
CJ第一製糖は、韓国に本社を置く食品メーカーです。冷凍食品や韓国調味料、飲むお酢などの製品を展開しています。本記事では、CJ第一製糖の会社概要や経営状況をわかりやすく解説します。
CJ第一製糖とはどんな会社

出典:CJ第一製糖
CJ第一製糖は韓国を代表する食品メーカーです。同社はキムチやのりなど、多くの韓国食品(Kフード)を販売しています。ここでは、同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
※なお、Kフードは世界的に人気が高まっている食品です。韓国農林畜産食品部によると、2024年1月から7月までの韓国食品の累計輸出額が56億7,000万ドル(8,505億円)で、前年同期比で9.8%増加しました。※1ドル=150円換算
参考:JETRO「K-フードの輸出好調が続く、欧州向け輸出額は前年同期比3割増」
会社概要
CJ第一製糖の会社概要は以下のとおりです。
会社名 | CJ第一製糖株式会社 |
本社 | 韓国 |
設立 | 1953年 |
進出地域 | 60カ国以上 |
ブランド数 | 25 |
拠点 | 工場:15カ所 子会社:217 |
売上高 | 29兆235億ウォン(2023年度) |
歴史
CJ第一製糖は、1953年にサムスングループ※初の製造業として設立されました。1958年に製糖及び製粉事業を開始し、1963年に調味料事業を開始しました。そして、1984年に製薬事業に進出。1996年には即席ご飯「ヘッバン」を開発し、その後は、次のようにアジアを中心に事業を拡大しました。
1997年:フィリピンに動物飼料工場を開設
2000年:インドネシアで養鶏事業を開始
2003年:中国の飼料事業に進出
2006年:ベトナムで畜産事業を開始
2008年:オーガニック食品事業へ進出
さらに、2015年には中国の飼料会社、2016年にはベトナムの冷凍食品企業を買収。その後も多くの企業を買収しながら、食品・製薬・畜産など多岐にわたる分野に進出し、成長を続けています。
※サムスングループは、家電や電子部品の製造を中心に多様な事業を展開するコングロマリットとして知られていますが、1938年設立当初は食料品などを取り扱う貿易会社でした。
経営理念
CJ第一製糖の設立以来の経営理念は、「CJ経営哲学」として継承されています。「CJ経営哲学」におけるミッション・ビジョン・バリューは次のとおりです。
・ミッション
オンリーワンの製品とサービスで最高の価値を創出し、国家と社会に寄与する
・ビジョン
健康、楽しみ、便利さを創造するグローバル生活文化企業
・バリュー
同社は核心価値として、「人材」「オンリーワン」「共生」を掲げています。つまり、人材育成をしっかりと行い、唯一無二の製品とサービスを提供し、お互い尊重し共生する産業生態系を造成することで、ミッションやビジョンの達成を目指しています。
参考:CJ社員の約束
CJ第一製糖の経営状況
CJ第一製糖の経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
2023年度の売上高は29兆235億ウォン(3兆1,926億円)で、2022年度の30兆795億ウォン(3兆3,087億円)と比較して、1兆560億ウォン(1,162億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は1兆2,916億ウォン(1,421億円)で、2022年度の1兆6,647億ウォン(1,831億円)と比較して、3,731億ウォン(410億円)減少しました。※1ウォン=0.11円換算
売上高と営業利益が減少した要因は、バイオテクノロジー事業とフィード・ケア事業の業績不振が挙げられます。
また、同社の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
CJ第一製糖の海外売上高比率は49.5%で、そのうちの約半分をアメリカが占めています。また、ヨーロッパの売上高の割合が低いのも特徴です。
CJ第一製糖の事業別売上高の推移
CJ第一製糖の経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
CJ第一製糖は食品メーカーですが、物流事業が食品事業と同程度の売上高を確保しています。ここでは各事業の内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
食品事業
食品事業は食品や加工食品の開発や販売を担う事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
2023年度の売上高は11兆2,644億ウォン(1兆2,391億円)で、2022年度の11兆1,042億ウォン(1兆2,215億円)と比較して、1,602億ウォン(176億円)増加しました。一方、2023年度の営業利益は6,003億ウォン(660億円)で、2022年度の6,307億ウォン(694億円)と比較して、304億ウォン(33億円)減少しました。
売上高が増加した要因は、アメリカやアジア、ヨーロッパでKフードの需要の高まりにより販売量が増加したことが挙げられます。一方、営業利益が減少した要因は、不利な為替レートや原材料の高騰が挙げられます。
物流事業
物流事業は、輸送・保管・出荷・荷受けなどを請け負う事業です。物流事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
2023年度の売上高は11兆1,330億ウォン(1兆2,246億円)で、2022年度の11兆3,001億ウォン(1兆2,430億円)と比較して、1,671億ウォン(183億円)減少しました。一方、2023年度の営業利益は5,771億ウォン(635億円)で、2022年度の4,318億ウォン(475億円)と比較して、1,453億ウォン(160億円)増加しました。
売上高が減少した要因は、国際輸送の運賃が下落したことが挙げられます。一方で、営業利益が増加した要因は、生産性や収益構造の改善による収益性の向上が挙げられます。
バイオテクノロジー事業
バイオテクノロジー事業は、アミノ酸や植物性高たんぱく質などを販売する事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
※2023年度にバイオテクノロジー事業はFNT事業と分割しました。上記グラフの2023年度のデータはバイオテクノロジー事業とFNT事業を合算したものです。
2023年度の売上高は4兆1,343億ウォン(4,548億円)で、2022年度の4兆8,540億ウォン(5,339億円)と比較して、7,197億ウォン(792億円)減少しました。また2023年度の営業利益は2,331億ウォン(256億円)で、2022年度の6,260億ウォン(689億円)と比較して、3,929億ウォン(432億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した要因は、需要低迷による販売数量の減少に加えて、販売価格の下落が挙げられます。
フィード・ケア事業
フィード・ケア事業は、飼料や配合飼料の販売を担う事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:CJ第一製糖「Financial Information」
※フィード・ケア事業は、2022年度に新設された事業のため、2021年以前の売上高や営業利益のデータがありません。
2023年度の売上高は2兆4,917億ウォン(2,741億円)で、2022年度の2兆8,212億ウォン(3,103億円)と比較して、3,295億ウォン(362億円)減少しました。また、2023年度の営業利益は895億ウォン(98億円)の赤字で、2022年度の3億ウォン(3,300万円)の赤字と比較して、892億ウォン(98億円)赤字幅が拡大しました。
営業利益の赤字が拡大した要因は、インドネシアの飼料の需要低迷やベトナムの畜産業の収益性悪化、飼料などのコスト負担の増加が挙げられます。
CJ第一製糖は積極的なM&Aで事業を拡大した企業
CJ第一製糖は、韓国を代表する食品メーカーです。Kフードの世界的な人気を背景に、食品事業は売上高を伸ばしています。今後は新たな事業への進出と海外市場の拡大を目指しており、M&Aを積極的に実行する予定です。また、トランプ米大統領の「保護貿易主義」に対応するために、アメリカで生産工場の建設を計画しているとのことです。事業拡大や海外進出を検討している経営者様は、同社の事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。