アリババと2021年の独身の日。共同富裕政策とはどう関連しているのか

中国では11月11日は独身の日と呼ばれ、大規模なインターネット通販セールが開催されています。アリババのようなネット通販の大手企業を中心に、毎年この日に合わせて一大商戦が展開されています。これまで、商品が次から次へと売れていく様子が大々的に報じられていましたが、今年はいつもの派手さが影を潜めました。 なぜ今年は派手さを欠いたのでしょうか?それには共同富裕という方針に基づいた、中国政府による締め付けが大きく関係しているようです。 

本記事では、異例ずくめとなった今年の独身の日について、特にアリババに着目しながら解説します。また中国経済と独身の日、そして独身の日に対する中国政府の関わり方についてもご紹介します。

 

独身の日とは?

アリババ独身の日2020年の様子

出展:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/201112/mcb2011121416030-n1.htm

中国では毎年11月11日を独身の日と呼び、ネット通販各社が集って年間最大のセールが実施されます。中国国内の企業だけにとどまらず、日本からも積極的に企業が参戦し、多くの日本製品も取引されています。 

中国では「1」は独身を意味することから、「1」が4つ並ぶ11月11日を独身の日と呼ぶようになりました。独身の日のイベントは、南京大学の寮に住んでいた学生たちが1993年に始めたことがきっかけで、独身者が参加するパーティー、恋人を探す催しが行われたりしていました。本来この独身の日は、独身の人が自分のために何かプレゼントを買う日という位置付けで始まったのですが、現在は多くの中国国民がこの日に買い物をするようになり、最近では独身の日に合わせて贈り物をする習慣も次第に定着してきました。 

 

独身の日市場を急拡大させたアリババ

ここに目をつけたのが、中国EC最大手のアリババだったのです。独身の日に合わせたセールは中国全土で2020年大きな注目を集めていき、2009年は0.52億元(約8億8,000万円)だった売上高は、2010年には9.36億元(約159億2,000万円)と急増しました。こうしたアリババの状況を見て、中国のEC企業の競合企業も独身の日のセールを独自に開催し、「京東集団(JDドットコム)」も2020年は過去最高の取引額を記録しています。 

例年、独身の日には、アリババグループの本社に多くのメディアが招かれ大規模なイベントが催されます。午前0時の開始時間に合わせてカウントダウンが開始し、取引がスタートすると同時にリアルタイムの売上高がカウントアップされていくような盛大なイベントになっています。

 

アリババの独身の日の経済効果

アリババの独身の日のセールにおける売上高の推移

出典:https://zuuonline.com/channels/toyoshoken/232916

2010年と2020年のアリババの売上高を比べてみると、実に売上高は約530倍になっています。セール期間中のピーク時の注文処理件数は1秒間で1,000件程度だったのが、2020年はなんと1秒間で58万3,000件だったといいます。これは、10年間で583倍になったという計算になります。最近は伸びが鈍化しているようですが、それでも右肩上がりであることに変わりはないようです。 

 

ライブコマースが活況に

また、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、最近ではライブ動画を活用して商品を売る「ライブコマース」も流行り始めています。来店しなければ満たされなかった消費者のニーズにライブ配信で応えているところがポイントで、例えば衣類であれば、ライブ配信者がさまざまな服とコーディネートしたり、生地の質感などを実況したりといった具合です。

Taobaoライブの様子

出典: https://thebridge.jp/2019/11/livestreams-on-taobao-live-earn-rmb-20-billion-in-sales-on-singles-day

 

タオバオ マーケットプレイス

https://www.alibaba.co.jp/corp/group/

 

2003年にローンチされたタオバオ・マーケットプレイスは、ビッグデータ分析によって個別最適化されたショッピング体験を、消費者に提供しています。関連性の高いコンテンツや出店者からのリアルタイムの更新を通して、消費者は製品や新しいトレンドについて学べます。また、お気に入りの出店者、消費者同士、KOLと交流することも可能です。 

アリババグループ傘下ライブコマース・サービスを展開する「タオバオライブ(淘宝直播)」は2021年4月28日、インフルエンサー(KOL)のさらなる成功を支援することを発表しています。また、2,000のライブ配信チャンネルと200のパートナーそれぞれの年間売上高が、日本円にして約1.68億円になるよう支援するとの目標を明示しました。オンラインとオフラインのリソース、オフラインライブ配信に引き続き投資していることがうかがえます。

>>ライブコマースについては海外進出コラムのこちらの記事でも詳しく紹介しています。

 

アリババグループの事業領域

アリババとは、中国の電子商取引(EC)の最大手企業であり、買収を重ねることで現在は巨大グループ化しています。 

 

アリババグループの創業期

1999年の創業以来、「Alibaba.com」と呼ばれるBtoBのECサイトから事業を開始しました。「Alibaba.com」のサービス開始以降も、BtoCのECサイトである「Tmall」や越境ECサイト「Tmall Global」、CtoCのECサイト「taobao market place」のように、BtoBだけにとどまらず、これまでにも様々なECサイトを立ち上げてきました。さらにはEC領域だけでなく、キャッシュレス決済サービスである「Alipay」、旅行サービスプラットフォーム「Fliggy」など、あらゆる分野でサービスを展開しています。 

 

企業買収による積極的投資拡大

アリババは自ら事業を立ち上げ、サービスを発展させるだけにとどまらず、様々な企業を買収しながらビジネス領域を積極的に拡大しています。例えば中国版Youtube「优酷」、中国版Twitter「微博」などが代表例となりますが、創業20年余りで急成長を成し遂げ、2020年8月現在の時価総額で世界第7位と世界的に見ても売上や規模はトップクラスです。 

しかし同年10月、創業者である馬雲は中国の金融システムをあからさまに批判するコメントを発表し、その後1年で時価総額が大幅に減少しました。香港市場のアリババ株においても2021年10月5日時点で最安値を記録しました。最近では株価の回復傾向が見られるものの、2020年のピーク時と比較して43%も低下しています。

 

2021年の独身の日。例年との違いとは?

