ラムリサーチは、アメリカに本社を置く半導体製造装置メーカーです。特に半導体エッチング装置に強みがあります。半導体製造におけるエッチングとは、設計図どおりに基板上の被膜を削り取る工程のことです。本記事では、ラムリサーチの会社概要や経営状況を解説します。
ラムリサーチとはどんな会社

出典:ラムリサーチ
ラムリサーチは、半導体エッチング装置の分野において世界トップシェアを誇る企業です。経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略」によると、2021年の同分野における市場シェアは37.7%に達し、2位の東京エレクトロンの25.3%と大きく差があります。ここでは、ラムリサーチの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
ラムリサーチの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Lam Research Corporation |
本社 | アメリカ |
設立 | 1980年 |
進出地域 | 18カ国・地域 |
従業員 | 17,450人(2024年8月22日時点) |
売上高 | 149億ドル(2024年度) |
歴史
ラムリサーチは、1980年にデビッド・K・ラム氏によって半導体製造装置の製造・販売・サービスを目的に設立されました。1985年にヨーロッパ、1989年に韓国、1992年に台湾とシンガポールにオフィスを開設し、アジア市場への進出を加速。さらに1993年に日本にプロセス開発センターを開設し、翌年には中国に拠点を設立しました。1995年には売上高10億ドルを達成。2008年にウエーハ洗浄装置大手のSEZグループを買収、2012年には事業規模の拡大や最新技術の導入を目的に同業のノベラス・システムズを買収しました。近年では、2021年にマレーシアに製造施設、2022年には韓国にテクノロジーセンターを開設するなど、海外事業の拡大を続けています。
経営理念
ラムリサーチは経営理念として、ミッションに「次世代を担う半導体のブレークスルーを実現します。」を掲げ、その達成のために以下の「行動指針」と「中核となる価値観」を重視しています。
●行動指針
- 顧客、会社、個人の全てを第一に
- 顧客信頼度のナンバーワン達成
- 最高の人材を惹きつけ、維持し、育成
- 業界最高水準のソリューションを提供
- 株主へ価値を提供するための財務目標の達成
- より良い世界を目指す行動
●中核となる価値観
- 達成
- 機敏性
- 正直と誠実
- インクルージョン&ダイバーシティー
- イノベーション&継続的な改善
- 相互の信頼と敬意
- オープン・コミュニケーション
- 主体性と成果責任
- チームワーク
引用:ラムリサーチ「ラムリサーチについて」
ラムリサーチの経営状況
ラムリサーチの経営状況として、直近6年間の売上高と純利益の推移を紹介します。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
2024年度の売上高は149億ドル(2兆2,350億円)で、2023年度の174億ドル(2兆6,100億円)と比較して、25億ドル(3,750億円)減少しました。また、2024年度の純利益は38億ドル(5,700億円)で、2023年度の45億ドル(6,750億円)と比較して、7億ドル(1,050億円)減少しました。※1ドル=150円換算
売上高と純利益が減少した要因は、不揮発性メモリ市場の低迷によるシステム及びカスタマーサポート関連の需要の減少が挙げられます。※不揮発性メモリとは、給電がなくてもデータを保持するメモリの総称です。
同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
中国・韓国・台湾・日本の売上高が全体の82%を占めており、特に中国の売上高が他の地域と比べて多いことがわかります。
ラムリサーチの売上高の内訳
ラムリサーチの事業区分は、「半導体製造装置の製造とサービス」の一つです。そのため、事業別の売上高などから同社の経営状況について深掘りできないため、ここでは売上高の内訳を紹介します。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
グラフのように、ラムリサーチの売上高はシステム収入とカスタマーサポート関連収入で分類できます。ここではさらに、それぞれの収入の内容と売上高の推移を紹介します。
システム収入
システム収入は、成膜やエッチング、洗浄工程を担う最先端装置の販売による売上高が該当します。※半導体の成膜工程とは、ウエーハ上に半導体膜や配線膜、絶縁膜などの薄い膜を形成する工程です。エッチングはその被膜を設計通りに削り取る工程で、洗浄工程は表面に付着した不純物や汚れを取り除く工程を指します。
システム収入の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
2024年度の売上高は89億ドル(1兆3,350億円)で、2023年度の107億ドル(1兆6,050億円)と比較して、18億ドル(2,700億円)減少しました。売上高に占める割合の大きいシステム収入が2年連続で減少したことが、同社の減収減益の大きな要因です。
また、2021年に急激に売上高が増加した要因は、多くの顧客が半導体設備への投資を拡大したことによる大型受注の増加が挙げられます。
カスタマーサポート関連収入
カスタマーサポート関連収入は顧客へのカスタマーサービス、スペアパーツの販売、製品のアップグレード、及び非最先端装置の販売による売上高が該当します。カスタマーサポート関連収入の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
2024年度の売上高は60億ドル(9,000億円)で、2023年度の67億ドル(1兆50億円)と比較して、7億ドル(1,050億円)減少しました。2023年度と比較して減少したものの、グラフから高い水準を維持していると言えます。
ラムリサーチの市場別売上高の構成割合
ラムリサーチは、「メモリ」「ファウンドリ」「ロジック/統合デバイス製造」の市場向けに製品やサービスを展開しています。同社の製品やサービスがどのような分野で使われているのかを把握するために、ここでは市場別売上高の構成割合と推移を紹介します。
市場別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
グラフから、メモリとファウンドリ市場向けの製品が同社の中核を担っていることがわかります。なお、ファウンドリとは半導体製造プロセスの前工程の製造受託に特化した企業のことです。ロジックとは、ロジック半導体のことで、パソコンやスマートフォンのCPUのように演算処理を担う半導体を指します。
市場別売上高の構成割合の推移は以下のとおりです。

参考:ラムリサーチ「Annual Reports & Proxy」
グラフから、ファウンドリとロジック/統合デバイス製造市場向けの売上高の割合が増加傾向にあるとわかります。
半導体エッチングに強みを持つラムリサーチ
ラムリサーチは、半導体エッチング装置で世界トップシェアを誇る半導体製造装置メーカーです。その技術力を生かし、中国や韓国、台湾、日本への事業展開を強化したことで、現在の地位を確立しました。日本市場においては30年以上の実績があり、同社は日本の半導体メーカーを支えている企業の一つです。