日本ではあらゆる場所に設置してある自動販売機。深夜の時間帯やスーパーやコンビニが遠い場合など、とても便利ですよね。現在では、格安の100円で飲料を販売するものや、生活小物を扱うものまで様々な種類の自動販売機が存在しています。
自動販売機は、購入の際に人と関わる必要がないという特徴があります。新型コロナウイルスが蔓延する中、この非接触購入が世界でも大変注目を浴びています。
今回は、いま改めて見直されている自動販売機について記述していきます。
自動販売機の種類
現在では、通常の飲料用、食品用をはじめ、数多くの取扱商品がありますが、自動販売機自体にも多くの種類が存在しています。
下記の表ではそれぞれの自動販売機の機能や特徴を示しています。
自動販売機の種類 | 機能、特徴 |
---|---|
屋外設置型 | 屋内型と雨があたる屋外でも使用可能なものが存在し、路上に設置してあるものは屋外型。 |
冷蔵、保温機能 | 飲料をはじめ、軽食、お弁当、うどん蕎麦、など、飲食物の冷蔵や保温が可能なもの。 |
ロッカー型 | 冷蔵が必要ない商品でロッカーのように、ドア開け閉めで販売をする形式。 |
スリム型 | 設置箇所の奥行きや横幅が狭い場合などに設置可能な薄型のもの。 |
ディスプレイ型 | 駅の自動販売機で見かけるディスプレイに商品の写真が載せてあり、タッチすることで購入できるもの。電子マネーが使用可能で、取り扱い商品サイズも選択可能な機種も。 |
スマート自動販売機 | ディスプレイ型に、カメラやセンサーを付加し、他言語のディスプレイ表示、Iot技術を使用したディスプレイへの広告表示、防災情報の表示、公共Wi-Fiの提供なども行うことが可能な最先端の自動販売機。 |
新型コロナウィルス対策機 | ・抗ウイルスコートを施した機械。 ・顔認証非接触機 ・足踏みボタン式 ・飲料などの販売と共にマスク、除菌グッズの販売。 |
これらの他にもオゾンホールの原因となるフロンガスを冷媒に使用しない機械、ヒートポンプ方式を使用した省エネ型、人感知センサーでLED照明を点灯する自動点灯機能などの環境や省エネに関する機能を搭載している機械も多く存在しています。機能面だけでは無く、景観の観点からデザインを街の景観に合わせて木目調にしたり、アート作品をボディに使用するなど、人々の注目を集めるために人気キャラクターのデザインを取り込む機械も存在しています。
このように、時代や状況に合わせて自動販売機の機能や役割もさまざまに進化しています。
日本の自動販売機の普及率
日本には現在どれくらいの自動販売機があるのでしょうか?なんと飲料用の自動販売機だけで212万台設置されています。台数の推移としては、わずかな増減はありますが、若干の減少傾向にあります。これは設置可能な場所には既に設置してしまっているため、新規設置が難しくなっている状況も原因の一つとなっています。
そこで、飲料品だけではなく他の商品や今までに自動販売機では販売していなかった商品、そして別の魅力的な機能を付加することにより、設置機械の入れ替え需要を見込んでいます。人件費の削減や、使用方法によってはエネルギーロスやフードロスをも削減することができるため、今後新しい形で発展していくと考えられています。
普及が遅れる海外の自動販売機
日本ではごく当たり前の自動販売機ですが、海外では日本ほど普及はしていません。
それは犯罪率の高さによるものです。 特に自動販売機は24時間無人で稼働し、現金もその中に収納されているため、路上設置の機械は夜中に強盗被害を受けやすくなります。さらに商品補充や現金回収時にも治安の悪い地域では危険が伴います。このような被害を考え、海外では主に学校や空港、モールなどの施設の敷地内に設置されている状況です。日本のように、至る所に自動販売機を設置することは難しんですね。
海外の自動販売機事情
2018年の世界での自動販売機市場は約300億ドルの規模になります。市場は拡大傾向にあり、特にオフィス内に設置されている機械の普及率が高くなっています。
海外では治安の問題などで普及が遅れていましたが、最近では新しい試みなどにより、設置台数が増加しています。日本では自動販売機は比較的自由に設置可能ですが、海外の国々ではどのように運用し、普及のためにどのような取り組みをしているのでしょうか。 市場動向を見ていきましょう。
アメリカの自動販売機事情
犯罪率の高いアメリカでは、路上に自動販売機を設置することはほぼありません。設置場所は、オフィスの敷地内などと限定的になっています。そのような状況で、新型コロナウイルス蔓延の影響により非接触型の販売が可能である自動販売機が改めて見直され、新しい型の自動販売機の設置は増加傾向にあります。
