COP26が閉幕。温室効果ガス排出低減達成目標と電気自動車の関わりとは

現在、地球温暖化、環境汚染、異常気象、さまざまな脅威が平和に過ごしている人々に襲いかかっています。それを人々が生活する中で不自由なく、経済にもなるべく影響が出ないように発展させたうえで、できる限り防ごうという動きが世界的に高まっています。特に二酸化炭素低減、石油を使用した経済からの脱却が叫ばれています。それぞれの国が環境目標や、化石燃料使用を控えるという目標を設定していましたが、足並みをそろえるための規定を決める会議を行うようになりました。その規定の更新を行なうために、最近では「COP26」が開催されました。 

化石燃料を使用し、二酸化炭素を排出する社会からの脱却と、そのための注目の代替技術である電気自動車をめぐる未来は一体どのようなものになるのでしょうか?今回は最近開催されたCOP26と環境問題を踏まえ、電気自動車の未来について記述していきます。

COP26とは

まず、最近ニュースなどの話題に上っていた「COP26」についてです。これは「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議」というもので、今年は、イギリス、スコットランドの都市グラスゴーにて開催され、「グラスゴー気候協定」が採択されました。COPの部分は「Conference Of the Parties」(締約国会議)の頭文字をとったものです。そして「26」という数字は、「気候変動に関する国際連合枠組条約」の「締約国会議」が26回目、という意味です。ちなみに、日本で開催され採択された「京都議定書」もこの枠組みの一つで、第3回目でしたので「COP3」とも呼ばれています。

COPにおいて低減を目指す温室効果ガス

この協定の内容は主に、温室効果ガスの低減を目標にしているのですが、詳細は下記のような内容になります。

温室効果ガスの種類発生原因
二酸化炭素(CO2)生物の呼吸や、化石燃料の燃焼により生じる
メタン(CH4)火山ガスからの排出や、自然のものが発酵することでも発生する。天然ガス利用時の排出などでも発生。特に、世界に多く存在する家畜牛のげっぷが、メタン排出量の多くを占めている。
亜酸化窒素(N2O)内燃機関のエンジン用燃料の一部や、ロケットエンジンの燃料の一部として使用されている。 「一酸化窒素」とも呼ばれている。
ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)冷却媒体であった「フロン」がオゾンホール形成の原因とされたため、世界中で代替用冷却媒体として使用されているのがこの物質。HFCs自体はオゾン層を破壊することはないが、大気の温室効果が高い物質。 
パーフルオロカーボン類(PFCs)こちらもフロンガスの代替品として使用され始めたが、HFCsと同じく、温室効果が高い物質。他に半導体を洗浄する役割としても使用されている。
六フッ化硫黄(SF6)電気への絶縁性能が高いため、部品絶縁体として使用され、機械の分解や廃棄の際に大気へと排出される。

上記の表の温室効果物質が、この会議で低減させるべき物質と規定されており、近年では特に二酸化炭素とメタンの低減が主要なテーマになっています。そして、この会議では、クライメート・ジャスティス(気候の公平性)のもと、先進国が排出してきた地球温暖化物質を、先進国が責任をもって低減して行くための規定を決定しています。 

200か国ほどの参加各国は、この会議で採択された提言に署名することにより、目標に向けて一丸となり、決められた目標値へ温室効果ガスを低減させる必要があります。

COP26で何が決められたのか

温室効果ガスイメージ

先ほどの表の中の物質に対して、それぞれの低減目標を設定し、温室効果ガスを低減することによって、気温上昇を今世紀半ばまでに1.5度までに抑える、というのがCOP26全体の目標になっています。そのために行わなければならないことは、石炭使用の停止、森林破壊の抑制、迅速な電気自動車の利用と切り替え、再生可能エネルギーの利用増加と投資などが挙げられます。 

もしCOP26の目標が達成されたとしても、多くのシンクタンクなどの予想では2.4度ほどの気温上昇が起こると予想されています。気温上昇がもし1度異なるだけでも、氷河が溶け出してしまうことや、珊瑚の死滅、大幅な海面上昇、災害などが起こり、世界中の何億の人々に影響が出ると予想されています。そして目標を達成するためには、2030年までに温室効果ガスの世界での排出量を40%低減、それを2050年までにはゼロ、にしなくてはならないという大変ハードルが高いものとなっています。 

