投資判断の難しい建設・建材・住宅マーケット(国内に軸を置くべきか、海外を前提とするか)

オリンピック需要もあったことからコロナウイルス感染拡大前は盛り上がりを見せていた建築業界。

今年3月決算においてはまだ業界全体に大きな利益損失の打撃は見られていませんでした。

しかし、多くの企業が来期の売上や利益が大打撃を受ける見込みで、実質GDP成長率はリーマンショック同等の大幅な落込みとなると言われています。

 

4月13日、ゼネコン大手での清水建設では東京都内の建設現場で勤務していた3人が新型コロナウイルスに感染し、そのうち1人が死亡後に「陽性」と判明したと同社は発表し、約500の作業所を原則閉鎖する方針を示しました。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00145/041400002/

 

感染拡大を抑制しながらも経済活動を再開したい政府、建設を一日でも早く開始して経営の悪化を防ぎたい建設業界、それぞれの葛藤を待たずして業界の景気は悪化の方向をたどっています。

この記事では、大打撃を受ける建築業界が今後この状況を乗り越えるためにどのような選択肢があるか、マクロ的な観点でヒントとなれば幸いです。

 

※この記事は各社のWebサイト・IR情報や政府公開情報など、オープン情報を中心に掲載しております。

 

建設業界への影響

緊急事態宣言により工事がストップ

建築業界は感染拡大による営業活動の自粛が売上や利益に直結しやすい業界の1つです。

政府の緊急事態宣言を受け、その後は営業活動がかなり制限されています。

工事の中止、展示会の中止、建材の流通の停滞などで頭を悩ませている様子が下記の各社の対応で伺えます。

リモートワークを取り入れる企業もありますが、現場作業は職人がいなければ成立しないため、工事遅延や中止は深刻です。

建設業者各社のコロナ対応状況

 

※各社の対応の詳細はこちらの動画をご覧ください

建設業界の見通しは大幅に悪化

日本の2020年の実質GDP成長率は国際通貨基金(IMF)の予測によると、2009年のリーマンショック時と同程度の▲5.2%となっています。

GDP推移

 

日本経済研究センターのデータで建設業界と製造業を比較されています。

<日銀短観(3月調査)の業況判断指数>

・大企業製造業が▲8ポイント(0→-8)

・大企業非製造業(が▲12ポイント(20→8)

と製造業、非製造業とも大幅な悪化となりました。

 

比較的堅調だった建設業は▲1ポイント(37→36)ですが、3ヶ月先の見通しを示す先行きの業況判断は▲20ポイント(36→16)と大幅な悪化となっています。

 

決算状況

新型コロナウイルスがもたらす景気後退で、建設市場はどうなるのでしょう。

建築のコストマネジメントを専門とするサトウファシリティーズコンサルタンツによると、2020年の建築物着工床面積が前年比23%減の9840万m2まで落ち込むと予測されています。

 

では、それぞれの業界を見てみましょう。

ゼネコン

3月の決算発表において、大手各社の売上高はオリンピック需要などもありコロナウイルス感染拡大の影響はまだ受けていません。

具体的にマイナス数値として出てくるのは来期からと言われていますが、日経クロステックの調査では、大成建設では2021年3月期の連結利益は前年比半減、鹿島は2割減とすでに大打撃を受けることが予測されています。

建設業者実績

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00735/より引用

 

住宅・不動産

2021年3月期の業績予想を発表した6社は全て減収減益の予想となっています。

感染症拡大が業績に与えるマイナスの影響は、今後拡大すると見込まれています。

ハウスメーカー

https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2007/04/news009_3.htmlより引用

 

建材

各社は2021年3月期の予測を発表していませんが、建材大手各社は感染拡大後、部品調達が住宅供給全体に影響しています。

そのため業界全体がマイナスとなる可能性は高いでしょう。

建材メーカー状況

https://www.reform-online.jp/news/manufacturer/17763.php より引用

建築業界がアフターコロナに見出す活路

工事ができなくなっては建設業界各社は代わりにどのようにして利益を生み出せばいいのでしょうか。

感染拡大が落ち着くまでは、国内の需要は縮小し続けるでしょう。

しかし今回の感染拡大は日本だけにとどまる話ではなく、世界中の出来事です。

国内需要がないからと言って海外進出するにも非常に厳しい状況です。

しかしアフターコロナになれば海外進出の道も見えてくるかもしれません。

建築業界が見出す活路を、海外進出、公共事業、地方再生の3つの視点から考えてみましょう。

 

海外需要を増やす

これまでの海外需要

韓国の建築業は約3割が海外工事が占めている一方で、日本は1 割未満となっています。

この数値を見ると、日本にとって海外市場はまだまだ国内市場の延長線上にあるのかもしれません。

建設市場規模を比較すると、欧米に比べ圧倒的にアジアが大きいことが分かります。

建設市場規模

 

