Nestle(ネスレ)は、2,000以上のブランドを世界188カ国で展開している世界最大の食品飲料企業です。
日本では、「ネスカフェ」「キットカット」「ミロ」などのブランドでお馴染みです。
本記事では「Nestleはどんな会社なの?」と思っている方に向けて、会社概要や経営状況、成長戦略を紹介します。
Nestle(ネスレ)とはどんな会社
出典:Nestle
Nestleはスイスに本社をおく、世界最大の食品飲料企業です。この章ではNestleの会社概要・経営理念・事業内容を紹介します。
会社概要
Nestleの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Nestle |
設立 | 1866年 |
本社 | スイス |
従業員数 | 270,000人 |
進出地域 | 188カ国 |
売上高 | 930億スイスフラン(2023年) |
ネスレは1866年に設立し、その翌年に創業者のアンリ・ネスレが新生児向けのベビーフードを開発します。画期的なベビーフードは大ヒットし、ヨーロッパで広く販売されるようになりました。
現在では、77カ国の340以上の拠点で製品を製造し、188カ国で販売しています。また、ベビーフードだけではなく、コーヒーやチョコレートなどさまざまな食品を取り扱う世界最大の食品飲料企業に成長しています。
経営理念
Nestleの経営理念は、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」です。アンリ・ネスレがベビーフードで人々の生活の質を改善したように、食を通じて人やペットの生活に大きな変化をもたらすことを目指しています。
また、Nestleは以下の4つの価値観を重要視しています。
- 自分自身に対する敬意
- 他者に対する敬意
- 多様性に対する敬意
- 未来に対する敬意
つまり、Nestleでは「敬意」が重要視され、ビジネスの進め方に大きな影響を与えているのです。
事業内容
Nestleは7つの事業を展開しており、主に8つのカテゴリーの製品製造・販売を行っています。各カテゴリーと主要ブランドは以下のとおりです。
カテゴリー | 主要ブランド |
コーヒー | ・ネスカフェ ・ネスプレッソ ・ネスカフェ ドルチェ グスト |
菓子 | ・キットカット |
調味料 | ・マギー |
コーヒークリーミング | ・ブライト |
大麦加工食品 | ・ミロ |
業務用製品 | ・ネスレプロフェショナル |
ヘルスケア | ・ネスレヘルスサイエンス |
ペットケア | ・ピュリナ ・モンプチ |
Nestleは、このようなブランドを2,000以上展開しており、世界各国でさまざまな食品を販売しています。
Nestleの経営状況
Nestleの経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
Nestleの2023年の売上高は前年比1.5%減の929億スイスフラン(約14.5兆円)でした。しかし、売上高が900億スイスフランを超え、営業利益も160億スイスフラン(約2.5兆円)を超えていることから高水準を維持しているといえます。※1スイスフラン=156円で換算
また、Nestleの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
北米は35%を占めているものの、そのほとんどがアメリカの売上です。2023年のアメリカの売上高は300億スイスフランでした。アメリカが最も市場の大きな国で、次いで中国の55億スイスフランです。
Nestleの事業別売上高の推移
Nestleの経営状況を事業別に考察します。まず、Nestleの事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
最も比率が高い事業はPowdered and Liquid Beveragesで、売上高は248億スイスフラン(約3.8兆円)でした。ここでは、7つの事業の売上高や営業利益の推移を紹介します。
Powdered and Liquid Beverages
Powdered and Liquid Beveragesは、ココアやコーヒー、麦芽飲料を販売している事業です。代表的なブランドはネスカフェやミロがあります。また、スターバックスのコーヒーブランドを手掛けているのも特徴です。
参考:Nestle「Publications」
全体の売上高の26.7%を占める事業で、上記のグラフからも売上高が増加傾向であるとわかります。
Water
Waterはミネラルウォーターなどの水を取り扱う事業です。代表的なブランドにヴィッテルやペリエがあります。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
Water事業は5年で売上高・営業利益が半減しており、苦戦している事業といえます。ただし、それでも2023年の営業利益は3.51億スイスフラン(約547億円)でした。
Milk products and Ice cream
Milk products and Ice creamは乳製品やアイスクリームを取り扱う事業です。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
Milk products and Ice cream事業は、売上高・営業利益が横ばいの状態が続いています。
Nutrition and Health Science
Nutrition and Health Scienceは、栄養学と健康科学に基づいた製品を提供している事業です。子どもの栄養不足を補う製品を開発し、栄養失調で苦しむ子どもの健康の改善にも取り組んでいます。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
2020年・2021年は売上高が落ち込みましたが、2022年・2023年はコロナウイルスが流行する前の水準に回復しています。
Prepared dishes and cooking aids
Prepared dishes and cooking aidsは、冷蔵食品・冷凍食品・ピザなどの食品を取り扱う事業です。代表的なブランドにインスタントスープ・ヌードルのマギーがあります。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
近年の営業利益は約21億スイスフラン(約3,276億円)で推移しています。2023年も同様に、売上高が前年よりも減少したものの、営業利益は例年の水準を達成しています。
Confectionery
Confectioneryは、スナック菓子やチョコレート製品を取り扱う製菓事業です。代表的なブランドにキットカットがあります。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
Nutrition and Health Scienceと同様に、2020年・2021年に売上が落ち込みましたが、2022年・2023年は売上高・営業利益ともに回復しています。
PetCare
PetCareは、Nestleのペットケア事業です。ペットの生活を変えるペット用の食品の開発・提供を目指しています。売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:Nestle「Publications」
PetCare事業は右肩上がりに売上高・営業利益が増加しています。ほかに急拡大を続ける事業がないことから、Nestleの成長を支えている事業といえるでしょう。
Nestleの成長戦略
NestleはM&Aの会社と呼ばれるほど、企業の買収に積極的です。M&Aを繰り返すことで、世界1位の食品飲料会社になったといっても過言ではありません。例えば、マギーやヴィッテル、キットカットなども買収により取得したブランドです。現在2,000を超えるブランドがあるのは、積極的な買収の成果ともいえます。
またNestleの成長戦略として特徴的なのは、不採算事業などの売却や撤退にも力を入れていることです。成長に必要な事業を買収し、状況が変わると売却することで、競争力や市場への影響力を高めているのです。
Nestleは「M&A」で世界1位の食品世界最大手へ
NestleはM&Aにより食品世界最大手へ成長した企業です。その特徴は買収だけではなく、売却も積極的に行っていることです。採算性や成長性を見極めて、売却や撤退を行うことで持続的な成長を達成しています。M&Aを考えている企業には、Nestleの経営戦略は参考となるでしょう。