PCR検査キット自動販売機
カリフォルニア大学のサンディエゴ校では、新型コロナウイルスの蔓延により非接触販売を目的とした「検査キット自動販売機」を大学構内に設置しています。学生証とデータ連動しPCR検査を受けることができる検査無料キットの入手が可能です。新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、出来る限り感染を防ぎ、感染の有無を知ることが可能という理由により設置されました。
人を介さないピザ自動販売機
他にもスタートアップ企業の「Basil Street」(バジルストリート)は、冷凍ピザを自動販売機内で調理して提供する、という新しいサービスを提供しています。調理後のピザに触れるのは購入者のみで、接触感染を防ぐという観点からは大変優れた販売機です。当初は空港内に5台の設置から始まりました。その台数も年末までには、アメリカ全土に200台を設置する予定です。
自動販売機レストランの取り組み
非接触での販売にはさまざまな企業からも関心を持たれており、新たに注目を集めているのが、ニューヨークに再び設置された「オートマット」です。オートマットとは「自動販売機レストラン」などとも呼ばれ、飲食物の自動販売機を集積して、レストランのように活用できる場所のことです。ドイツ発祥で1902年にアメリカのフィラデルフィアから広がり始め、1950年代には多くの人々を魅了しました。その後、コンビニエンスストアやファストフード店の台頭により姿を消していました。
オートマットのような形式は、非接触なことはもちろん、販売人件費も不要、フードロスも削減可能で企業側にはメリットも大きいため、改めて見直されています。このようにアメリカでは、今後さまざまな形態で自動販売機が活用されていくことが考えられます。
欧州の自動販売機事情
ヨーロッパには、古く伝統的な建築物や街並みが多く存在します。観光に注力している国も多く、街の景観を乱しがちな自動販売機の設置には、日本より厳しい規制が行われています。自動販売機の設置自体が景観を乱すことに加え、販売されている缶やペットボトルなどのゴミ問題も発生します。 このことから、欧州全体でみると自動販売機はそれほど普及していません。
コーヒーの自動販売機が普及するイタリア
欧州の中で例外的に自動販売機が普及しているのが、イタリアです。イタリアといえばエスプレッソ・コーヒーですよね。そんなコーヒーが好きなイタリア人の趣向に合わせてコーヒーを購入できる自動販売機が存在しています。紙カップで購入できるタイプの自動販売機で、機械内で豆を挽いて作成する本格的なものや、SDGsを意識した環境に優しい内容の機械もあります。こちらも設置場所は防犯の観点から、敷地内に限られている場合がほとんどです。
このように、もともと自動販売機利用の土壌があるイタリアなどでは新しい技術を取り入れた自動販売機も提案されており、イタリアから各ヨーロッパ地域へ波及していくことも考えられます。
東アジアの自動販売機事情
少し視点を近くに戻し、中国、香港の市場を見てみましょう。
中国の電子マネー事情と深いかかわりのある自動販売機
中国でも自動販売機は普及しはじめています。中国の犯罪率は高く、路上に設置することは難しい状況でした。しかしながら現在は、中国の電子マネーの普及により、現金を自動販売機内に入れておく必要がないことや、国民社会信用制度によって購入の際不正を働いた場合、信用度が下がるなどの状況により、自動販売機の普及が後押しされています。
そんな中、自動販売機の集積である「無人商品棚」が注目されており、「毎日優鮮便利購」「猩便利」「果小美」などの企業が市場に参入し、それぞれの地域へ店舗を拡大し普及をさせています。
IT分野に強い中国では、一般的な自動販売機よりも一層進化したAIを搭載した移動式自動販売機が存在します。2021年には、中国の新興企業Neolix(新石器)が、自動運転式の車に商品を乗せ販売する車両を、150台導入することを発表しました。ごく小型の自動運転自動車に商品を積み込み、無人にて販売する形式になっています。支払いや購入手続きは、スマホアプリで行い、利用範囲内の自走可能な場所であればどこにでも行くことができるという優れものです。中国はテクノロジーの力により、一歩先を行く自動販売機が考案されてきています。
香港の自動販売機事情
