
サッカーはボール1つあれば約20人が楽しめるスポーツです。その手軽さとルールのシンプルさから世界で人気のスポーツです。
日本ではJリーグやワールドカップ、あるいはオリンピックなどの試合観戦を楽しみにしている方も多いでしょう。日本や世界で人気のサッカーは、大きな市場が醸成されているスポーツといえます。
本記事ではサッカー用品の市場規模、国内企業の海外進出事例について紹介します。
日本におけるサッカーの行動者数は533万人
日本でサッカーが人気スポーツになったきっかけは、1993年にプロサッカーリーグのJリーグが初めて開幕したことです。当時、日本中でサッカーブームが起こったのを覚えている方も多いでしょう。FIFAワールドカップの出場を逃した「ドーハの悲劇」を経て、初出場を果たしたときは日本中が熱狂したものです。
総務省統計局の調べによると、そのサッカーの2021年の行動者数は533万人、行動者率は4.7%でした。
※行動者数:1年間に該当する活動をした人の数
※行動者率:10歳以上の人口に占める行動者数の割合
行動者数・行動者率の推移は以下のとおりです。

出典:総務省統計局「統計からみたサッカーの状況-「2022FIFAワールドカップ」にちなんで-」
現代でもサッカーは人気があります。しかし、少子高齢化や人口減少が進むなか、次第に行動者数・行動者率ともに減少しているのが現状です。
行動者数が減少していることは、それだけサッカー用品の市場規模が縮小していることを意味します。サッカー用品メーカーにとっては、海外進出が重要になっているといえるでしょう。
世界のサッカー人口は約2億6,000万人
世界のサッカー人口は約2億6,000万人で、5番目に競技人口の多いスポーツです。ボール1つで約20人が楽しめるのに加えて、ルールのシンプルさが世界で人気の理由といえます。
またビジネスの視点でみるとサッカーの特徴は、市場が成熟していることです。2022年にカタールで開催されたワールドカップの経済効果は、約2兆円と推定されているほどです。
世界のサッカー人口ランキング
サッカーはヨーロッパや南米に強豪国が多いため、それらの地域の競技人口が多いと思う方もいるでしょう。しかし、世界のサッカー人口のランキングトップは中国で、次にアメリカです。サッカー用品の需要の多い国を把握するために、ここではサッカー人口ランキングトップ10を紹介します。
順位 | 国・地域 | 競技人口(推定値) |
---|---|---|
1位 | 中国 | 2,616万人 |
2位 | アメリカ | 2,447万人 |
3位 | インド | 2,058万人 |
4位 | ドイツ | 1,630万人 |
5位 | ブラジル | 1,319万人 |
6位 | メキシコ | 848万人 |
7位 | インドネシア | 709万人 |
8位 | ナイジェリア | 665万人 |
9位 | バングラデシュ | 628万人 |
10位 | ロシア | 580万人 |
参考:HALF TIMEマガジン「日本のサッカー競技人口数|ランキングと競技人口数は関係あるの?」
FIFAランキングによると中国の男子サッカーは79位、インドは102位です。女子サッカーは中国が19位、インドが65位でした。このように、強豪国以外にも大きな市場を抱えている国があります。
参照:FIFA「Coca-Cola World Ranking」
サッカー用品の市場規模
サッカー用品は主にサッカーウェアやスパイク、サッカーボールです。ここでは日本と世界のサッカー用品の市場規模について紹介します。
日本のサッカー用品の市場規模
エヌピーディー・ジャパン調べによると、2022年10月~12月における日本のサッカーシューズ・アパレルの市場規模は約190億円でした。2019年同期比の9.9%増で、コロナ流行前の水準を上回っています。

出典:NPD Japan「スポーツシューズ・アパレル市場 調査レポート」
ただし、サッカーシューズの伸び率が高い一方で、アパレルについては回復できていない状態です。

出典:NPD Japan「スポーツシューズ・アパレル市場 調査レポート」
2022年はFIFAワールドカップで日本が強豪国のドイツに勝利し、決勝トーナメントに進出するなど活躍しました。その影響で実際にプレーする方が増えて、サッカーシューズの需要が高まったものと考えられています。
世界のサッカー用品の市場規模
QY Researchの「グローバルサッカーシューズに関する調査レポート」によると、2022年のサッカーシューズの世界市場規模は5,106億円(1ドル=145円換算)でした。今後、年間平均成長率5.1%で拡大すると予測されており、2029年には7,262億円に達する見込みです。
サッカー用品の海外進出事例3選
サッカーにはウェアやスパイクなど、ボール以外の用具も必要です。そこで、ウェア・スパイク・ボールのそれぞれの海外進出事例について紹介します。
DESCENTE(デサント):スポーツウェア

DESCENTE(デサント)はスキーや野球、ゴルフ、陸上、サッカーなどのスポーツウェアを手掛ける企業です。「デサント」「ルコックスポルティフ」「アンブロ」などの9つのブランドを展開しています。そのなかで、「アンブロ」がデサントのサッカーウェアブランドです。
デサントの2023年3月期の売上高は1,206億円でした。その内訳は日本が527億円、韓国が578億円、中国が76億円です。
主要な進出先の韓国では、「アンブロ」と韓国のファッションブランド「KANGHYUK(カンヒョク)」とのコラボレーションを行い、若年層へのマーケティングを強化しています。またデサントは、次の進出先として中国での展開を強化しており、店舗の大型化やリニューアルにより売上を拡大しています。
YASUDA(ヤスダ):サッカースパイク

出典:YASUDA(ヤスダ)
YASUDA(ヤスダ)は、日本発の純国産サッカーシューズを販売していた「株式会社安田」をルーツに持つ企業です。株式会社安田は2002年に経営不振により破産したものの、2018年にクラウドファンディングで「YASUDA」として復活しました。
また同社は、2021年に中国の蘇州プライム企業管理コンサルティング有限公司と販売総代理店契約を締結し、中国へ進出しています。中国は競技人口が最も多い国で、その需要を取り込めるかが注目されています。
molten(モルテン):サッカーボール

出典:molten(モルテン)
molten(モルテン)は、スポーツ・健康用品・介護用品・自動車部品などのゴム・樹脂製品の製造・販売をしている企業です。2022年の売上高は361億円で、海外の拠点数は9拠点があります。
モルテンのサッカーボールは、UEFAヨーロッパリーグの唯一の公式試合球に採用されています。また2021年には、空気を入れない組み立て式サッカーボール「MY FOOTBOALL KIT(マイフットボールキット)」の提供を開始しました。
マイフットボールキットは、「空気入れがなくてもサッカーを楽しめる」や「空気抜けによるボールの破棄を減らす」をコンセプトに開発された商品です。空気入れを用意するのが困難な開発途上国でサッカーを楽しめるのに加えて、現地に生産拠点を設けることで、雇用創出にも貢献できると期待されています。
モルテンのサッカーボールは、このような取り組みにより海外での知名度を高めているのです。
サッカーは海外に多くのビジネスチャンスがある
国内のサッカー人口が減少するなか、中国やアメリカ、インドなど、世界では多くの人がサッカーを楽しんでいます。そのため、サッカー用品は海外にビジネスチャンスがある産業といえます。国内のサッカー用品メーカーがどのように海外進出しているのかは、他の産業にも参考となるでしょう。