毎年独身の日にはアリババグループ本社で活気あふれるイベントが開催されていますが、今年は様子がガラリと変わりました。例年通りの派手なイベントが実施されなくなりましたが、それには以下の理由が考えられています。 

①中国国内での新型コロナウイルスの感染拡大 

多くのメディアを会場に集めることは、感染症対策の観点から問題があるということです。しかし、昨年(2020年)もコロナ禍であるにも関わらず、例年通り多数の記者を集めて開催しています。 

②環境への配慮 

このような大きな会場で派手にプロモーションしなくても良いのでは、という考えです。今では場所を問わずオンラインを活用して情報収集できる時代であり、大々的にイベントを実施する必要性が指摘されました。 

③共同富裕

近年、中国は急成長を遂げており、今では米国に次ぐ世界2位の経済大国となりました。一方で、急激な経済成長の副作用として生じたのが貧富の格差拡大です。そこで習近平主席が掲げたのが、「共同富裕」というスローガンです。 

このスローガンの下、アリババグループも「環境」と「公益性」という言葉を打ち出しており、例年とは違ったコンセプトを持った独身の日となりました。派手なイベントはなくなったとはいえ、アリババグループ含め多額の利益を得ている企業も多くありました。そこで、そのような企業に対しては自発的な寄付を呼びかけており、中には商品を購入する際、「この商品を購入すると購入額の何%は寄付されます。」というように宣伝している企業も多数見られました。

 

習近平主席が掲げた「共同富裕」

共同富裕とは

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211109/k10013338551000.html

 

ここでは先ほど触れた③「共同富裕」のスローガンがなぜ打ち出されたかの経緯について見てみます。 

共同富裕とは、格差を是正しようという方針のことです。特に、大手IT企業と農村地域の間における貧富の格差が問題となっており、中国では富裕層上位1%が全資産の30.6%も保有しているとも言われています。習政権も共同富裕を打ち出す考えをアピールすることで、国民の不満を和らげようという姿勢を示していますが、中国企業においても相次いで共同富裕の方針を後押しする動きが見られます。その代表例が、アリババグループによる資金拠出です。アリババグループは、共同富裕を体現するモデル地区の建設に対して、日本円で約1兆7,000億円を支援すると表明しています。他のIT大手もこぞって、高額の資金を低所得者層や農村部に拠出するとしています。 

このような動きの背景にあるのが、中国政府からのIT企業に対する規制強化です。2021年4月、アリババグループは独占禁止法違反で約3,000億円の罰金を課されました。中国共産党や国有企業にとっては、アリババグループやテンセントのような巨大企業は脅威であるとの見方があります。逆に政府からの圧力が厳しくなっていくことに脅威を感じている大手IT企業は、さらなる締め付けを回避するために、政府の共同富裕の方針に従うべきだと判断した可能性が指摘されています。 

習主席は今後も、アリババグループなどの大手IT企業への規制を強化する方針を示していますが、あまりに締め付けが厳しくなると企業の成長が鈍化し、中国経済全体の成長にも影響する恐れが懸念されています。 

 

中国で進む高齢化と「独身の日市場」の関係とは

パフォーマンスの観点から、今年の独身の日は異例であったとご紹介しましたが、近年は売れ筋商品にも変化が見られます。変化の原因は急速に進む高齢化、そしてキーワードは「銀髪経済」です。 

中国では60歳以上の人口が全体の25%程度を占め、高齢化傾向は続くと言われています。そこで、血圧計や大人用おむつなどの高齢者をターゲットにした商品の宣伝が目立ち、いわゆる銀髪経済が活性化しています。大人用おむつの販売に注力するユニ・チャームは、セール開始からあっという間に数千万円の売上額を記録しました。 

高齢者用商品だけではありません。アリババは、文字を大きくして見やすくするなど、高齢者向けの通販サイトを導入しました。また地元政府が主導となり、インターネットでの買物方法を学ぶ講習会を開催するといったように、政府も高齢者による消費を加速させるための取り組みを実施しました。 

商品の観点から独身の日を見ても、中国が高齢化市場を狙って市場拡大しようという動きが明らかとなっています。

 

さいごに

今年の独身の日はパフォーマンス、市場という2つの視点から例年とは違ったものとなりました。特にアリババグループのような大手IT企業にとってみれば、中国政府の打ち出した共同富裕の観点からも、変化が大きかったと言えるでしょう。 

独身の日に対する中国政府の関わり方、さらには市場の変化が来年以降の独身の日にどう影響するのか、目が離せません。 

 

https://enjoy-japan.jp/ 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM11EGI0R11C21A1000000/ 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM09DON0Z01C21A1000000/?unlock=1 

https://www.asahi.com/articles/ASPCC63PWPCCULFA00L.html 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211111/k10013343491000.html 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211108/k10013333991000.html 

https://www.news24.jp/articles/2021/11/11/10972476.html 

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000234839.html 

https://zuuonline.com/channels/toyoshoken/232916 

 

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