コロナ禍で躍進するライブコマース市場。消費者の購買をどう変えていくのか

近年躍進が目覚ましい、新しい販売サービス形態「ライブコマース」をご存じでしょうか?ライブコマースは世界の販売形態を変化させる、とまで言われており、この新型コロナウイルスが蔓延する状況下で在宅時間が長くなった今、大変注目されています。本記事ではそんなライブコマースについて詳しくご紹介します。

ライブコマースとは

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ライブコマースという言葉は、あまりなじみがないかもしれません。コマースの意味を辞書で引くと、「商業」と言う意味になり、インターネットショッピングを表す電子商取引の「eコマース」などで使用されています。それに「ライブ」がつくライブコマースは、文字通り「生」で(目の前で同時に)、「商業」(ネットショッピング)が行えるサービスのことです。売り手側が実際に販売したい商品をインターネット経由で生配信し、視聴者がそのライブ中に質問やコメントなどを加えることができます。

コメントが書き込めるライブといえば、日本でもかなり前からあります。例えば、 比較的古くからあるのが「ニコニコ生放送」。その後、SNSと連動するサービスが開始され、その代表的なものに Twitterと連動して使用できる「ツイキャス」があります。最近ではそして最近ではInstagram内でも「インスタライブ」が使用できます。

さらには動画配信サイトの「YouTube」や、若者の間で流行している 「TikTok」などでも、ライブ放送中に視聴者がコメント可能なサービスがあります。

以前は、ライブ配信サービスは個人に向けて、またはファンに向けての即時情報発信や、コミュニケーション 手段としての使用が主でした。それが商品の紹介、実演や販売するためのツールとして使用可能になったものが、この「ライブコマース」です。ライブでの商品紹介の臨場感や、商品のディテールのわかりやすさ、自分の疑問をコメントするとすぐに解決されると言う等の点で大変優れたサービスなのです。実際に映像や音声を見て参加して体験ができ、かつ自宅で手軽に行えるという点で、通常より購買率が高いといわれ、世界でも注目されてきています。

世界各国で人気のあるライブコマースプラットフォームは?

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世界のライブコマース市場は既に日本の何倍もの大きさの市場が存在し、そして拡大し続け、特に中国、韓国、東南アジア、そして北米での拡大が顕著に現れているといいます。

まずは、身近な国内の状況からみていきましょう。

日本のライブコマース事情

日本では以前、もとは芸能人や有名人がライブ配信をし、その配信に課金をする形態の先駆けとなったDeNA社提供のライブストリーミングサービス「Showroom」があります。そのほかにも「C CHANNEL」や「TIG commerce」といったプラットフォームがありますが、現在それほど多くの種類はありません。ネット販売で人気の高い「楽天」が提供していた「Rakuten LIVE」も2021年の4月にサービスを終了し、「メルカリ」や 「BASE」なども次々とサービスを終了してしまいました。

現在は、セレクトショップで人気の高い、SHIPSやBEAMS、「伊勢丹三井」などが個別にライブコマースサービスを行っているような状況。日本発のサービスとライブコマースの定着はまだまだこれからというところです 。普及は遅れているものの、2024年までには10兆円規模に成長されるという試算もあります。

ライブコマース大国中国の市場は

中国

中国は世界有数の商業国であり、デジタル化、IT化、そして効率化をさらに進めています。中国のライブコマース市場は世界で最も発展しており、2020年には15兆円規模に達し、昨年比でも2倍以上の成長率となっています。

最大手のタオバオ(淘宝直播/Taobao Live)

中国では複数、ライブコマースのプラットフォームがあり、まさに群雄割拠といった状態です 。中でもオンラインショップでのシェアが7~8割 といわれているタオバオ(淘宝网/Taobao)は、中国の巨大IT企業アリババ(阿里巴巴/Alibaba)によって設立されたプラットフォームです。タオバオ自体はもともとオンライン販売を行うサイトで、中国版のアマゾンのような存在です 。その中でライブコマースを提供しているのがタオバオライブ(淘宝直播/Taobao Live)です。

