
2024年の名目GDPランキングで、日本は世界第4位に位置しています。かつて世界第2位を誇っていた日本ですが、2010年に中国、2023年にはドイツに抜かれ、徐々に順位を下げてきました。さらに2026年にはインドに追い抜かれる見通しで、日本経済の国際的な地位低下が続いています。
こうした状況を打開するためには、GDPを向上させるための方法を正しく理解し、実践していくことが重要です。日本経済の再興に向けて、本記事ではGDPを高めるメリットや具体的な取り組み方法をわかりやすく解説します。
GDPとは
GDPとは、Gross Domestic Productの略で「国内総生産」を意味し、一定期間内に国内で新たに生産されたモノやサービスの「付加価値」の合計金額です。
また、GDPの話題で各国と比較するのによく登場する「一人当たりGDP」は、GDPを人口で割った金額です。その国に住む人々の豊かさの指標として用いられます。
一人当たりGDPと区別するため、GDPを国別GDPと呼ぶこともあります。
名目GDPと実質GDP
GDPには名目GDPと実質GDPの2種類があるので、それぞれの違いを押さえておきましょう。
・名目GDP
名目GDPとは、その年に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額です。名目GDPのデメリットは、物価の変動を反映できないことです。例えば、物価が2倍になると名目GDPも2倍になるといったように、名目GDPの増加が必ずしも経済活動の拡大を意味しないケースがあります。
・実質GDP
名目GDPから物価の変動による影響を取り除いたのが実質GDPです。物価変動の影響を取り除いているため、経済活動の実情を把握するのに重視されます。
三面等価の原則
GDPには生産面・支出面・分配面からみた際、どれも同じ金額になる「3面等価の原則」があります。
・生産面からみたGDP
生産面からみたGDPとは、国内で生産された付加価値の合計です。式で表すと以下となります。
売上高-外部購入価値=付加価値
・支出面からみたGDP
支出面からみたGDPとは、国内総支出(GDE)とも呼ばれ、1年間に政府・企業・国民がモノやサービスに費やした金額の総額です。式で表すと以下となります。
民間消費+政府消費+資本形成+輸出入=GDE
・分配面からみたGDP
分配面からみたGDPとは、国内総所得(GDI)とも呼ばれ、国内における賃金や利潤、配当などの合計金額です。つまり、GDP・GDE・GDIは同じ金額になります。
国別GDPを構成する要素とは
国別GDPの構成要素は以下の3つです。
- 人口の増減
- 一人当たりの経済効率の増減
- 物価の変動
GDPについて理解を深めるために、3つの構成要素を押さえておきましょう。
①人口の増減
国別GDPに影響する要素は人口の増減です。人口が増えるほど、労働力が増えることを意味するため、一人当たりGDPが同じなら国別GDPも増えます。
反対に、人口が減少すると国別GDPは減少します。つまり単純に計算すると、国別GDPを2倍にするには、人口を2倍にすれば良いのです。
②一人当たりの経済効率の増減
国別GDPは国民一人ひとりの経済活動の総額なので、一人当たりの経済効率の増減が影響します。
具体的に一人当たりの経済効率が上昇すると、人口が増えなくても国別GDPは増加します。例えば、技術革新により大幅に生産性を高められると経済効率が上昇し、国別GDPも上昇するといった具合です。
③物価の変動
物価の変動は国別GDPに影響します。なぜならGDPは付加価値の合計金額のため、物価の変動により付加価値も増減するためです。
例えば物価が2倍になると、付加価値も2倍となるため国別GDPも2倍に増えます。反対に物価が半分になると、国別GDPも半減します。
ただし、物価による国別GDPへの影響は注意が必要です。給料が増えても、消費するモノの値段も増えてしまい、経済が成長しているとはいえないこともあるためです。
世界の名目GDPランキングで見る日本経済
日本経済の世界的な立ち位置を把握するために、世界の名目GDPランキングを確認します。以下はIMFの統計をもとにした、2024年の世界の名目GDPランキングトップ10です。
| 順位 | 国名 | 名目GDP | 一人当たりGDP | 人口 |
| 1位 | アメリカ | 29兆2,980億ドル | 8万6,145ドル | 3億4,010万人 |
| 2位 | 中国 | 18兆7,498億ドル | 1万3,314ドル | 14億828万人 |
| 3位 | ドイツ | 4兆6,842億ドル | 5万6,087ドル | 8,351万人 |
| 4位 | 日本 | 4兆194億ドル | 3万2,443ドル | 1億2,389万人 |
| 5位 | インド | 3兆9,099億ドル | 2,695ドル | 14億5,094万人 |
| 6位 | イギリス | 3兆6,446億ドル | 5万2,648ドル | 6,923万人 |
| 7位 | フランス | 3兆1,609億ドル | 4万6,187ドル | 6,844万人 |
| 8位 | イタリア | 2兆3,721億ドル | 4万224ドル | 5,897万人 |
| 9位 | カナダ | 2兆2,436億ドル | 5万4,531ドル | 4,114万人 |
| 10位 | ブラジル | 2兆1,794億ドル | 1万252ドル | 2億1,258万人 |
参考:IMF
