日本の調味料が世界で注目されている
農林水産省によると、2021年に農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を超えました。その後も拡大を続け、2024年には1兆5,000億円に達しています。この成長を牽引した主な要因の一つは、ソース混合調味料の輸出拡大です。同品目の輸出額は前期比で86億円増、伸び率は16%と大きな成長を記録しました。農林水産物・食品の輸出額の推移は以下のとおりです。

出典:農林水産省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」
また政府は「食料・農業・農村基本計画」において、農林水産物・食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円へ拡大することを目標に掲げています。その目標達成のためにも調味料は重要な分野です。日本食ブームを背景に日本食レストランが世界で増加しており、調味料の需要が高まっているためです。
海外で人気の日本の調味料3選
海外で人気の日本の調味料と各輸出額は以下のとおりです。
・味噌:63.1億円
・醤油:121.9億円
・ソース混合調味料:629.9億円
参照:経済産業省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」
この章では各調味料の輸出額の推移や輸出先について紹介します。
味噌
味噌は古来より日本人の食生活を支えてきた日本を代表する調味料です。大豆や豆、麦に塩と麹(こうじ)を加えて発酵することで、独特の旨味を持っています。海外では「MISO」として知られ、輸出額の推移は以下のとおりです。

参考:経済産業省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」
2024年には輸出額が63.1億円に達し、10年間で約2.5倍に拡大しています。
なお、2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
| 順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
| 1位 | アメリカ | 14.4億円 |
| 2位 | 中国 | 4.8億円 |
| 3位 | オランダ | 3.0億円 |
| 4位 | 韓国 | 2.9億円 |
| 5位 | 台湾 | 2.8億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
味噌の主な輸出先はアメリカで、2022年は前年比36.1%の増加となりました。
醤油
醤油は大豆と小麦、塩を発酵させた液体調味料です。旨味・塩味・甘味などのバランスの良さから多くの料理で使われています。日本の家庭においては、なくてはならない調味料といっても過言ではありません。その醤油の輸出額の推移は以下のとおりです。

参考:経済産業省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」
醤油も味噌同様に10年間で輸出額を大幅に拡大し、2024年には121.9億円に達しています。
なお、2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
| 順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
| 1位 | アメリカ | 19.1億円 |
| 2位 | 中国 | 9.0億円 |
| 3位 | オーストラリア | 7.0億円 |
| 4位 | 韓国 | 6.4億円 |
| 5位 | イギリス | 5.7億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
アメリカ・アジア・ヨーロッパが主な輸出先です。また2022年はアメリカへの輸出は拡大したものの、ヨーロッパへの輸出は減少しています。
ソース混合調味料
ソース混合調味料とは、ウスターソースやマヨネーズ、ドレッシング、焼き肉のたれなどです。調味料の輸出額の推移は以下のとおりです。

参考:経済産業省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」
ソース混合調味料は安定的に輸出額・量を増やしていることがわかります。
なお、2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
| 順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
| 1位 | アメリカ | 104.9億円 |
| 2位 | 台湾 | 80.3億円 |
| 3位 | 香港 | 43.1億円 |
| 4位 | 韓国 | 41.6億円 |
| 5位 | オーストラリア | 26.2億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
味噌・醤油・ソース混合調味料のすべてで、アメリカが1位を獲得しています。アメリカで日本食が市民権を得ている証拠といえるでしょう。
政府の「日本の調味料」の輸出強化戦略
政府は2025年・2030年の農林水産物・食品の輸出額を達成するために、「味噌・醤油」と「ソース混合調味料」を重点品目に指定しています。ここでは重点品目としての目標や取り組みについて紹介します。
重点品目:味噌・醤油
味噌・醤油の輸出額の目標は、2025年に231億円を達成することです。内訳はアメリカに50億円、中国に26億円、そのほかの国・地域に155億円としています。
目標達成のための主な施策は以下のとおりです。
- 日本レストランを中心に現地に合わせたレシピの充実・普及
- 味や品質による海外産との差別化
- ハラール認証の商品による市場拡大
- 有機味噌や有機醤油を活用した取り組み
2024年に需要が拡大した地域は以下のとおりです。
味噌:アメリカ
醤油:EU・タイ
これらの地域では、日本食レストランの増加やインバウンドによる日本食への関心の高まりから、外食需要が増加しました。
重点品目:ソース混合調味料
ソース混合調味料の輸出額の目標は、2025年に850億円を達成することです。内訳はアメリカに173億円、中国に42億円、EUに82億円、そのほかの国・地域に533億円としています。2022年時点の輸出額は483.8億円なので、目標達成にはまだまだ市場を拡大する必要があります。
目標達成のための主な施策は以下のとおりです。
- グルテンフリー、ヴィーガン、ハラール対応商品の充実
- カレー、マヨネーズ、ドレッシングの輸出拡大
- 「ゆず」や「山椒」など、日本独自の食材の認知度向上
2024年に需要が拡大した地域は以下のとおりです。
ソース混合調味料:アメリカや韓国
これらの地域では、日本式カレーの人気が高まっています。
日本の調味料で海外進出した成功事例7選
日本の調味料で海外進出に成功した企業のなかから、大手企業7社の取り組みを紹介します。
マルコメ:味噌を世界の「MISO」に