2020年10月から2021年9月までの流通取引額は、3500億元(約5兆4700億円)にものぼり、前年比は40パーセント弱の増加となっています。

ドウイン(抖音/Douyin)

次に有名なのが、ドウイン(抖音/Douyin)。これは日本でも有名な「TikTok」の中国バージョン。TikTokのシンボルマークは黒い背景に白抜きのブルーとピンクの「d」のマークですよね。これは中国でのサービス名「Douyin」のDからとられています。

このサービスでは、個人でショートムービーが投稿可能で、内容もダンスや動物、面白い出来事、ニュース、そしてライフハックなどが自由にそして手軽にアップできるのが特徴です。この中で、有名人や販売会社がアカウントを持ち、ライブ配信を行い視聴者がコメント できるサービスがあり、商品紹介をしてライブコマースとして活用することが可能です。有名人やTikTok内で有名になったインフルエンサーなども多く、ライブコマースの利用も大幅に増加している状況です。

クアイショウ(快手/Kuaishou)

そして日本ではあまり聞き慣れない会社名である、クアイショウ(快手/Kuaishou)。この会社でもショートムービーが配信できるTikTokのようなサービスを提供しています。TikTokと同様に海外では異なる名称を使用しており、「Snack Video」という名前で提供されています。

サービス開始時期はドウインの2016年より5年も早い2011年ですが、後発のドウインに後塵を拝している状態です。利用者数はクアイショウが約2億8千万人、ドウインは約4億3千万人と大差をつけられています。そして利用者もどちらかというと個人利用の投稿が多いため、ライブコマースとしての利用の割合はかなり低いと考えられます。しかしながら、いわゆる「投げ銭」というインフルエンサーに直接ライブ中にお金を提供するサービスが存在し、その売上金額が割合として高いため、また異なった利用方法として注目されています。

底知れぬポテンシャルをもつ中国経済、そして新型コロナウイルス蔓延下でも低下しないGDP、そして中国の得意分野であるIT技術と、中国はこれからも爆発的に市場が拡大することは間違いないとされています。そしてさまざまな新しいプラットフォームも展開され、TikTokのように世界に普及し、世界のライブコマース市場活性化を後押しする可能性も考えられます。

早期からサービス浸透していた韓国

韓国

韓国でもライブコマースは盛んに行われており、中国に続いて早い段階からサービスが浸透してきました。市場も2020年に2700億円の規模になる といわれています。

もともと電化製品の 製造販売会社として有名なLGグループの一員であった「LF Corp」はファッションメーカーで、その製品の販売のためにライブコマースを2015年に開始しました。それ以来売上高は年間30パーセントを超える増加率で注目を集めています。

さらにチャットツールとして日本でも有名なKakaoの親会社である「Naver」も、「Naver Shopping」内でライブコマースを開始すると発表しています。消費拡大に伴い市場は拡大するとみられます。

アメリカは中国に次ぐ市場規模

アメリカでは2019年、eコマースの売上高は約6000億ドルほどです。中国に次ぐ世界2位の市場規模を持ちます。

アメリカの4大IT企業「GAFA」(Google、Apple、Facebook、Amazon)のうちの3社は、ライブコマースサービスを開始しました。まずGoogleでは「Shoploop」という、90秒以内で商品を紹介できると言うユニークなサービスを2020年に開始しました。Googleの有する「YouTube」を活用し、商品の動画を確認することも可能な相互的なサービスを目指しています。Facebookでは「Facebook shop」、インスタグラムでは「Instagram shop」、そしてECサイト大手のアマゾンもライブコマースを「Amazon Live」という名称で2019年に開始しています。このサービスは既にアマゾンにて販売を行っている業者が配信を行うことができるサービスで、現状ではアメリカの販売業者のみが配信可能な状況です 。将来的には市場の拡大に合わせて、Appleも何かサービスを打ち出してくる可能性があります。