ランキングを見ると、アメリカと中国が他国を大きく引き離して上位を占めている一方で、日本はドイツに次ぐ世界第4位に位置しています。また、2026年に日本を追い抜くと予想されているインドは、一人当たりGDPこそ低いものの、圧倒的な人口規模を背景に名目GDPを押し上げている点が特徴です。
GDPを上げるメリット
そもそもなぜGDPを上げる必要があるのでしょうか。それはGDPが増えることで、個人・企業・国のすべてに好循環が生まれるためです。ここでは、GDPを向上させることで得られる3つのメリットを紹介します。
メリット① 国民所得・雇用の増加
GDPが増加するということは、国内で新たに生み出される付加価値が拡大していることを意味します。その結果、企業の売上や利益が伸びやすくなり、賃金の引き上げや新たな雇用の創出が期待できます。こうした動きが広がることで、国民一人ひとりの所得向上につながるのがメリットです。
メリット② 消費・投資の活性化
GDPの成長によって国民所得が向上すると、家計に余裕が生まれ、消費活動が活発化しやすくなります。消費が拡大することで市場全体の需要が高まり、企業は安定した売上を確保できるでしょう。さらに、需要の増加が見込める環境では、企業も中長期的な成長を見据えた経営判断を行いやすくなり、次のような投資が加速します。
・生産量や供給力を高めるための設備投資
・新たな価値を生み出すための技術開発・研究開発
・業務効率や品質を向上させるためのデジタル化の導入
これらの投資は、より高い付加価値を生み出し、さらなるGDPの向上につながります。こうした好循環が続くことで、経済全体が持続的に成長します。
メリット③ 税収の増加
GDP向上の恩恵は、個人や企業にとどまりません。経済活動が活発化し、企業の利益や国民の所得が増えることで、国や自治体の税収も拡大します。法人税・所得税・消費税といった税収が安定的に増えることは、国の財政基盤を強化する上で大きなメリットといえるでしょう。
税収が増加すれば、社会保障や医療、教育、インフラ整備などの公共サービスに充てられる財源も充実します。その結果、国民はより安心して生活できる環境が整い、生活の質の向上にもつながります。
このように、GDPの向上は「個人の所得増加」や「企業の成長」に加えて、「国の財政健全化」にも貢献する重要な要素です。
日本の低迷は一人当たりGDPの低さが原因

日本は2024年のGDPランキングで、アメリカ・中国・ドイツに次ぐ世界4位でした。しかし一人当たりGDPは世界24位で、国別GDPランキングと比べて低くなっています。
その主な要因は生産性の低さや生産年齢人口の減少です。
・生産性の低さ
日本の生産性が低い理由として、非正規雇用の拡大やIT化・DX化の遅れが指摘されています。
・生産年齢人口の減少
日本は超高齢社会で生産年齢人口が減少しています。つまり、労働力が減少しているため、一人当たりGDPも減少しているのです。
日本のGDP・一人当たりGDPを上げる方法

一人当たりGDPを高めるには、国民一人ひとりの生産性を上げることがカギです。なぜなら日本の人口減少は止められない流れで、物価のコントロールも困難なためです。ここでは、生産性を高める4つの方法を紹介します。
方法①働き方改革
生産性を高めるための1つの方法は、働き方改革です。働き方改革とは、労働者ごとの事情に合わせて多様な働き方を選択できるようにすることで、生産力の向上を図る改革です。
例えば、テレワークによる柔軟な働き方を推進することで、子育て世代が働きやすくなります。従来、育児や家事のために働けなかった人にとって働きやすい環境を作ることで、国全体の供給能力が向上し、一人当たりGDPの向上が期待できます。
方法②ヒト・モノ・カネ・情報の生産性アップ
全体の生産性を高めるためには、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」それぞれの生産性を高めるのが有効です。
・ヒト
人材の能力を最大限発揮できる環境整備や個々の能力を伸ばすための教育などにより、生産性を高められます。
・モノ
モノは生産に関わる設備のことで、より生産性の高い設備に切り替えることです。つまり適切な設備投資を行うことで、生産性を高められます。
・カネ
カネは資金を有効に活用することで、例えば成長市場への参入や投資といった使い方が挙げられます。また新規事業の立ち上げもカネの生産性を高めるための手法です。
・情報
ITやDXなどのデジタルツールを使うことで、生産性を高める方法です。例えばオンライン会議による移動時間の削減や、DXによるデータ収集・分析の高精度化が挙げられます。
方法③イノベーションの創出
生産性を飛躍的に向上させる方法として、イノベーションの創出があります。AIやビックデータ、ロボットなど次世代の革新的な技術により、これまでなかったモノやサービスを生み出すことで大きな付加価値を創出できるためです。
方法④輸出の拡大
GDPを考える上で、輸出の拡大は重要な視点です。輸出額が輸入額を上回る貿易黒字を達成できれば、外貨が国内に流入し、GDPを押し上げる効果があるためです。少子高齢化と人口減少が進む日本では、国内需要の拡大だけに依存した成長には限界があります。そのため、成長余地のある海外市場を積極的に取り込むことが重要です。
海外市場での売上が増えれば、企業は利益を拡大しやすくなり、結果としてGDPの増加にもつながります。
これから海外に進出する際に、判断基準になるGDPとその他の指標とは?

