判断材料として活用しやすくなり、最終的な経営判断の精度も高まります。
ステップ② F/Sの推進計画の設計・提案
目的と目標が固まったら、次にF/Sの推進手法や具体的なアプローチを設計します。例えば、次の項目を明確にし、推進計画に落とし込みます。
- どのような項目を調査するか
- どのような調査手法を用いるか
- 誰がいつ調査を行うか
このように、全体のスケジュールや必要なリソース、データ収集の方法などを設計します。
ステップ③ 現地調査の実施
現地調査は、F/Sの中でも特に重要な工程です。実際に現地へ赴くことで、デスクリサーチでは得られない情報を収集でき、調査結果の信頼性と精度を高められます。代表的な調査手法は次のとおりです。
- アンケート調査
- インタビュー調査
- 現地企業へのヒアリング
- 競合調査
これらの調査を、事前に立てた推進計画に沿って着実に実施することで、事業判断に必要な一次情報を効率的に収集できます。
ステップ④ 検証結果の分析
収集したデータや検証結果をもとに、実現可能性があるか、採算性を確保できるかを次のような視点から分析します。
- 収益モデルの妥当性
- 投資額と回収時期
- 対象市場の成長性
- 技術的・法的課題
- リスクレベル
これらの分析を通して、事業を推進するかどうかを判断します。
ステップ⑤ 実行計画の策定及び実行
事業を進めると判断した場合は、調査結果を踏まえて具体的な実行計画を策定します。例えば、次のような項目を検討します。
- 事業開始のスケジュール
- 組織体制と必要な人材
- 販売計画
- マーケティング戦略
- 収支計画
- リスク回避策
F/Sは実行可能な計画に落とし込むことで、初めて成果につながります。
F/Sを成功させるための3つのポイント

F/Sで必要な情報を収集し、分析するには次の3つの要素を押さえることが大切です。
評価項目を明確にする
F/Sを成功させるためには、評価項目を明確に設定することが重要です。目的や目標に沿って評価項目を決めることで、必要な調査手法が自然に定まり、調査の方向性がぶれにくくなります。代表的な評価項目には、次のようなものがあります。
- 市場性:十分な市場規模や需要が存在するか
- 収益性:投資回収が可能か、利益が見込めるか
- 技術的実現性:製品やサービスを形にする技術があるか
- 社内リソースの確保:必要な人材・設備・ノウハウを確保できるか
- リスクの有無:失敗要因となり得るリスクは何か、どの程度の影響か
これらの項目を事前に明確にしておくことで、より精度の高い判断が可能になります。
正確なデータを十分な量収集する
F/Sの質を高めるには、データの量と正確性が重要なポイントです。そのためには、情報収集の方法や情報源を慎重に選ぶ必要があります。
- 信頼性の高い統計やレポートを使う
- 現地調査やインタビューを十分な回数行う
- 複数の情報源を照合する
特に海外市場では、現地でしか得られない情報が多数あります。そのため、正確性を高めるには現地調査が不可欠です。
外部の専門家の知見やノウハウを活用する
F/Sの実施には、専門的な知識やノウハウが必要です。社内だけで完結しようとすると、それらを保有する人材が不足することが多々あります。そこで、市場調査や法規制調査、消費者調査といった専門的な領域の調査はプロに依頼するのがおすすめです。第三者の視点を取り入れることで、調査の客観性を確保するのにも役立ちます。
F/Sで新規事業の確度を高めよう
新規事業で成功するには、事業として本当に成立するのかを事前に検証することが不可欠です。特に海外進出のような不確実性の高いプロジェクトでは、F/Sの有無が成功確率を大きく左右します。
これから海外展開を検討されている企業様は、F/Sの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
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