タイ財閥のセントラルグループ(Central Group)とは?   

セントラルグループ(Central Group)は、タイ5大財閥の一つです。小売業に強みがあり、百貨店やショッピングモール、スーパーマーケットなどを展開しています。本記事ではビジネスパーソンに向けて、セントラルグループの概要や歴史、主要事業について解説します。 

セントラルグループとは 

出典:セントラルグループ 

セントラルグループはアジアやヨーロッパに、小売業や不動産、ホスピタリティを展開するコングロマリットです。小売・商業スペースの面積は700万平方メートルを超え、世界で10万人以上を雇用しています。セントラルグループの概要は以下のとおりです。 

​​財閥名​ Central Group 
本社 タイ 
設立 1947年 
グループ会社 50社以上 
進出地域 世界13カ国 
従業員 約10万人 
売上高 推定約80億ドル(2020年度) 

歴史 

セントラルグループの歴史は、1947年に創業者のティアン・チラティワット氏がバンコクで国内外の書籍や雑誌、雑貨を販売する事業を開始したことが始まりです。1956年になると、息子のサムリット・チラティワット氏が父親の雑貨事業を拡大し、最初のセントラルデパートを設立しました。 

1974年には、タイで初めての本格的なデパートをオープン。1983年には、デパート・小売店・ホテル・オフィスビルが入居するタイ初の複合施設をオープンしました。1995年には、タイで第2位の百貨店チェーンのロビンソン百貨店を買収。1996年には、後にタイ最大のスーパーマーケットチェーンとなる事業を立ち上げました。 

2011年にはイタリアの高級百貨店を買収し、初めてヨーロッパに進出。2020年にはスイスの高級百貨店チェーン「GLOBUS」を買収し、2023年には日本初の「センタラグランドホテル大阪」をオープンしました。 

このように、事業拡大や海外進出を積極的に続けた結果、タイ5大財閥の一つに数えられるまでに成長しています。 

経営理念 

セントラルグループが重視している価値観は、「I・CARE(私たちは気にかけています。)」です。この価値観は、次の5つの要素から成り立っています。 

革新:デジタル化を推進し、イノベーションを生み出す 

お客様:顧客の期待を超える優れたサービスを提供する 

連携:チームで協力し、一丸となり成功を目指す 

関係:思いやりを持ち、考えを共有し、互いに支え合う 

倫理:行動規範を遵守する 

セントラルグループではこの価値観を基に、人々が最高のパフォーマンスを発揮できるような職場環境を作ることを目指しています。 

参考:セントラルグループ「Engage with Central Group」 

セントラルグループの主要事業 

出典:セントラルグループ「Business Overview」 

セントラルグループは小売業を中核とするタイ財閥です。ここでは、具体的に5つの主要事業について解説します。 

デパート 

デパート事業はセントラルグループの中核事業の一つです。同グループはタイのデパート業界の先駆者で、現在ではアジアやヨーロッパで事業を展開しています。タイで展開しているデパートのブランドは、セントラルデパートとロビンソン百貨店の2つです。ヨーロッパでは次の主要都市で事業を展開しています。 

・イギリス 

・イタリア 

・ドイツ 

・スイス 

・デンマーク 

・オランダ 

・アイルランド 

また、セントラルグループは顧客に最高の購入体験を提供するために、オムニチャネルによるアプローチを重視しています。デパート事業はそのうちの一つのチャネルです。 

※オムニチャネルとは、複数の販売経路(チャネル)を連携し、どのチャネルからでも商品の購入ができることです。 

食品 

セントラルグループの食品事業は、幅広い顧客ニーズに対応するため、プレミアムなスーパーマーケットから日常向けの店舗まで多彩なブランドを展開しています。主なブランドは以下のとおりです。 

・Topsマーケット 

・Topsデイリー 

・Topsフードホール 

・GO! 

・GLOBUS 

同事業はこれらのブランドを通じて、世界中から厳選した食材を提供することで、タイの小売市場をリードしています。また、セントラルパークは2020年にタイのコンビニエンスストア「ファミリーマート」を買収し、フランチャイズ権が失効したことから2023年に自社ブランド「Topsデイリー」に変更しています。 

特産品・ブランド 

特産品・ブランド事業は、あらゆる面で生活の質を高めることを目標に、「マークス&スペンサー」「無印良品」「Watts(ワッツ)」など、様々なブランドを展開している事業です。この事業により、セントラルグループの小売店ではファッションやライフスタイル、化粧品や美容アイテム、スポーツ用品、ペット用品など、幅広い商品を取り揃えています。 

※セントラルグループと無印良品の関係は2006年にライセンス契約を結び、無印良品事業を開始したことに始まります。その後、2012年に同ブランドを展開する株式会社良品計画は、タイにおける無印良品事業をセントラルグループに譲渡しました。 

参考:株式会社良品計画「タイ王国における合弁事業開始に関するお知らせ」 

ホテル 

セントラルグループのホテル事業は、タイを中心に世界中で、高級ホテルからリーズナブルなホテルまで多様なブランドを展開しています。また、近年ではGO!ホテルを立ち上げた他、日本やオーストラリアへの進出を推進しています。 

レストラン 

セントラルグループのレストラン事業は、国内外の有名なブランドを複数展開している事業です。ブランド例は以下のとおりです。 

・ミスタードーナツ 

・KFC 

・吉野家 

・大戸屋 

・かつや 

・サラダファクトリー など 

セントラルグループと日本企業の提携事例 

セントラルグループは、複数の日本企業と提携して様々な取り組みを行っています。具体例として、昭和ホールディングス株式会社とJ.フロントリテイリング株式会社の事例を紹介します。 

昭和ホールディングス株式会社 

昭和ホールディングス株式会社は連結子会社の明日香食品株式会社を通じて、セントラルグループと提携し、日本産食品の販促イベント「WAGYU & MAGURO FESTIVAL 2021」を開催しました。 

このイベントは、農林水産省および日本貿易振興機構(JETRO)の支援を受け、2021年2月24日から3月2日までバンコク市内のセントラルグループ系列の2店舗で実施されました。 

このように、昭和ホールディングス株式会社はセントラルグループを通じて、タイ市場での日本産食品の普及と販路拡大に取り組んでいます。 

参考:明日香食品株式会社「明日香食品がタイにおいて『WAGYU & MAGURO FESTIVAL 2021』を主催致しました」 

J.フロントリテイリング株式会社 

J.フロントリテイリング株式会社の子会社の株式会社大丸松坂屋百貨店は、セントラルグループと提携し、2023年6月から大丸心斎橋店(大阪市中央区)とセントラルワールド(タイ・バンコク)を対象に、相互に送客を促すプログラムを実施しています。具体的には、両店舗のVIP顧客を対象に、割引クーポンやホテル宿泊特典を付与する取り組みです。 

さらに、2024年4月からは大丸札幌店、セントラルブーケットを対象店舗に拡大しました。このように相互に送客を促すことで、売上アップや事業拡大を目指しています。 

参考:J.フロント リテイリング株式会社「J.フロントとWealthPark が包括的業務提携」 

セントラルグループの成功要因は一族経営 

セントラルグループは、小売業を中心に事業を展開するタイ5大財閥の一つです。創設者である父と息子が全面的に事業運営に携わり、他の家族も支援することで事業を拡大してきました。その結果、経営陣は創業家出身者で構成されており、一族経営の成功モデルといえます。 

また、セントラルグループはタイ国内で強い影響力を持つため、タイへの進出を検討している経営者様は、同財閥の動向にも注目しましょう。 

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