「日本食レストラン=ラーメン屋」にまでなりつつある海外ラーメン市場。一風堂の戦略とインスタントラーメン市場も紹介

総務省統計局の「経済センサス ― 活動調査」によると、2012年時点の日本国内で営業するラーメン店は1万9264店に上り約5560億円と発表されています。日本のラーメン市場は大きいですが、出店ラッシュによって各地のラーメン店の競争は激化傾向にあります。

そのため、新規出店しても業績が振るわず、1年未満で閉店を余儀なくされる店も多く、国内は飽和状態となっています。

 

このように日本のラーメン市場が飽和状態になる中、近年、海外に活路を見出すラーメン店が増加しています。

JETROの調査によると、海外進出している日本のラーメン店は2014年時点で166社となっており、中国、香港、台湾、シンガポール、タイ、ベトナムなどのアジア地域が多いようです。

特に海外では「日本食のレストランといったらラーメン屋さん」と連想する現地の方も多い状況です。

ここではラーメンの海外進出の動向と、海外で成功を収めたラーメン店についてお話します。

 

日本食レストランの海外出店状況と海外でのラーメン店の動向

日本食レストランの海外出店状況

全米の日本食レストランの軒数は18,600軒です。この数は2010年(14,129軒)の1.32倍、2005年(9,182軒)の2.03倍、2000年の3.11倍となっています。全米での日本食レストラン飛躍的な軒数増加が見てとれるでしょう。

日本食レストラン

 

10年前の海外における代表的な日本食と言えば「寿司・天ぷら・刺身」でしたが、JNTOによる「訪日外客訪問地調査」では、この10年で変化が起こっているようです。訪日外国人が期待する動機として長年1位であった「ショッピング」が「日本の食事」になっており、「特に満足した日本の食事」のランキングでは、今まで上位3位にはなかったラーメンが2位にランクインするようになりました。

 

「和食」がユネスコの無形文化遺産になり、日本の文化や製品を売り込む「クールジャパン戦略」推進があったことから、今後日本食だけでなくラーメン店の海外展開は追い風となるでしょう。実際に、北米や欧州での出店にしたい一部のラーメンチェーン店に対して、官民ファンド「クールジャパン機構」も積極的に融資を行っています。

 

海外のラーメン店の動向

新横浜ラーメン博物館は、2013年2月に、世界各国のラーメン店の数を公表しています。

  • アメリカ:305店舗
  • タイ:171店舗
  • シンガポール:148店舗
  • 中国:125店舗

 

最も多いのはアメリカで、世界では1000店舗を超えています。

現在はアジアを中心に店舗数が増えており、2020年の海外における日本のラーメン店の売上高は、約328億円まで膨らむと予測されています。

 

ニューヨーク州のラーメンブーム

ニューヨーク市は新規レストランをオープンする上で、家賃、人件費などのあらゆる面において最も難易度のある市場と言われています。しかし、広大な面積に店が点在するロサンゼルス市とは違い、一度火が着けば顧客の口コミが広がるのも速いという特徴があります。

 

1990年代、日本食が好きなニューヨーカーを楽しませるほど日本食のバリエーションはありませでしたが、2000年代に入ると、ラーメンブームが起こりました。その先駆けとなったのは、日本のラーメン店ではなく、韓国系米国人であるデビッド・チャン氏のMOMOFUKUというラーメン店でした。

momofuku

https://www.seenewyork.nyc/guide/momofuku-noodle-bar/

 

ラーメン店以外のレストランも多角経営して成功を納めたチャン氏は、日本国内のラーメン店を食べ歩き徹底的にスープと麺を研究し、2004年にニューヨーク市にラーメン店を開店しました。

その後、MOMOFUKUを追いかけるようにして、日本人経営のラーメン店が続々と進出。2008年に、福岡発祥のチェーン店、一風堂がニューヨーク市に上陸し、2016年以降では、東京発豚骨ラーメンのTONCHIN(屯ちん)や、福岡発豚骨ラーメンのICHIRAN(一蘭)が店舗をオープンした。2017年12月時点のニューヨーク市内のラーメン店の数は100を超えたと言われています。

Tonchin

※Tonchin

https://foodexgroup.com/information/12%E6%9C%884%E6%97%A5%E3%80%81tonchin-new-york%E3%81%8C%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E8%87%B4%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%81/

 

ロサンゼルス

「第1回ロサンゼルス・ラーメン横丁」が2013年9月に行われた際、2万人が日本のラーメンを求めて集まるほど、ロサンゼルス市においてもラーメンの人気は絶大です。ラーメンの人気に伴って、ここ最近うどん店も新規開店が目立てっているようです。