出典:マルコメ
マルコメは150年以上の歴史を持つ、味噌を中心とした食品メーカーです。2023年3月期の売上高は502億円で、「だし入りみそ」や「液みそ」など多くのヒット商品を生み出しています。
同社の海外拠点はアメリカ・韓国・タイ・上海の4拠点で、世界45カ国に販売しています。
海外進出の取り組みの特徴は、現地に合わせた販売戦略で消費者が買いやすい・使いやすい環境を提供していることです。例えば、生味噌ではなくインスタント味噌や、レストラン用の味噌汁サーバーの販売などです。さらに2020年にグローバルサイトを多言語対応にし、さらなる認知拡大に努めています。
ヒカリ味噌:海外シェアNo.1のオーガニック味噌

出典:ヒカリ味噌
ヒカリ味噌は、有機・オーガニック味噌の開発・販売に30年以上取り組んできました。その結果、同分野でシェアの約70%を占めており、オーガニック味噌のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いています。
同社の有機・オーガニック味噌の取り組みは、1988年に有機米を使用した味噌の発売から始まりました。以来、改良や新商品の開発を重ね、1997年にアメリカ、2008年にEUの有機認証を取得。国際的にも高い評価を獲得しています。
世界的にオーガニック市場が拡大する中、同社は早くから海外展開を強化していました。食品やオーガニックをテーマとした海外展示会に積極的に出展し、現地ユーザーとのコミュニケーションの場を創出しています。また、日本の業務用フードサービスのノウハウや最新の食トレンドもあわせて紹介することで、日本食そのものへの関心を高める活動も行っています。
さらに、「世界のあらゆる人々に味噌料理を楽しんでもらいたい」という思いから、2012年にはハラール認証を取得しました。このように、オーガニックという価値を強みに海外需要を取り込んでいる同社の取り組みは、日本の調味料で海外進出を成功した好例と言えるでしょう。
キッコーマン:世界100カ国以上で親しまれる醤油

出典:キッコーマン
キッコーマンは、1917年に設立した醤油を中心とする食品メーカーです。2023年3月期の売上高が6,188億円、従業員数が7,775人で日本を代表する企業です。
キッコーマンの海外進出は、1950年代にアメリカから始まりました。現在では、世界100カ国以上で親しまれています。
販路拡大の手法は、現地の消費者の前で調理して食材と醤油の相性の良さを伝えるというものです。日本食の紹介だけではなく、国別に醤油の使い方・レシピを提案することで、需要を拡大しています。
サンジルシ醸造:グルテンフリーのたまり醤油

出典:サンジルシ醸造
サンジルシ醸造は、三重県に本社を置く老舗の醤油メーカーです。同社は、長年培ってきた「たまり醤油」の醸造技術を生かすことで、米国市場への進出に成功しました。その中核を担った製品は、小麦を使用しないグルテンフリーのたまり醤油です。
グルテンフリーは、もともとセリアック病の食事療法として考案されました。セリアック病とは、小麦に含まれるグルテンを摂取することで腹痛や下痢などを引き起こす自己免疫疾患です。このような背景から、アメリカでは小麦アレルギー対策だけでなく、美容・健康の観点からもグルテンフリーが広く浸透しています。
そして、たまり醤油は小麦の使用量が少ないという特性があります。同社はこの点に着目し、グルテンを含まない製品の開発に成功しました。その結果、安心して使える日本の調味料として、高い評価を獲得しています。
さらに、現地の食文化に合わせた使い方やレシピ提案を行うことで、醤油の新たな活用シーンを広げている点も特徴です。伝統食品を現代の健康ニーズと結びつけた同社の取り組みは、日本の調味料による海外展開の好例と言えます。
ハウス食品グループ本社:海外で人気が高まる日本式カレールウ

出典:ハウス食品グループ本社
ハウス食品グループ本社は、日本を代表する食品メーカーで、国内の家庭用カレールウ市場でシェア1位を獲得しています。そして、日本式カレールウの海外展開にも積極的に取り組んでいます。
日本式カレーは、濃厚なソースが特徴で、ご飯と一緒に食べるスタイルが一般的です。ルウを使うことで、家庭でも安定した味を再現できる点も大きな特徴です。同社は、こうした日本式カレーの魅力を現地の食文化と融合させることで、海外市場での認知度を高めてきました。
例えば、中国では味・色・スパイスの香りをアレンジし、インドネシアではハラール認証を取得したカレールウを販売しています。このように、ハウス食品グループ本社は日本で培った技術とブランド力を基盤に、ローカライズした日本式カレールウを世界に広げています。
エバラ食品工業:タイに工場を新設

