
リオ・ティントは、イギリスに本社を置く鉱業・金属会社です。150年以上の歴史があり、世界35カ国で事業を展開しています。主な製品は、鉄鉱石・アルミニウム・銅・リチウム・ダイヤモンドなどです。本記事では、リオ・ティントの会社概要や経営状況、成長戦略を解説します。
リオ・ティントとはどんな会社

出典:リオ・ティント
リオ・ティントは、ブラジルのヴァーレ、オーストラリアのBHPグループと並び、世界三大資源メジャーの一つです。ここでは、リオ・ティントの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
リオ・ティントの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Rio Tinto plc |
本社 | イギリス |
設立 | 1873年 |
進出地域 | 世界35カ国 |
従業員 | 60,000人(2024年度) |
売上高 | 537億ドル(2024年度) |
歴史
1869年、スペイン政府はリオ・ティント鉱山の売却を決定しました。これに対し、最も有利な条件を提示したのがスコットランド人の起業家ヒュー・マセソン氏が率いる投資家グループでした。
1873年、同グループはヒュー・マセソン氏を会長として「リオ・ティント社」を設立。取得した鉱山に新技術を導入して生産性を高め、1883年には世界の銅生産の10%を占めるまでに成長しました。
1929年にはアフリカのザンビアの銅鉱山地帯に進出し、銅資産を強化。1963年には、世界最大の銅生産企業へと成長しました。1968年にはオーストラリアの石炭鉱山を買収し、事業をさらに拡大。1970年代にはダイヤモンド鉱床を発見するなど、多様なポートフォリオを構築しました。
2007年にはカナダのアルキャンを買収。これにより、アルミニウム業界の世界的リーダーとなり、2016年には業界初の認定低炭素アルミニウムの開発に成功しました。
経営理念
リオ・ティントは経営理念として、「世界が必要とする材料を提供するためのより良い方法を見つける」をパーパスに掲げています。
パーパスの実現のために、同社では次のような取り組みを行っています。
- BioIron
BioIronは製鉄プロセスにおいて使用される還元剤の原料炭の代わりに、農業副産物のバイオマスを使用する技術のことです。製鉄時の二酸化炭素排出量を95%以上削減できる可能性があるとして開発が進められています。
- アルミニウム・リサイクル事業を強化
北米でアルミニウム・リサイクル事業を展開しているマタルコ社の50%の株式を取得することで合意。これにより、低炭素アルミニウム、リサイクル・アルミニウム、混合アルミニウムといった幅広い低炭素原料を提供できるとしています。
リオ・ティントの経営状況
リオ・ティントの経営状況として、直近6年間の売上高とEBITDAの推移を紹介します。※EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えた指標です。

参考:リオ・ティント「Annual report」
2024年度の売上高は537億ドル(8兆550億円)で、2023年度の540億ドル(8兆1,000億円)と比較して、3億ドル(450億円)減少しました。また、2024年度のEBITDAは233億ドル(3兆4,950億円)で、2023年度の239億ドル(3兆5,850億円)と比較して、6億ドル(900億円)減少しました。売上高とEBITDAが減少した要因は、鉄鉱石の価格が下落したことが挙げられます。 ※1ドル=150円換算
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
リオ・ティントは中華圏で半分以上の売上を確保しており、次いで売上高の割合が多いのはアメリカの16.8%です。
リオ・ティントの事業別売上高の推移
リオ・ティントの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
リオ・ティントは銅を採掘するためにリオ・ティント鉱山の購入から始まった企業ですが、現在では鉄鉱石事業やアルミニウム事業が中核を担っています。ここでは、各事業の内容に加えて、売上高とEBITDAの推移を紹介します。
鉄鉱石事業
鉄鉱石事業は17の鉄鉱石鉱山、4つの港ターミナルを運営している事業です。同事業の売上高とEBITDAの推移は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
2024年度の売上高は293億ドル(4兆3,950億円)で、2023年度の322億ドル(4兆8,300億円)と比較して、29億ドル(4,350億円)減少しました。また、2024年度のEBITDAは162億ドル(2兆4,300億円)で、2023年度の200億ドル(3兆円)と比較して、38億ドル(5,700億円)減少しました。売上高とEBITDAが減少した要因は、鉄鉱石の生産量と価格の減少が挙げられます。
アルミニウム事業
アルミニウム事業は、太陽光パネルや送電線、電気自動車、スマートフォンなどに使用されるアルミニウムを生産する事業です。同事業の売上高とEBITDAの推移は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
2024年度の売上高は137億ドル(2兆550億円)で、2023年度の123億ドル(1兆8,450億円)と比較して、14億ドル(2,100億円)増加しました。また、2024年度のEBITDAは37億ドル(5,550億円)で、2023年度の23億ドル(3,450億円)と比較して、14億ドル(2,100億円)増加しました。売上高とEBITDAが増加した要因は、アルミニウムの価格が上昇したことが挙げられます。
銅事業
銅事業は年間100万トンの銅を生産している事業です。同事業の売上高とEBITDAの推移は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
2024年度の売上高は93億ドル(1兆3,950億円)で、2023年度の67億ドル(1兆50億円)と比較して、26億ドル(3,900億円)増加しました。また、2024年度のEBITDAは34億ドル(5,100億円)で、2023年度の20億ドル(3,000億円)と比較して、14億ドル(2,100億円)増加しました。売上高とEBITDAが増加した要因は、銅の取引量と価格の増加が挙げられます。
鉱物事業
鉱物事業は、リチウムやホウ酸塩、二酸化チタン、ダイヤモンドなどを生産している事業です。同事業の売上高とEBITDAの推移は以下のとおりです。

参考:リオ・ティント「Annual report」
2024年度の売上高は55億ドル(8,250億円)で、2023年度の59億ドル(8,850億円)と比較して、4億ドル(600億円)減少しました。また、2024年度のEBITDAは11億ドル(1,650億円)で、2023年度の14億ドル(2,100億円)と比較して、3億ドル(450億円)減少しました。売上高とEBITDAが減少した要因は、二酸化チタンやホウ酸塩の価格低下が挙げられます。
リオ・ティントの成長戦略
リオ・ティントは成長戦略として、エネルギー移行のために不可欠な材料の生産拡大に加えて、運用上の二酸化炭素の排出量削減やバリューチェーンの脱炭素化の実現を掲げています。
また、同社は成長を実現するには、社会の利益に沿って推進することが重要と考えており、次の4つの目標が成長するための道筋を示すとしています。
- チームが日々ベストを尽くし、安全かつ持続的に資産の価値の最大化を実現する。
- あらゆる意思決定において安全性と持続可能性を考慮する。
- 既存のパイプラインを予定通り進めながら、将来に向けたポートフォリオを構築する。
- 有意義なパートナーシップを構築し、信頼を獲得することで社会的ライセンスを強化する。
リオ・ティントは戦略的買収で事業を拡大
リオ・ティントは、世界三大資源メジャーの一つです。同社がその地位を確立した要因は、150年以上の歴史の中で、戦略的買収を繰り返してポートフォリオを最適化してきたことです。事業拡大を目指している経営者様は、同社の戦略を参考にしてみてはいかがでしょうか。