ロサンゼルスラーメン

※リトルトーキョーあるパスタ風の創作うどんMARUGAME MONZO

https://www.latimes.com/food/la-fo-gold-20130914-story.html

 

日本のラーメン店がアメリカに出店するのは、そのほとんどがニューヨークやロサンゼルスなどの一部の大都市で、提供地域は限定的で、EC化も進んでいませんでした。

そこの目を付けた日本人の起業家長谷川氏がアメリカで立ち上げた「Ramen Hero」は、誰でも10分で本格ラーメンを楽しめる料理キットをEコマースで販売しています。

 

2017年、カリフォルニア州で販売を開始し、現在は48州に展開しています。2019年の注文数は6,000件を超え、売上は前年度比283%成長しました。Ramen Heroは、ラーメンを調理したことがない人も、全米のどこに住んでいても、本格的なラーメンを気軽に楽める機会を提供することで話題になっています。

ramen

https://thebridge.jp/2020/09/ramen-ec-ramenhero-national-ramen-brand-usa-the-first-part

 

英国

英国の首都ロンドンでも日本のラーメンは人気で、連日、ラーメン店に行列ができるほどです。2012年、大阪を拠点とする塩ラーメン店が進出して以降、ロンドン英国で日本のラーメンがブームが起こったと言われています。

その後は、とんこつ系のラーメン店が進出しており、現在、現地の人々にはとんこつ系ラーメンの人気が圧倒的のようです。

イギリスラーメン

http://monkey-english.com/london-ramen-restaurants/

 

アメリカでもイギリスでも、ラーメン一杯の平均的な値段は、日本円にして1800〜3000円と高価格帯で提供されており、日本におけるB級グルメとは少し違う位置づけにあります。夜ラーメン店に行ってワインやビールと一緒にオーダーすると、サービス料も含めてかなりの金額になるようです。

 

タイ

従来からタイでは小麦麺を使った「バミー」が食べられていますが、日本の「ラーメン」はタイ語のバミーではなく、「ラーメン」と呼ばれて区別されています。タイで日本のラーメン店が進出したのは数十年前でした。

初めて進出したのは、現在ではタイ国内に90店舗近くの支店を持つ石川県が本社の「八番ラーメン」です。石川県内で地域独占に成功し、タイでも大成功を収めています。八番ラーメンの進出を皮切りに、現在タイには、多くの有名ラーメンチェーンが出店しています。

タイラーメン

http://www.foodrink.asia/news/2013/01/post-1524.php

 

筑豊ラーメン「山小屋」、長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」、「桂花ラーメン」、「ばんからラーメン」など、既に150以上のラーメン店がしのぎを削っている。

 

一風堂 力の源HD

一風堂

https://www.osanpotsushin.com/ippudo/

 

海外への出店状況

福岡で創業した一風堂は、1994年、「新横浜ラーメン博物館」に出店したことがきっかけで全国的な知名度を獲得しました。日本の中心である首都圏での成功体験を踏まえ、世界トップレベルの都市ニューヨークで成功することで世界的な知名度が獲得したいと考えました。

 

2008年、マンハッタンに一風堂がオープンしました。New York Timesでは 「わずか$13で飛ぶ日本への旅」と大々的に紹介され、一風堂のニューヨーク上陸は、アメリカのラーメン業界だけでなく、世界のラーメン事情を大きく変えたと言われています。

もちろん一風堂が出店する以前にもアメリカにはラーメン屋はありましたが、その違いは、多くの店舗が日本人駐在員をターゲットとしており、地元の人がラーメンを食べることがあまりなかあったことです。

先ほど紹介したMOMOFUKUや一風堂が地元アメリカで受け入れられ、今ではラーメンマップまで販売されるようになっています。

 

  • 2011年、香港
  • 2012年、台湾、中国、オーストラリア・シドニー
  • 2013年、マレーシア・クアラルンプール
  • 2014年、タイ・バンコク、インドネシア・ジャカルタ、フィリピン・マニラ、イギリス・ロンドン
  • 2016年、フランス・パリ

 

ラーメンが世界的に普及した要因として、日本のアニメの存在が挙げられます。例えば、ポケットモンスター、ジブリの崖の上のポニョ、NARUTOの中では、キャラクターがラーメンを食べているシーンがあります。

海外の人々が、アニメや漫画の中で登場人物が美味しそうにラーメンを食べる姿を見て、「どんな味がするのだろう」と多くのアニメファンの興味を引いたのです。

 