香港の自動販売機のほとんどは電子マネーで購入するタイプです。日本ではさまざまな電子マネーが存在しますが、香港で最も使用されているのは「八達通」(オクトパス)です。日本の交通系ICカードに似た形式で、最近ではスマートフォンアプリとしても利用可能になりました。
そして最新のデジタルサイネージが使用可能なスマート自動販売機も普及が進んでいます。ディスプレイに広告が表示可能なため、商品の宣伝動画を再生させつつ、商品の販売促進を行うためのサンプル配布や販売も可能です。人々の集まるフェリーターミナルや、ショッピングモールに設置し、プロモーション用として活用ができるものです。
感染防止の観点から、非接触販売を目的とした自動販売機でのマスク販売も試みられています。香港の企業家「鄭志剛」(エイドリアン・チェン)氏が、供給の不足したマスクを手に入れることが難しい低所得者に向けて1000万枚のマスクを無料で配布する計画を発表しました。これは身分証明用のQRコードと連動して受け取りが可能な自動販売機です。
香港もテクノロジーを使用し、最先端の自動販売機を普及させています。新型コロナウイルスに関連する非接触需要がその動きを後押ししているような状況です。
日本メーカーの海外進出
日本の飲料メーカーであり、コーヒーの「ダイドーブレンド」で知られる「ダイドードリンコ株式会社」。日本でも約28万台の自動販売機設置を誇り、既に2010年代から海外進出を図っています。最近では大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」とコラボした商品を販売し、爆発的に人気が出たことでも有名です。
国外の展開では、特にロシアに1万台以上の設置目標を掲げています。海外の自動販売機には日本のように「ホット」と「コールド」が混在する機械はほぼ存在しません。そのため日本の機械を使用し、ロシアの極寒な気候と夏にも対応可能で信頼性のある機械を提供することが可能なのです。さらに設置国は広がり、人口増加率が高いイスラム圏の国々や、特に「トルコ・コーヒー」で有名なトルコへの進出計画が存在します。現在は撤退してしまいましたが、GDP成長率が高いマレーシアなどの国々へも拡大しています。
日本メーカー飲料品は海外に輸出されていることが多く、これを足掛かりに非接触販売とうまくリンクさせ、一層の普及が期待されています。
まとめ
日本では普及が一段落し、新技術商品や技術で新たな境地を見出そうとしている自動販売機市場。海外の今まで普及していなかった地域でも、新型コロナウイルス対策の非接触や、人件費、ロスの低減などで改めて自動販売機の必要性が注目されています。
新しい形や技術を使用した自動販売機を普及させ、より一層効率よく便利で、生活しやすい世の中になってくれるとありがたいですよね。
スマート自動販売機
https://v-sync.co.jp/products/smartvendor.html
自動販売機の種類
https://jidohanbaiki.jp/vm-type/
自動販売機の台数
http://www.j-sda.or.jp/sp/qa_view.php?id=5&cat=7
Vending machine market
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/global-vending-machine-market
検査キット自動販売機
https://mainichi.jp/articles/20210113/reu/00m/030/002000c
ピザ自動販売機
https://www.washingtonpost.com/business/2021/03/12/pandemic-new-vending-machines/
オートマット
https://www.google.co.jp/amp/s/news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/amp/000207740.html
香港の自動販売機
https://www.jetro.go.jp/ttppoas/anken/0001163000/1163912_j.html
マスク自動販売機
https://www.cnn.co.jp/fringe/35152129.html
ダイドードリンコ海外
https://www.dydo-ghd.co.jp/individual/pdf/20201024_00.pdf?ud=201024