
アプライド・マテリアルズは、アメリカに本社を置く世界最大の半導体製造装置・ディスプレイ製造装置メーカーです。世界24カ国に拠点があり、世界中のほぼ全ての半導体チップや先進ディスプレイの製造に貢献しています。本記事では、アプライド・マテリアルズの会社概要や経営状況を解説します。
アプライド・マテリアルズとはどんな会社

出典:アプライド・マテリアルズ
アプライド・マテリアルズは、半導体製造装置の分野でトップシェアを誇る企業です。その証拠に、deallabの「半導体製造装置業界の世界市場シェアの分析」において、世界シェア1位を獲得しました。この章では、同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
アプライド・マテリアルズの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Applied Materials, Inc. |
本社 | アメリカ |
設立 | 1967年 |
進出地域 | 世界24カ国(207都市) |
従業員 | 35,700人以上 (2024年10月27日時点) |
特許取得数 | 22,000件以上 |
売上高 | 272億ドル(2024年度) |
歴史
アプライド・マテリアルズの歴史は、1967年にマイケル・A・マクニーリー氏ら5人によって設立されたのが始まりです。半導体製造装置の開発・販売を中核に成長し、1984年には日本に開発拠点、中国にサービスセンターを開設しました。
1996年には、イスラエルの検査システムや計測システムを手掛ける2社を買収。2000年には半導体ウエーハのレーザー洗浄技術を持つイスラエルの企業を買収しました。
2009年には、アメリカの電解メッキ装置とウエーハ表面処理装置の大手サプライヤーであるセミツール社を買収。さらに、2011年にはアメリカのイオン注入装置の大手サプライヤーを買収しました。
このように関連企業の買収を続けた結果、2018年にはフォーチュン誌の「世界で最も尊敬される企業」に選出され、現在では半導体製造装置業界のリーダーに成長しています。
経営理念
アプライド・マテリアルズは経営理念として、次の4つの価値観を重要視しています。
- 最も価値あるパートナーであること
顧客の価値の高い問題をより迅速かつ適切に幅広く解決する
- 成功するチームであること
従業員が最善を尽くせる環境で協力して素晴らしい結果を出す
- 責任と誠実性
相互の信頼と敬意を持って、業界とコミュニティに積極的に貢献する
- 世界最高のパフォーマンス
競争上の優位性と価値を生み出し、成長を促進するような優れた結果をもたらす
引用:アプライド・マテリアルズ「ビジネス行動規範」
アプライド・マテリアルズの経営状況
アプライド・マテリアルズの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
2024年度の売上高は272億ドル(4兆800億円)で、2023年度の265億ドル(3兆9,750億円)と比較して、7億ドル(1,050億円)増加しました。また、2024年度の営業利益は79億ドル(1兆1,850億円)で、2023年度の77億ドル(1兆1,550億円)と比較して、2億ドル(300億円)増加しました。※1ドル=150円換算
同社は5年連続で成長を続け、2024年度は売上高と営業利益がともに過去最高を記録しました。好調の要因として、半導体システム及びサービスの堅調な需要が挙げられます。特に、AI・IoT・5G・電気自動車・拡張現実(AR)・仮想現実(VR)といったメガトレンドの拡大が、同社の成長を支えています。
なお、2021年度に大幅に成長したのは、コロナウイルスの流行によりデジタル変革が加速し、世界的に半導体需要が急増したためです。
アプライド・マテリアルズの地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
中国・韓国・台湾で全体の売上高の69%を占め、アジア太平洋地域で全体の81%を占めています。このことから、同社の主要地域はアジア太平洋地域と言えます。
アプライド・マテリアルズの事業別売上高の推移
アプライド・マテリアルズの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
グラフにも示されているように、同社の中核事業は半導体システム事業です。ここでは、さらに各事業の内容に加えて、売上高と営業利益の推移を紹介します。
半導体システム事業
半導体システム事業は、半導体チップの製造に使用される幅広い装置の設計・開発・製造・販売を行っている事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
2024年度の売上高は199億ドル(2兆9,850億円)で、2023年度の197億ドル(2兆9,500億円)と比較して、2億ドル(300億円)増加しました。また、2024年度の営業利益は70億ドル(1兆500億円)で、2023年度の69億ドル(1兆350億円)と比較して、1億ドル(150億円)増加しました。
売上高と営業利益が増加した要因は、企業が新たな生産能力や新技術を獲得するために、半導体製造装置の需要が拡大していることが挙げられます。
アプライド・グローバル・サービス事業
アプライド・グローバル・サービス事業は、世界中の製造工場にスペアパーツや工場自動化ソフトウェアを提供している事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
2024年度の売上高は62億ドル(9,300億円)で、2023年度の57億ドル(8,550億円)と比較して、5億ドル(750億円)増加しました。また、2024年度の営業利益は18億ドル(2,700億円)で、2023年度の15億ドル(2,250億円)と比較して、3億ドル(450億円)増加しました。
売上高と営業利益が増加した要因は、長期サービス契約及び予備品の販売の増加が挙げられます。
ディスプレイ事業
ディスプレイ事業は、主に液晶ディスプレイやテレビ、モニター、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなどの消費者向け機器のディスプレイを製造するための装置を販売している事業です。同事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:アプライド・マテリアルズ「ANNUAL REPORT & PROXY」
2024年度の売上高は8億9,000万ドル(1,335億円)で、2023年度の8億7,000万ドル(1,305億円)と比較して、2,000万ドル(30億円)増加しました。一方、2024年度の営業利益は5,000万ドル(75億円)で、2023年度の1億1,000万ドル(165億円)と比較して、6,000万ドル(90億円)減少しました。
売上高が増加した要因はノートパソコンやモニター、タブレットなどのディスプレイ製造設備への投資増加による需要の拡大が挙げられます。一方、営業利益が減少した要因は、製品構成の不利な変化が挙げられます。
アプライド・マテリアルズは積極的な設備投資で成長
アプライド・マテリアルズは、世界最大の半導体製造装置・ディスプレイ製造装置メーカーです。特に、半導体製造装置を担う「半導体システム事業」が同社の中核を成しています。
同社の経営戦略の大きな特徴は、積極的な設備投資を続けている点です。例えば、2023年には数十億ドル規模の投資を行い、シリコンバレーに研究開発拠点を設立することを発表しました。このような継続的な設備投資の結果、現在では世界24カ国に拠点を持つまでに事業を拡大しています。事業拡大や海外進出を検討している経営者様は、同社の事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考:アプライド・マテリアルズ「アプライド マテリアルズ シリコンバレーに数十億ドル規模の R&D プラットフォームを新設、半導体イノベーションを加速」