官民ファンドの後押しを受けたパリ・ラーメンウィークが大盛況

一風堂にとって海外進出の追い風となった出来事は、持ち株体制を開始したタイミングで、経済産業省が2014年に「クール・ジャパン戦略事業」の一環として開催した「パリ・ラーメンウィーク ZUZUTTO」です。

クールジャパン

https://www.chikaranomoto.com/new-news/119/

 

この催しの企画やコンサルティングを担当したのが力の源カンパニーの河原氏でした。会場となったパリのレストランマセオには連日長蛇の列ができ、このプロジェクトは大成功となりました。このことがきっかけで、クールジャパン機構は同社へ合計20億円の投融資を決めました。

 

海外進出で苦戦したのはアジアの麺料理との差別化

力の源HDは、海外進出する際に苦労している点を「アジア現地で親しまれている麺料理と比較されること」と述べています。例えば、ベトナムには米粉麺の「フォー」があるように、アジアで親しまれている多くの麺料理は、日本で売られているラーメンの半分以下の価格で売られています。他のアジアの麺料理と差別化を図るために、日本ならではのきめ細やかな接客を売りにしているそうです。

 

一風堂をスターバックスのような存在に

一風堂2

https://bizdrive.ntt-east.co.jp/articles/dr00044-013.html

 

力の源HD社長の清宮は、2011年に力の源カンパニーに入社し、2014年に力の源HDの社長に就任しました。清宮氏の最大のミッションは、一風堂をスターバックスのラーメン版にすることと話しています。今後、国内・海外展開を加速する方向で、2025年には国内300店舗、海外300店舗、合計600店舗を展開する企業を目指しています。

 

海外における日本のインスタントラーメンの需要動向

最後に。日本が生み出した「インスタントラーメン」についても触れたいと思います。

世界ラーメン協会の調査によると、2019年度、世界のインスタントラーメン消費量は1064億2000万食、前年比28億食の増加となっています。

インスタントラーメン市場

https://instantnoodles.org/jp/noodles/market.html

 

1位の中国は、断然トップで414億万食、2位インドネシアの125億万食、3位インド67億万食、4位が日本で56億万食、次の5位に来るのがベトナムで消費量は54億万食です。

前年比2億3000万と僅かに増加しており、人口減が起きている日本以外の上位3国における需要増加は確実なものとなっています。

インスタントラーメン世界総需要

https://instantnoodles.org/jp/noodles/report.html

 

第5位にランクインしているベトナムでは、エースコックが現地のカップラーメンをしのいで、トップシェアを誇っています。同社は、ベトナム語で「刷新」を意味する「ドイモイ政策」下での市場経済化の流れに乗り、1995年に他社に先駆けて進出しました。

現地の人々の嗜好に合わせて開発した「Hao Hao」は、同社のベトナム市場における主力ブランドで、今や現地で知らない人はいないと言われるほどです。現在はベトナムから輸出も行い、売上高は海外事業が日本国内を上回っています。

ベトナム即席めん

https://withnews.jp/article/f0161025000qq000000000000000W01j10901qq000014084A

エースコック

https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1801J_Y3A310C1000000/

 

「ハオハオ」のシリーズの中で、年間17億食くらい売れている最も人気の商品が、エビだしを使用した酸味のある「ハオハオ トムチュアカイ」です。日本の食品にピンク色のパッケージは使用されませんが、現地に好まれるように敢えてこの色を選び、現地の人がデザインしています。

 

最後に

日本のラーメンがこれほど世界で人気があるということを知っていただけましたでしょうか。

ユネスコの無形文化財に指定された伝統的な和食とともに、ラーメンもますます人気が高まり出店数も増えていくでしょう。国内では成熟したラーメン市場ですが、海外でのビジネスチャンスは今後十分期待できるのではないでしょうか。

 

<参考>

https://dailynewsonline.jp/article/928252/

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/c928ae49736af7f3/us-report-201812r2.pdf

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1903/08/news037.html

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1903/08/news037_5.html

https://food-stadium.com/feature/21235/

https://vac-jp.com/report/life-support/3893/

https://mainichi.asia/%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0%EF%BC%9A%E5%A4%A7%E6%AD%A6%E5%81%A5%E4%B8%80%E9%83%8E%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%80%80%E9%A3%BD%E5%92%8C/

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210125/mcb2101250614002-n1.htm

https://markezine.jp/article/detail/17345#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%BC%8F%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C,%E5%BA%97%E8%88%97%EF%BC%89%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

https://blog.btrax.com/jp/ramen-trend/

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