その中で、具体的にどの分野から削減を目指すかというと、温室効果ガスを発生させる大きな要因の一つが自動車による排気ガスのため、それを低減しようと各国や地域で、内燃機関を使用する自動車から、電気自動車を普及させるという制度が発表されています。 

COP26参加国と関連企業の反応

COP26 においてもその採択は行われましたが、このCOP26の参加国の中でも国によって対応が異なってきます。2030年までに締結地域では、内燃機関の乗用車を規制するという内容が締結に盛り込まれていたのですが、参加国の多くの自動車製造メーカーを持つ国々は反対を表明しました。

24か国が参加した「全世界で2040年までに、主要市場では2035年までに、販売される新車を全て電気自動車など ”排出ゼロ車” にすることを目指すとの宣言」に北欧諸国、スウェーデン、イギリスなどの国々、GM、フォード、ボルボ、BYD、ジャガーランドローバー、メルセデスベンツなどの企業が署名しました。その一方、主要な自動車生産国である日本やアメリカ、ドイツ、中国、韓国とフォルクスワーゲン、トヨタ、プジョー、ホンダ、日産、現代などの企業は署名をしませんでした。 

自動車メーカー側からすると、現在までの内燃機関を使用した複雑な自動車技術により発展してきたところが電気自動車に置き換わることで、新興メーカーなどにも市場を奪われかねない中での莫大な投資が必要、という懸念もあるでしょう。

燃料自動車を新技術で置き換えられるのか

自動車メーカー側の利益だけではなく、燃料自動車を”排出ゼロ車”に置き換えていくには、技術側面・政策側面での問題も多くあります。それぞれの新技術に関しての問題をピックアップしてみましょう。 

 

電気自動車を通じた環境対策の課題

電気自動車

現在、「ゼロエミッション車」というのを耳にする機会があると思います。ゼロエミッション車とは、エミッションは煙や排気ガスを表し、エミッションがゼロ、という意味で、車自体からは有害な物質を発生しない自動車のことを表現しており、電気自動車はその代表的な存在になります。日本でもすでに「日産・リーフ」が10年前から販売されており、信頼性も高い電気自動車です。

しかしながら、補助金を合わせたとしても高価格な設定や、航続距離の短さ、充電の長さ、極寒地での使用にはあまり向いていないなど、すぐに通常のガソリンエンジンの自動車に取って代わるには厳しい状況です。特に中国や北米など、雪が多く、冬場に氷点下が続く寒冷地での使用や、寒暖差が非常にある地域、熱帯、砂漠などの高温根地域、広大な土地を長距離移動する地域ではより電気自動車は不利な状態となります。バッテリー開発において、なんらかのブレークスルーがない限り、現状の性能のままとなり、価格が下がったとしても世界中に普及するとなると難しい可能性があります。

さらに、おおもとの電気の発電はというと、いまだに石炭や重油、ガスなどの化石燃料を使用した発電が多くを占めている状況になるので、発電方法も踏まえて変化しなければ最終的な環境対策とは言えなくなるという問題も生じています。

水素自動車は供給スタンドの不足がネック

燃料電池車 FCV

水素を利用する自動車は2種類存在します。 まず、「水素エンジン」。これは水素をガソリンに置き換え、水素を燃料として燃焼させ、エンジンを使用し駆動するもののことを言います。水素エンジンは、排気がクリーンで大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)の排出量もごくわずかで、水素燃料からは二酸化炭素を発生させません。 

そして「トヨタ・MIRAI」のような、水素を燃料電池として使用し、電気を発生させ、モーターを駆動するタイプがあります。FCV(Fuel Cell Vehicle 燃料電池車)とも呼ばれています。これは理科の科学実験で行った、水の電気分解の逆の発想で、水素と酸素を化学反応させ、電気を起こすというシステムです。 