日本のGDPを高めるには、海外進出も一つの選択肢です。一方で、海外進出を検討する際、「どの国や地域をターゲットにすべきか」「成長が見込める市場はどこなのか」と判断に迷うケースも少なくありません。そこで、ここでは進出先を検討する上で参考となる指標をわかりやすく解説します。
指標①人口
海外進出先の選定で重要な指標は人口です。なぜなら人口が少ないと、せっかくシェアを獲得できても得られる利益が少ないからです。そのため、海外進出先を選定する際は人口が多いかどうかを確認しましょう。なお、2024年の人口ランキングは以下のとおりです。
| 順位 | 国名 | 人口 |
| 1位 | インド | 14億5,094万人 |
| 2位 | 中国 | 14億828万人 |
| 3位 | アメリカ | 3億4,010万人 |
| 4位 | インドネシア | 2億8,160万人 |
| 5位 | パキスタン | 2億3,595万人 |
| 6位 | ナイジェリア | 2億3,268万人 |
| 7位 | ブラジル | 2億1,258万人 |
| 8位 | バングラデシュ | 1億7,202万人 |
| 9位 | ロシア | 1億4,614万人 |
| 10位 | メキシコ | 1億3,227万人 |
参考:IMF
ちなみに日本の人口は1億2,389万人で世界第11位でした。
指標②GDP
次にGDP・一人当たりGDPを確認します。人口が多くてもGDPや一人当たりGDPが低いと、大きな市場があるとはいえません。商品・サービスを購入できるユーザー層が一定数以上いないと、成功は難しいためです。
例えばパキスタンは世界5位の人口ですが、GDPは世界35位で、一人当たりGDPは162位と決して裕福な国とはいえません。
つまり、ターゲットとすべき国は人口が多くて、一人当たりGDPも多い国です。
7.3 指標③人件費
海外進出先を検討する際は、人件費の水準も重要な指標です。
一般的に、人件費が安い国では製造拠点に向いています。ただし、人件費が安い国は一人当たりGDPも低い傾向にあり、購買力の高い消費者が限られるケースもあるので注意が必要です。
商品やサービスを販売する場合は、人件費が高くても購買力のある国のほうが適しています。製造や開発の拠点として進出する場合は、人件費の低さが大きな強みになるでしょう。
指標④その他
その他に、日本からの距離や日本の文化の受容度も考慮します。物理的な距離が遠いと輸送コストが高くなり、利益を確保しにくくなるためです。
東アジアなどのように日本からの距離が近く、日本の文化の受容度も高い国であれば、商品・サービスを受け入れてもらいやすく、輸送コストも抑えられるためターゲット国としておすすめです。
まとめ
日本のGDPを上げるためには、生産性の向上やイノベーションの創出が有効です。また、見落としがちですが、輸出を拡大することでGDPを押し上げる効果もあります。こうした背景を踏まえると、海外進出は企業の成長だけでなく、日本経済全体の底上げにもつながる選択肢といえるでしょう。
海外進出の成功のカギはターゲット国の選定にあります。人口・GDPなどを注視し、市場調査をしっかりとした上で決定してください。「ターゲット国の選定に不安がある方」や「今後海外進出を予定している方」は、ぜひ一度Proveにご相談ください。
よくある質問
GDPに関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 日本のGDPは世界で何位ですか?
日本のGDPは2024年時点で、アメリカ・中国・ドイツに次ぐ4位です。ただし、6位のインドが迫ってきており、2026年には追い抜かれる見込みです。
Q2. GDPが高いと何がいいですか?
GDPが高いと以下のメリットがあります。
・国民所得・雇用の増加
・消費・投資の活性化
・税収の増加
これらのメリットにより国民は所得が増え、企業は利益を出しやすくなり、国は公共サービスを充実できます。このことから、国民はより暮らしやすい生活を実現できるといえるでしょう。
Q3. なぜ日本は一人当たりGDPが低いのか?
日本の一人当たりGDPが伸び悩んでいる主な要因は、「生産性の低さ」と「生産年齢人口の減少」にあります。日本は国全体のGDP規模こそ大きいものの、世界で見ると人口が多い国に分類されるため、一人当たりに換算すると数値が伸びにくい構造になっています。
特に、生産年齢人口の減少により労働力が縮小している点は大きな課題です。IT化やDXの遅れ、非正規雇用の増加などが影響し、国民一人ひとりが生み出す付加価値が十分に高まっていないことも一人当たりGDPが低い要因といえます。
