ヨーロッパの食品業界における“歴史とトレンド”を結ぶ商品開発

大量生産・大量消費が当たり前の現代において、これまで商品開発の現場ではより高機能で付加価値を持った商品が競うように生まれてきました。
ところが昨今、こうした従来の価値観に疑問を抱く人が増え、特にヨーロッパの消費者の間では原点に立ち返ったシンプルな商品が求められているようです。

 
そこで今回は、ヨーロッパの食品業界における“歴史とトレンド”を結ぶ商品開発についてお伝えします。

添加物が忌避されつつあるヨーロッパの食品業界

最近は日本でも「ヴィーガン」や「グルテンフリー」といった言葉を耳にする機会が増えてきましたが、欧米ではトレンドという枠を超えてすでに一般的な概念として浸透しています。

 
こうした価値観が広がる中、健康志向の食品が好まれるだけでなく、人工的な添加物が入った食品が忌避される傾向も高まっています。
「自分の体にとって、より良いものを取り入れたい」という考え方から、さらに「余分なものはできるだけ排除したい」というフェーズに進んでいるのかもしれません。

 
かつての大量生産・大量消費の時代において、食品添加物は食べ物を手軽に美味しくするうえで非常に重宝されてきました。
しかし、「余分なものが入っていない=健康的」という意識が食品全般に対して高まっている今、特にヨーロッパの人々は自分の口に入れるものに対してシビアなため、食品添加物に対して抵抗感を持つ人が増えているといいます。

よりシンプルな製法や原材料への回帰

実際にヨーロッパの食品メーカーに話を聞いてみたところ、やはり最近は人工甘味料などの添加物が入っていない商品が好まれる傾向にあるようでした。

 
また海外のスーパーマーケットに行くと、生産者の顔と名前が表示されているものや、生産に至る背景やストーリーを語った商品が多いことにも気付きます。
添加物の有無だけでなく、製造方法や背景が明らかな「作り手の顔が見える商品」こそ、より安全だという意識が強いのでしょう。

 
こうした時流に合わせて、現在ヨーロッパの食品業界では製造方法や原材料の見直しが求められています。
よりシンプルな製法に立ち返ったり、材料自体も品種改良を行う前の原種に変えたりと、さまざまな趣向をこらして新たな商品を開発しているメーカーも多いようです。

 
その一つの例として、欧米のチョコレート業界では近年、「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」と呼ばれるチョコレートが人気を集めています。
Bean to Barとは、カカオ豆(Bean)の仕入れから板チョコレート(Bar)の成形までを一貫して生産したチョコレートのことで、従来は分断されていた製造工程を一つの生産者が手掛けることで、素材の良さを生かしたチョコレートを作ることができるといいます。

 
参考:チョコの新潮流「ビーントゥバー」とは何か

 
複雑な製造工程や人工的な添加物が生まれる前の時代までさかのぼり、あえてシンプルで素朴な製法や原材料を取り入れることで、これからの市場に受け入れられる商品を生み出そうとしているのです。

「過去と未来」を行き来する商品開発

冒頭でも述べた通り、近代はテクノロジーの発展や人口増加に伴って大量生産・大量消費の時代が長く続いてきました。
しかし、今後のトレンドとしては、原点回帰とも言えるシンプルでミニマルな商品が求められていくのではないでしょうか。

 
従来はさまざまな価値や機能をプラスする「足し算」の考え方だったのが、これからは余計なものをそぎ落としていく「引き算」の商品開発へと変わり、最後には本当に必要なモノだけが残るのかもしれません。

 
こうした商品開発のヒントは、おそらく人間本来の生活があった歴史の中にもたくさん隠されています。
過去を見つめ直すことが未来を見据えることにつながり、そこで初めてこれからの時流に合った商品を生み出すことができるのではないでしょうか。

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