世界の野球人口は3,500万人!野球用品における海外進出事例4選

2023年に開催された第5回WBCでは、日本が3大会ぶりの優勝を果たしました。メジャーリーガーの大谷翔平選手やヌートバー選手の活躍に、日本中が熱狂したのも記憶に新しいでしょう。流行語大賞にはヌートバー選手の「ペッパーミル・パフォーマンス」や、阪神タイガースの岡田監督の「アレ」が選出されるなど、2023年は野球に注目が集まる1年となりました。

その野球を支えている野球用品には、多くの日本企業が関係しています。本記事では、野球用品の国内・海外の情勢、海外進出の企業事例を紹介します。

日本の野球人口は減少中

野球用品の現状を知るには、まず日本の野球の現状を把握することが大切です。

日本野球協議会の調査によると、2022年の日本の野球人口は101万7,584人でした。2010年は161万7,431人であったことから、10年ほどで約60万人が減少しています。

野球人口の減少は、そのまま野球用品の需要減少を意味します。そのため、日本の野球用品メーカーにとって海外進出は、生き残りをかけた重要な戦略であるともいえるのです。

参照:日本野球競技会「野球普及振興活動状況調査2022

世界の野球人口は3,500万人

世界の野球人口は3,500万人です。世界で最も競技人口が多いスポーツはバレーボールで約5億人、次いでバスケットボールの約4億5,000万人です。人気スポーツと比較して競技人口の少ない野球は、世界でメジャーなスポーツとはいえません。

野球の人気が広がらない理由は、バット・ボール・グラブなど必要な道具が多いためと考えられています。一つひとつの道具が高価で、発展途上国の子どもには縁遠いためです。

しかし、言い換えると野球はまだまだ伸びしろのあるスポーツといえるでしょう。アメリカや日本のように、世界中で野球の人気が高まることで野球人口が増える可能性もあるためです。そのようななか、野球の世界大会のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、人気獲得に貢献できるイベントとして期待されています。

野球用品の市場規模は2028年に27億米ドルへ拡大

株式会社グローバルインフォメーションによると、2022年の世界の野球用品市場は21億ドルでした。今後、年平均成長率4.3%で市場が拡大すると予想されており、2028年には27億ドルに達する見込みです。

野球はWBCの開催や、パリ五輪でオリンピック競技として復活するなど、認知度が高まりつつあります。そのため、野球用品市場は拡大が続くと予想されているのです。例えば、2022年には中東初のプロ野球リーグ「ベースボール・ユナイテッド(Baseball United)」が発足しました。このように野球用具の需要が高まっている地域があるので、未開拓の地域に進出できるチャンスともいえます。

参照:株式会社グローバルインフォメーション「野球用品市場:世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年予測

野球用品の主要市場は北米地域

出典:AABasball.com

世界で野球が広がりつつあるものの、それでも主要な市場はアメリカを含む北米地域です。とくにアメリカでは人気が高く、三大スポーツの一つに数えられるほどです。

またアメリカの野球協会は、人気獲得のためにさまざまなイノベーションの実施に取り組んでいます。

例えば2021年に立ち上げた新しいWebサイトの「AABasball.com」です。「AABasball.com」では、リーグのすべてのデジタル資産を提供し、ファンが野球のコンテンツを楽しむための中心的なハブの役割を担っています。

このような取り組みの結果、アメリカにおける野球人気はさらに高まっています。

実際に、2023年におけるMLBのレギュラーシーズンの観客動員数は7,074万人で、前年の6,455万人より9.6%も増加しました。このような人気の高まりが野球への参加を加速させ、野球用品の需要がさらに拡大すると予想されています。

野球用品の海外進出事例4選

国内の野球人口が減るなか、海外進出に取り組んでいる日本企業の事例を紹介します。

ミズノ

出典:ミズノ

ミズノは1906年に創業した日本を代表する総合スポーツメーカーです。野球・ゴルフ・陸上・水泳など、さまざまなスポーツ用品の開発・販売をしています。

同社の野球用品は100年以上の歴史があり、現在でもダイアモンドスポーツ事業と呼び、注力している分野の1つです。

2023年3月期の売上高は2,120億円(前年比22.8%増)で、海外売上比率が38.0%でした。

同社の野球用品の主な進出先はアメリカです。トッププレーヤー層に向けたブランドの「グローバルエリート」は、アメリカで着実に支持を集めています。さらにハイエンドモデルの「ミズノプロ」も展開しています。

両モデルの共通の特徴は高品質な点です。つまりミズノは、長年培った技術力・経験を活かした品質を武器に海外進出に取り組んでいます。

アシックス

出典:アシックス

アシックスは競技用シューズやスパイク、スニーカー、スポーツウェアなどを開発・販売している企業です。1952年に野球用ストッキング、1973年に野球用スパイクを発売しました。

同社の2022年12月期の売上高は4,846億円で、海外売上比率が80%と海外を中心に活躍しています。世界中の連結子会社73社を通じて世界に展開しているのが特徴です。

またアメリカでは有名野球選手と契約し、自社のスパイク・グラブを提供していることで認知度拡大に努めています。例えば、メジャーリーグで長く活躍するダルビッシュ選手です。またイチロー選手の現役時代には軽量スパイクを提供するなど、日本人選手のメジャーリーグでの活躍をサポートしています。

SSK(エスエスケイ)

出典:SSK(エスエスケイ)

SSK(エスエスケイ)は、野球用品・ソフトボール用品を中心に開発・販売しているスポーツ用品メーカーです。2023年7月期の売上高は、490億円で海外に2拠点を持っています。

同社は1980年にロサンゼルスに子会社を設立し、本格的にアメリカに進出しました。その後2003年には、大リーグ全30球団でノックバットが採用され、ノックバットならSSKという評価を得ています。

さらに、2021年にはアメリカに「SSK USA LLC」を設立し、グラブやバットを主力とした野球用品のD2CのEC販売にチャレンジしています。※D2Cとは、メーカーが消費者に直接販売するビジネスモデルのことです。

株式会社スワロースポーツ

出典:株式会社スワロースポーツ

株式会社スワロースポーツは、野球用品を取り扱うEC販売に特化した小売店です。

2002年という早い段階から野球用品のEC販売に取り組み、当初から成功を収めました。その後、2011年に越境ECにチャレンジし、現在では台湾・中国・韓国・英語圏向けのサイトを運営しています。

これらの取り組みにより、同社の売上は順調に拡大しており、中小企業における野球用品の海外進出の成功事例といえるでしょう。

国内の「野球離れ」が進むなか海外進出が成功のカギ

日本では、2010年から60万人もの野球人口が減少しています。野球用品のニーズが減少するなか、メーカーにとって海外進出は重要な経営戦略になっています。海外進出を検討している企業は、野球用品などスポーツ分野の取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。