世界で日本食は「ヘルシーでおいしい」というイメージが定着しています。そのため、海外のヘルシー志向の消費者から支持され、和食ブームを巻き起こしています。その和食に不可欠なのは、味噌や醤油などの調味料です。本記事では海外における日本の調味料の動向や成功事例を紹介します。
日本の調味料が世界で注目されている
農林水産省によると、2021年の農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を超えました。その大きな要因は、加工食品の輸出拡大です。2021年の加工食品の輸出額は4,595億円で前年比22.8%増、さらに2022年には5,051億円にまで拡大しています。加工食品の輸出額の推移は以下のとおりです。
出典:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
また政府は「食料・農業・農村基本計画」において、農林水産物・食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円へ拡大することを目標に掲げています。その目標達成のためにも加工食品は重要な分野です。
加工食品のなかでも注目すべきなのは「日本の調味料」です。現在、世界各国では日本食がブームになっています。寿司や天ぷらなどの日本食が世界に広がることで、味噌や醤油などの日本の調味料も認知度・需要が高まっているためです。
海外で人気の日本の調味料3選
海外で人気の日本の調味料と各輸出額は以下のとおりです。
- 味噌:50.8億円
- 醤油:94.0億円
- ソース混合調味料:483.8億円
参照:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
この章では各調味料の輸出額の推移や輸出先について紹介します。
味噌
味噌は古来より日本人の食生活を支えてきた日本を代表する調味料です。大豆や豆、麦に塩と麹(こうじ)を加えて発酵することで、独特の旨味を持っています。海外では「MISO」として知られ、輸出額の推移は以下のとおりです。
出典:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
2022年には輸出額が50.8億円に達し、10年間で約2.4倍に拡大しています。2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
---|---|---|
1位 | アメリカ | 14.4億円 |
2位 | 中国 | 4.8億円 |
3位 | オランダ | 3.0億円 |
4位 | 韓国 | 2.9億円 |
5位 | 台湾 | 2.8億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
味噌の主な輸出先はアメリカで、2022年は前年比36.1%の増加となりました。
醤油
醤油は大豆と小麦、塩を発酵させた液体調味料です。旨味・塩味・甘味などのバランスの良さから多くの料理で使われています。日本の家庭においては、なくてはならない調味料といっても過言ではありません。その醤油の輸出額の推移は以下のとおりです。
出典:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
醤油も味噌同様に10年間で輸出額を大幅に拡大し、2022年には94.0億円に達しています。2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
---|---|---|
1位 | アメリカ | 19.1億円 |
2位 | 中国 | 9.0億円 |
3位 | オーストラリア | 7.0億円 |
4位 | 韓国 | 6.4億円 |
5位 | イギリス | 5.7億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
アメリカ・アジア・ヨーロッパが主な輸出先です。また2022年はアメリカへの輸出は拡大したものの、ヨーロッパへの輸出は減少しています。
ソース混合調味料
ソース混合調味料とは、ウスターソースやマヨネーズ、ドレッシング、焼き肉のたれなどです。調味料の輸出額の推移は以下のとおりです。
出典:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
ソース混合調味料は安定的に輸出額・量を増やしていることがわかります。2022年の輸出先のトップ5は以下のとおりです。
順位 | 国・地域 | 2022年の輸出額 |
---|---|---|
1位 | アメリカ | 104.9億円 |
2位 | 台湾 | 80.3億円 |
3位 | 香港 | 43.1億円 |
4位 | 韓国 | 41.6億円 |
5位 | オーストラリア | 26.2億円 |
参考:経済産業省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」
味噌・醤油・ソース混合調味料のすべてで、アメリカが1位を獲得しています。アメリカで日本食が市民権を得ている証拠といえるでしょう。
政府の「日本の調味料」の輸出強化戦略
政府は2025年・2030年の農林水産物・食品の輸出額を達成するために、「味噌・醤油」と「ソース混合調味料」を重点品目に指定しています。ここでは重点品目としての目標や取り組みについて紹介します。
重点品目:味噌・醤油
味噌・醤油の輸出額の目標は、2025年に231億円を達成することです。内訳はアメリカに50億円、中国に26億円、そのほかの国・地域に155億円としています。
目標達成のための主な施策は以下のとおりです。
- 日本レストランを中心に現地に合わせたレシピの充実・普及
- 味や品質による海外産との差別化
- ハラール認証の商品による市場拡大
- 有機味噌や有機醤油を活用した取り組み
重点品目:ソース混合調味料
ソース混合調味料の輸出額の目標は、2025年に850億円を達成することです。内訳はアメリカに173億円、中国に42億円、EUに82億円、そのほかの国・地域に533億円としています。2022年時点の輸出額は483.8億円なので、目標達成にはまだまだ市場を拡大する必要があります。
目標達成のための主な施策は以下のとおりです。
- グルテンフリー、ヴィーガン、ハラール対応商品の充実
- カレー、マヨネーズ、ドレッシングの輸出拡大
- 「ゆず」や「山椒」など、日本独自の食材の認知度向上
日本の調味料で海外進出した成功事例3選
日本の調味料で海外進出に成功した企業のなかから、大手企業3社の取り組みを紹介します。
マルコメ:味噌を世界の「MISO」に
出典:マルコメ
マルコメは150年以上の歴史を持つ、味噌を中心とした食品メーカーです。2023年3月期の売上高は502億円で、「だし入りみそ」や「液みそ」など多くのヒット商品を生み出しています。
同社の海外拠点はアメリカ・韓国・タイ・上海の4拠点で、世界45カ国に販売しています。
海外進出の取り組みの特徴は、現地に合わせた販売戦略で消費者が買いやすい・使いやすい環境を提供していることです。例えば、生味噌ではなくインスタント味噌や、レストラン用の味噌汁サーバーの販売などです。さらに2020年にグローバルサイトを多言語対応にし、さらなる認知拡大に努めています。
キッコーマン:世界100カ国以上で親しまれる醤油
出典:キッコーマン
キッコーマンは、1917年に設立した醤油を中心とする食品メーカーです。2023年3月期の売上高が6,188億円、従業員数が7,775人で日本を代表する企業です。
キッコーマンの海外進出は、1950年代にアメリカから始まりました。現在では、世界100カ国以上で親しまれています。
販路拡大の手法は、現地の消費者の前で調理して食材と醤油の相性の良さを伝えるというものです。日本食の紹介だけではなく、国別に醤油の使い方・レシピを提案することで、需要を拡大しています。
ミツカン:食酢・パスタソースで世界に進出
出典:ミツカン
ミツカンは200年以上の歴史を持ち、酢・ぽん酢・鍋つゆ・パスタソースなどを開発・販売する食品総合メーカーです。2022年の海外売上比率は50.2%で、日本の調味料で海外進出に成功した企業といえます。
ミツカンの海外進出は、「日本+アジア」「北米」「欧米」の3つのエリアで事業体制を構築しているのが特徴です。エリアの食文化に根付いた商品を開発し、シェア拡大につなげています。
また主要な市場であるアメリカには、1981年の「アメリカン・インダストリー社」の買収により本格的に進出しました。2014年にはパスタソース市場にも参入し、現在では全米の家庭で最も親しまれているパスタソースに成長しています。
和食ブームを背景に日本の調味料の海外市場は拡大中
和食ブームを背景に、世界で日本の調味料に注目が集まっています。味噌・醤油やソース混合調味料は重点品目にも設定され、政府などの支援により海外市場の拡大傾向も続いています。海外進出を検討しているのであれば、調味料の分野に参入してみるのも面白いかもしれません。