水素エンジンの場合、既存のエンジンを加工して使用できる利点はありますが、燃料効率が悪く、ガソリンエンジンより非力で、大きな水素タンクを搭載する必要があり、車重もかさんでしまいます。FCVの場合はコストがかかり、トヨタ・MIRAIの最低価格も税込み710万円からと、通常の自動車価格の2倍程の価格になってしまいます。 

そして最大の懸念としては、水素を供給するスタンドが少ないことです。水素スタンドを1か所を建設するにも5-6億円と通常のガソリンスタンドと比較しても、莫大な投資が必要なことと、普及の見込みがあるかどうかわからないために、それに投資すべきかどうか、投資者も二の足を踏んでいるような状態で、普及が遅々として進んでいません。 

 

ハイブリッド車に関わる課題

現在のインフラを使用したまま、快適性も損なわない自動車といえばハイブリッド車。価格は通常のガソリンエンジンよりも高価格ですが、長く乗れば乗るほど、燃料費でペイできることや、通常エンジンと比較した販売時の価格差も縮まってきています。昨今では各社がハイブリッド車を販売し始め、2つのモーターを使用したトヨタのシリーズ・パラレル式ハイブリッド、「トヨタ・ハイブリッド・システム」(THS)やエンジンが発電をし、モーターで駆動する日産のシリーズ式ハイブリッド、「e-Power」など数多くの種類のハイブリッドエンジンが開発、発売されており、年々進化をしています。

そのハイブリッド車の販売構成比も年々増加しており、EVを含めた割合は、新車販売台数のうちの約4割にも上るといわれています。燃費性能や環境への関心、今まで通りに使用できる点などから、消費者側の購入意欲の向上が見込まれます。そして更なるハイブリッド性能の進化や、車種の増加に伴い、これからも比率は増加していくと予想されています。しかしながら、世界が完全な電気自動車に代えなくてはいけないという動きになった場合、電気を使用するハイブリッドであったとしても販売を継続するのは難しくなります。 

次世代の環境に配慮した自動車にもさまざまなハードルがあり、現時点では水素や完全な電気自動車の普及は厳しい道のりであることは確かです。日本としては得意のハイブリッド技術を進化させ、より普及させることで、今までのインフラを使用しながら無理なく環境対策をするという考えがあるとも予想されます。バッテリーや水素供給、コストの問題が解決しさえすれば、普及の足掛かりになることは間違いありません。 

 

まとめ

温室効果ガスの低減は、経済発展とのつながりも多く、上手にコントロールしていく必要性があります。とくに排出量の多い自動車には重圧がかかってきます。 自動車を電気にするというのは、温室効果ガス低減に大きな進展を見せるでしょう。しかしながらCOP26での採択のように、今までの電気自動車一辺倒での改革から、より柔軟な解決法も重要です。インフラや価格、生活状況など人々の生活を考えると、ガソリンエンジンのみを廃止して、ハイブリッドか電気自動車を選択できるようにする必要性もあるでしょう。 

ハイブリッド車も地域や使用方法によっては販売が可能になることや、ハイブリッドエンジン自体も、より効率がよく、環境破壊の原因となる排気ガスの少ないエンジンの自動車に代えていくことで、今までのインフラを維持しつつ、電気自動車がさらにガソリンエンジン並みの使い勝手になるように開発されるまで使用する、という考えも可能でしょう。 

大変困難な取り組みですが、さらに化石燃料での電気の発電や、さまざまな観点からバランスよく温室効果ガスの低減を目指し、異常気象などの災害のない平和でクリーンな世界になってほしいですよね。 

 

^COP26 
https://ukcop26.org/uk-presidency/what-is-a-cop/

^COP26  
https://www.iges.or.jp/jp/projects/cop26-basic-knowledge

^COP26今後 
https://www.google.com/amp/s/www.bbc.com/japanese/59272018.amp

^水素自動車 
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00051/

^FCV 
http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/beginner/about_fcv/index.html 

^ハイブリッド構成比 
http://www.jada.or.jp/data/month/m-fuel-hanbai/ 

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