アジアにおけるインフラ需要

 

アフターコロナに海外進出を検討する前に気をつけたい点

コロナウイルスが発生する以前から海外進出を進めたいと考える日本の建設業の課題がいくつかありました。

アフターコロナに海外進出を考える際は今のうちに次の3つを注意する必要があります。

①情報の収集

建設業が戦略的に海外展開を行うためには情報収集が鍵を握っています。

海外建設活動に係る正確な情報を適時収集し、これを最大限に活用して国際競争力の強化を図ることが不可欠です。プロジェクトの採算性向上に向けて技術的、資金的、社会的リスクの分析を行うことも重要です。

特に、商流構造が国・都市によって存在する業態があったりなかったり・・・と変わってくるため、事前の調査が必須となります。

 

例えば、日本の場合はデベロッパー、ゼネコンのプレゼンスが強く、サブコンストラクションが弱い傾向があります。

また、ゼネコンが複数の機能を持っていることもあります。

シンガポールでは、デベロッパー、建築、設備・機械コンサルのパワーが強く、ゼネコン、サブコンは弱い傾向があるなど、国によって大きく変わります。

特にこういった国別の業界構造は建築業界では顕著なため、事前の調査をしっかり行わなければ経費を無駄に使ってしまうリスクがあるため気を付ける必要があります。

 

②受注競争の激化

海外市場における受注競争は大変激しく、特にコスト競争面では中国、韓国、更に地元建設業者などとの競争に打ち勝つことは非常に難しいと言われています。

日本の高度な技術や施工面における、きめ細かい品質・工期・安全管理などの特長が評価され、活かすことのできるプロジェクトに絞ることも重要です。

 

③人材の育成

海外においてプロジェクトを遂行していく際に海外要員の確保は大変重要な課題です。

海外工事を担当するプロジェクトマネージャは日本国内の事業の進め方や仕組みが大きく異なる環境の中で適切な判断が求められます。

その力量は工事に大きく影響するため、プロジェクトマネージャを始め多様な海外要員の育成に力を入れる必要があるでしょう。

建設業就業者数推移

 

また、日本の建築業の就業者は少子高齢化と共に減少傾向が止まりません。

このことも常に視野に入れて人材育成の改革が急務となってくるでしょう

 

この課題に対して国土交通省と厚生労働省はタッグを組み人材確保や育成に力を入れています。

そのための補助金や支援も強化されていくことが見込まれます。

建設業人材育成政府案

 

公共投資

公共事業費とは国や地方自治体が、道路・港湾やダム、橋、災害復旧など市場経済のみでは供給が難しい公共施設の整備を行う費用を指します。

この費用によって雇用機会が増えたり、土地の利便性が上がり企業誘致ができるなどの経済効果を期待して行われます。

国土交通省の「2020年度予算概要」によると、公共事業関係費は5兆9369億円と2019年度とほぼ同水準となっています。

公共事業関係費

リーマンショック時の対策を上回る事業規模60兆円が見込まれている緊急経済対策ですが、実際のところはほとんどコロナウイルス関連に回されてしまいます。

営業活動の自粛、新型コロナで所得や売り上げの減少などの影響を受けている個人または事業者への支援が優先されるため、新型コロナの治療薬・ワクチンの開発、雇用調整助成金の助成率引き上げ、飲食業・観光業に対する資金繰り支援、などが挙げられます。

公共事業費の盛り込みは期待できませんでしたが、6月8日の審議では、第二次補正案公共事業費総額は7.7兆円となりました。

この予算追加を公共事業に充ててほしいと希望する建設業者は多いでしょう。

 

経済財政諮問会議で赤羽一嘉国土交通相は、政府は新型コロナウイルスを想定した感染拡大防止と経済活動を両立するための「新たな日常」の構築に向ける必要があると述べました。

景気の下支えや経済の早期回復、その後の持続可能な経済成長のためにも、中長期的な見通しをもった公共投資の必要性を強調し、感染症の収束後の経済回復に向かうべきだと主張しています。

今まで公共事業費と聞けば無駄なダムへの建築費用などが問題になっていましたが、今後政府は必ず経済活動を活性化する使い方をされなければいけません。

 

地方再生

明治以来、日本の国づくりは東京への機能集約とともにあったため、この長年のインフラの構築を短期間で変えることは難しいでしょう。

しかし、今回の感染拡大によって東京への一極集中のリスクが叫ばれました。

企業はリモートワークを推進し始め、社内のミーティングや顧客との折衝もオンラインで行われるようになりました。

この状況にメリットを感じた企業や働き手が増えると、東京の企業に勤めながら地方でリモートワークが可能になる流れも出てくるでしょう。

また、店舗、ホテル、医療施設、住宅といった様々な用途でも同様の変化が進み、東京一極集中の都市構造が緩和されるかもしれません。

地方再生はビジネスチャンスとして注目されていくでしょう。

 