そしてこの4大企業のみならず、さまざまプラットフォーム、または新しいソーシャルネットワーキングサービスが北米市場では産み出されているため、今後もライブコマース市場は拡大し続けると予想されています。

ポテンシャルが期待される東南アジアライブコマース市場

仏像

東南アジアでもライブコマースは少しずつ普及している状況です。シンガポールや タイが市場をリードする形で、フィリピン、ベトナムでもそれを追いかけるような状況です。特にSNSでのソーシャルコマースが盛んで、シンガポールでは2020年、前年の販売額に対して307%、タイでは212%も売上が上昇しています。

そのような中、東南アジアや台湾で人気のあるeコマースプラットフォーム「Shopee」では、新たに ライブコマースサービスの「Shopee live」のサービスを開始しました。Shopee liveは、2020年4月にインドネシア最大の視聴数、1億2000万視聴を達成するほどの大人気。

これからも新たなプラットフォームが作り出され、景気拡大とスマートフォンなどの普及とともに広がるSNSからライブコマース市場も徐々に広がり、大きなマーケットになる と予想されています。

ヨーロッパではライブコマース採用企業が増加中

ヨーロッパでは各国の違いはありますが、全体的にSNSなどを通して買い物をする習慣が少ないため、ライブコマースはそれほど普及していない状況にあります。プラットフォームもまだそれほど作成されておらず、日本のようにそれぞれの企業でライブコマースを行い、2019年くらいから少しずつ採用企業が増加している状態です。そして、現在ヨーロッパのライブコマースの約70パーセントは、企業のホームページ内でのライブコマースを行っています。

そのような状況下でも、使用感や使い方などが、わかりやすいという利点から主にコスメ関係またはファッション系の企業がヨーロッパのライブコマース市場では人気となっており、数少ないライブコマースプラットフォームの中でも、スウェーデン発のライブストリーミングプラットフォーム「Bambuser」はとても人気があるサービスです。ここでもメインで取り扱われている商品はファッションやコスメに関するものが多くなっています。

ヨーロッパでも他の世界の国々と同様に、新型コロナウイルスの影響で厳しい外出禁止令が発令されることもあり、自宅にいる時間が長いため、その間にようやく人々がライブコマースについて知り始めたというところです。

いまだライブコマースについては普及が遅れているヨーロッパですが、ここからヨーロッパ発のプラットフォームの開発や海外のプラットフォーム進出が起こり、徐々に普及していくと考えられています。

まとめ

このように世界のライブコマース市場は地域によって普及状況は異なりますが、新型コロナウイルスのステイホームにも後押しされ、急速に拡大している状況です。日本も中国などに後れを取っている状況ですが、プラットフォームの新規参入や現状サービスを提供している企業も力を入れ始め、市場はさらに盛り上がるものと考えられます。外出する機会が減る昨今ですが、ライブコマースのように実際に見聞きし、体験が可能なオンラインサービスはこれからも市場が膨らみ、広がりを見せていくでしょう。

消費者にも便利なこのライブコマース。日本でも早く発展してほしいものですよね。

タオバオ売上高
https://36kr.jp/103736/

ドウイン
https://www.atglobal.co.jp/strate/11135

クアイショウ
https://zuuonline.com/channels/toyoshoken/226316

韓国のライブコマース
https://note.com/masayamori/n/n4a65a359c813#a7KJL

アメリカライブコマース
https://www.cnbc.com/2021/05/06/facebook-amazon-make-inroads-into-11-billion-us-livestream-market.html

東南アジアのライブコマース
https://ikala.tv/wp-content/uploads/2020/10/NEW-RETAIL-2020-The-Rise-of-Social-Commerce-in-Southeast-Asia.pdf

ヨーロッパライブコマース
https://go.forrester.com/blogs/live-streaming-commerce-lands-in-europe/

https://ecommercenews.eu/70-of-europeans-are-open-to-live-shopping/

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