
コーニンクレッカ・アホールド・デレーズ(以降は、「アホールド・デレーズ」と言います。)は、オランダに本社を置く世界有数の小売企業です。世界9カ国に16のブランドを展開し、7,765店舗の小売店を運営しています。本記事では、アホールド・デレーズの会社概要や経営状況、成長戦略を紹介します。
アホールド・デレーズとはどんな会社

出典:アホールド・デレーズ
アホールド・デレーズは、150年以上の歴史を持つ世界有数の小売企業です。実際に、National Retail Federationの「Top 50 Global Retailers 2024(世界の小売企業トップ50 2024年版)」において、同社は6位にランクインしました。ここではアホールド・デレーズの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
アホールド・デレーズの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Koninklijke Ahold Delhaize N.V. |
本社 | オランダ |
設立 | 2016年 |
進出地域 | 世界9カ国 |
ブランド | 16 |
店舗数 | 7,765店舗(2024年度) |
従業員 | 388,000人(2024年度) |
売上高 | 894億ユーロ(2024年度) |
歴史
アホールド・デレーズの始まりは、1867年にベルギーでデレーズ兄弟が食料品卸売店「デレーズ」を創業したことです。
そして、オランダでアルバート・ハイン氏とその妻が1887年に、食料品店「アルバート・ハイン」を開きました。アルバート・ハインは1952年に、最初のセルフサービス型スーパーマーケットをオープンしました。
1962年に、持株会社「アホールド」を設立。1987年に、アホールドの創業100周年を記念して、オランダ王室よりコーニンクレッカ(王立)の称号が授与されました。それを受けて、同社はコーニンクレッカ・アホールドに改名。
1996年にはアメリカのスーパーマーケットチェーンの「Stop & Shop」、1998年にはアメリカの食料品チェーン「ジャイアント・フード」を買収し、アメリカの事業を強化しました。
2016年に、ベルギーのデレーズとオランダのコーニンクレッカ・アホールドが合併し、コーニンクレッカ・アホールド・デレーズが誕生しました。
経営理念
アホールド・デレーズは経営理念として、次のパーパス・ビジョン・バリューを掲げています。
- パーパス(目的)
人々と地球のより健康な未来のために、より良い食事と暮らしをすべての人に提供する。
- ビジョン(将来像・理想像)
地元で信頼される食品小売業者になる。
- バリュー(価値観)
同社はパーパスとビジョンの実現のために、次の6つのバリューを重視しています。
勇気:寛容な姿勢で大胆かつ革新的に変化を推進する。
誠実さ:正しいことを行い、顧客の信頼を獲得する。
チームワーク:共に責任を持ち、協力し合って勝利する。
おもいやり:顧客・同僚、そしてコミュニティを大切にする。
ユーモア:謙虚で地に足がついているため、自分たちをあまり真剣に受け止めないようにする。
アホールド・デレーズの経営状況
アホールド・デレーズの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:アホールド・デレーズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は894億ユーロ(14兆3,040億円)で、2023年度の886億ユーロ(14兆1,760億円)と比較して、8億ユーロ(1,280億円)増加しました。また、2024年度の営業利益は28億ユーロ(4,480億円)で、2023年度と同水準を維持しました。※1ユーロ=160円換算
売上高が増加した要因は、アメリカの薬局とオンライン食料品店が継続的に成長したことが挙げられます。また、売上高が成長したのに営業利益が伸びなかった要因は、不採算店舗の閉鎖やオランダの年金制度の変更に伴う費用増が挙げられます。
2023年度の営業利益は、2022年度と比較して10億ユーロ(1,600億円)減少しました。この要因は、アメリカにおける販売コストの上昇と、ベルギーにおけるストライキの影響が挙げられます。
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アホールド・デレーズ「Annual Reports」
アホールド・デレーズはアメリカの売上高の割合が大きいことから、アメリカ市場への進出に成功した企業と言えます。なお、同社の海外売上比率は78.6%です。
アホールド・デレーズの事業別売上高の推移
アホールド・デレーズの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アホールド・デレーズ「Annual Reports」
アホールド・デレーズの事業は、米国事業と欧州事業の2つです。ここでは、さらに各事業の内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
米国事業
米国事業は、アメリカにおける小売事業のことです。アメリカでは2,017店舗を運営しており、小売店に加えて、薬局やガソリンスタンドなどを展開しています。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アホールド・デレーズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は542億ユーロ(8兆6,720億円)で、2023年度の546億ユーロ(8兆7,360億円)と比較して、4億ユーロ(640億円)減少しました。一方、2024年度の営業利益は22億ユーロ(3,520億円)で、2023年度の20億ユーロ(3,200億円)と比較して、2億ユーロ(320億円)増加しました。
売上高が減少した要因は、非生鮮食品・非食品・ガソリンの売上低下が挙げられます。一方、営業利益が増加した要因は、売上に占める自社ブランド商品の割合が増えたことが挙げられます。
欧州事業
欧州事業は、オランダ・ベルギー・チェコ共和国・ギリシャ・セルビア・ルーマニア・スイス・ルクセンブルクにおける小売事業のことです。欧州8カ国に5,748店舗を展開しています。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アホールド・デレーズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は352億ユーロ(5兆6,320億円)で、2023年度の341億ユーロ(5兆4,560億円)と比較して、11億ユーロ(1,760億円)増加しました。また、2024年度の営業利益は9億ユーロ(1,440億円)で、2023年度と同水準を維持しました。
売上高が増加した要因は、店舗数が増えたことによる販売量の増加が挙げられます。また、売上高が成長したのに営業利益が伸びなかった要因は、複数の店舗売却に伴う損失が挙げられます。
アホールド・デレーズの成長戦略
アホールド・デレーズは成長戦略として、「Growing Together strategy(共に成長する戦略)」を掲げています。具体的に次の4つの手段により成長を目指しています。
- 信頼できる製品を手頃な価格で提供し、顧客価値提案につながる投資をする。※顧客価値提案とは、企業が顧客に対して提供する商品やサービスの価値やメリットを伝えることです。
- 顧客へのリーチを拡大してブランドを強化すると同時に、ポートフォリオを最適化する。
- 既存のビジネスモデルの統合や顧客への新たなサービスの提供など、成長や効率化のためのイノベーションを推進する。
- グループのスケールメリットを活用して、一貫した業務および財務パフォーマンスを実現する。
アホールド・デレーズは成長市場への注力で成功
アホールド・デレーズは、世界9カ国で7,765店舗を展開する小売企業です。もともとはベルギーとオランダの企業ですが、アメリカ企業を次々と買収し事業を拡大した結果、現在はアメリカでの売上高が最も多くなっています。
同社の成功の鍵は、成長市場に焦点を当てた戦略にあります。買収や売却でポートフォリオを最適化しながら、収益性の高い市場への投資を進めてきました。事業の成長に課題を感じている経営者様は、アホールド・デレーズの事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。