出典:エバラ食品工業「焼肉のたれ」
エバラ食品工業は、「焼肉のたれ」を中心としたソース混合調味料で高い知名度を誇る食品メーカーです。近年は、海外売上高比率5%以上を目標に掲げ、東アジア・東南アジアを中心に海外展開を進めています。
その象徴的な取り組みは、タイの生産拠点の新設です。同社は海外事業を成長領域として捉えており、約26億円を投資してタイに新工場を建設。2024年8月に稼働を開始しました。タイの地理的優位性から、東南アジア各国への供給拠点としても適しており、同社の海外戦略の要となっています。
東南アジアは、経済成長や中間所得層の拡大を背景に、外食産業の成長が期待される地域です。同時に、同社の海外事業では、「焼肉のたれ」「すき焼きのたれ」「ラーメンスープ」などの業務用製品が支持されています。こうした背景から、エバラ食品工業は生産拠点を海外に展開することで供給体制を強化し、東アジア・東南アジア市場でのさらなる成長を目指しています。
ミツカン:食酢・パスタソースで世界に進出

出典:ミツカン
ミツカンは200年以上の歴史を持ち、酢・ぽん酢・鍋つゆ・パスタソースなどを開発・販売する食品総合メーカーです。2022年の海外売上比率は50.2%で、日本の調味料で海外進出に成功した企業といえます。
ミツカンの海外進出は、「日本+アジア」「北米」「欧米」の3つのエリアで事業体制を構築しているのが特徴です。エリアの食文化に根付いた商品を開発し、シェア拡大につなげています。
また主要な市場であるアメリカには、1981年の「アメリカン・インダストリー社」の買収により本格的に進出しました。2014年にはパスタソース市場にも参入し、現在では全米の家庭で最も親しまれているパスタソースに成長しています。
和食ブームを背景に日本の調味料の海外市場は拡大中
和食ブームを背景に、世界で日本の調味料に注目が集まっています。味噌・醤油やソース混合調味料は重点品目にも設定され、政府などの支援により海外市場の拡大傾向も続いています。海外進出を検討しているのであれば、調味料の分野に参入してみるのも面白いかもしれません。
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よくある質問
日本の調味料による海外進出に関して、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 日本の調味料に対する海外の反応は?
海外では、日本の調味料は「健康的」というイメージで受け入れられています。欧米を中心に、発酵食品は腸内環境を整えるという認識が広がっており、健康志向の高まりを背景に日本の調味料が注目されています。とくに味噌や醤油は、発酵によって生まれる旨味やコクが評価されており、海外でも人気の調味料です。例えば味噌は、味噌汁として親しまれているだけでなく、ドレッシングやマリネなど和食以外の料理にも使われるなど、日常的な調味料として定着しつつあります。
Q2. 海外で人気の日本の調味料は何ですか?
海外で特に人気が高い日本の調味料は、醤油・味噌・ソース混合調味料です。醤油は和食に加えて、肉料理や野菜料理の味付けにも使いやすく、幅広い国・地域で定着しています。味噌は発酵食品のため、健康志向のユーザーから評価が高く、スープ以外の料理にもアレンジされています。また、焼肉のたれやポン酢、カレールウなども人気です。これらのソース混合調味料は、手軽に日本風の味を再現できることから、家庭用・業務用の両面で需要が高まっています。
Q3. 日本にしかない調味料って何ですか?
日本独自の調味料には、だし・みりん・味噌・鰹節・七味唐辛子などが挙げられます。これらは発酵や乾燥といった伝統的な製法を用い、旨味を引き出す点が特徴です。
特に昆布や鰹節から取る「だし」は、日本料理の味の基盤となる存在で、海外にはあまり見られない食文化です。みりんも、料理にコクやまろやかさを与える日本特有の調味料として位置づけられています。※みりんの起源は、諸説あります。
Q4. 日本のカレーと海外のカレーの違いは何ですか?
日本のカレーは、小麦粉を使ったルウによるとろみとコクが特徴で、ご飯と一緒に食べる「カレーライス」として親しまれています。多くの家庭では、市販のカレールウやカレー粉を使って調理します。一方、カレー発祥の地であるインドでは、複数のスパイスを組み合わせて作るのが一般的です。さらっとした汁気のあるカレーをナンやチャパティと一緒に食べます。こうした違いから、日本式カレーは「家庭で簡単に作れる」といった点が海外でも評価されています。