支援

感染拡大による大手ゼネコンの工事停止、住宅展示場の休止など、大きな打撃を受けています。

新型コロナの影響が建設業にも広がっています。

建設業界が活用できる政府支援策には下記のようなものがあります。

政府支援策まとめ

 

海外のどの国を見渡してみても建設業界への打撃は大きいものでしょう。

海外の建設業界への支援を見てみると、オーストラリアが新築購入者に対して支援を始めるようです。6月4日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は新型コロナウイルスの影響を受けた国内経済の回復を支援策として、住宅の新築や大幅な改修工事に助成金を提供する「ホームビルダー・プログラム」の実施を発表しました。

 

「新型コロナウイルスの影響により2020年後半は建設活動の縮小が予測される」と述べ、「ホームビルダー・プログラムによる需要を喚起するために建設業14万人の雇用に加え、住宅関連産業100万人の雇用を支援する」ことを明らかにしました。

予算総額は日本円にして約510億円で、約2万7,000件の建設工事を支援する計画となっています。

 

最後に

野村総合研究所上席コンサルタント榊原渉氏は「建設業課の需要のへこみは一時的となり、22年度からは需要が回復する見込みだが、この苦しい2年間が住宅業界の構造を変えてしまう可能性がある」と予測しています。

コロナウイルス感染拡大以前から建設業界では技能者の約3分の1が55歳以上と高齢化が進んでいるため、この感染拡大が建設業界を改革の岐路に立たせるでしょう。

 

アフターコロナの業界再生の選択肢として海外進出、公共投資、地方再生を挙げましたが、日本の状況も海外情勢も見通しが全く立たない現在において、何が有効かの見極めは非常に難しいと考えます。

しかし、この感染拡大によって人々の働き方、生活は根底から変わってくることは揺るぎない事実です。アフターコロナにおいても元の生活に戻る可能性は低いとの声が多い中、都市や建物のあり方を一から見直す必要があるでしょう。

 

コロナウイルス感染拡大によって建設業界だけでなくほぼ全ての業界がデジタルトランスフォーメーションの導入を真剣に考えるようになりました。

現場の仕事が多い建設業界においては、ロボットやITの活用を加速させることで人材不足をカバーすることも可能です。

 

最後に、このコロナウイルスを逆手にとった建材大手のLIXILの事例を紹介します。

LIXILは「ニューノーマル」に対応する商品群の開発として、ハンドルに触れず清潔に使えるタッチレス水栓や自動開閉・自動洗浄機能の付いたシャワートイレ、閉めたまま換気できるドア、在宅勤務スペース確保のパネル、宅配ボックスなどの生産を急いでいます。

 

もともとタッチレス水栓で同社の国内シェアは8割、世界でもトップクラスの売り上げを誇っていましたが、タッチレス化が正気と瀬戸社長兼CEOは述べています。

20年3月期に98億円だったタッチレス・自動水栓の売り上げは21年3月期に166億円を狙い、必要な生産能力の確保を進めているそうです。

このような切り返しがスムーズにできる業界は現状多くはないと感じますが、ピンチをチャンスに変えていける企業が少しでも増えることがアフターコロナの再興につながっていくでしょう。

 

<参考>

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00687/

https://www.nikken.co.jp/ja/expertise/costmanagement_2020-04.html

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00099/00046/?SS=imgview&FD=-1172091753

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00135/

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00145/041400002/?P=1

https://shushoku.js88.com/hp/map/map2.html

https://toyokeizai.net/articles/-/295258

https://career-books.com/idy21/

https://www.kensetsunews.com/web-kan/450836

https://www.mlit.go.jp/common/001341788.pdf

https://ken-it.world/it/2020/06/construction-after-covid19.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/34/9/34_625/_pdf/-char/en

https://toyokeizai.net/articles/-/341116

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00009/052000038/

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00099/00050/

https://www.mlit.go.jp/common/001187356.pdf

https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2007/04/news009_3.html

https://www.kentsu.co.jp/webnews/view.asp?cd=200403590001&area=0&yyyy=2020&su=1&suex=1

https://www.mlit.go.jp/common/001187356.pdf

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00006/061900177/

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/00788/

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/forecast/outlook_200220.pdf

https://www.kensetsunews.com/archives/457549

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/00908/

https://archi-book.com/news/detail/99

https://www.kensetsunews.com/archives/460552

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/06/fc158a582b793fb4.html

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59766400Z20C20A5X13000/

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