1万以上の島から成る国、インドネシア。現在の人口は約2億6000万人と世界第4位です。そして、今後も人口が増加していくと予測されています。
そのことから、今後、住宅戸数も増加していくことが予測されます。今回は、東南アジアにおける住宅市場の実情と、インドネシアに企業進出する際のポイントについてお伝えいたします。
スケルトン住宅が一般的な東南アジア
「スケルトン・インフィル住宅(通称SI住宅)」をご存知でしょうか。
建物の骨格であるスケルトン部分と、間取りや内装などのインフィル部分とに分離した住宅のことを「SI住宅」と呼称します。
スケルトン部分とインフィル部分とに分離することで、100年以上の耐久性を持つ骨格部分はそのままに、数十年で変化するライフステージやライフスタイルに合わせ、内装を変更することができます。
日本では、戸建・集合住宅ともに引き渡しの際には内装もあるのが当たり前ですが、東南アジアではドアや床材のない「スケルトン」住宅となっていることがあります。
特に、戸建については内装がついていない場合がほとんどで、マンションは価格帯によって内装の有無が異なります。
具体的には、ハイエンドなマンションには内装がすべてついており、ミドルレンジなマンションは内装が半分、そして、ローエンドのマンションには内装が何もついていない傾向にあります。
では、内装がない住宅を購入した場合には、どのように内装を揃えるのでしょうか。そのパターンは、大きく2つに分けられます。
- デザイン会社に相談をし、生活スタイルや好みに合った内装デザインや内装メーカーを紹介してもらう
- ショッピングモールやショールームで既製品を購入する、または工房などに出向いて気に入った内装をオーダーする
日本では、スーパーゼネコンのような総合建設請負業者が、土地の取得開発~建築デザイン~施工までの一連の流れを単独で行うのが一般的ですが、東南アジアでは、これらのフェーズごとの業務を分業して行う事が一般的です。
このように、スケルトン住宅が主流となっている東南アジアでは、特に内装部分は、住む人がこだわりを持って作り上げていく文化と言えます。
今後も経済成長が予測されるインドネシア
インドネシアでは現在、集合住宅に限り、外国人による不動産取得に対して規制緩和がなされています。ミドルレンジの所得は増加傾向にあり、今後もインドネシア経済は成長していくと思われます。インドネシア経済の成長は、GDPを見ても明らかです。
インドネシア市場進出を考える上で重要な2つの視点
このように、今後も経済成長が見込まれるインドネシアは、企業進出を考える際にも候補先の一つとなるでしょう。
インドネシア市場へ企業進出を検討する場合には、まず、以下の2点への理解を深めておくことが重要です。
イスラム教への理解
インドネシアは、イスラム教が8割を占めている国なので、ビジネスよりも宗教行事が優先される国であることを念頭に置く必要があります。
聖典・コーランには、食べてもいいものが記載されており、イスラム教徒は豚肉・牛肉・アルコールを口にすることができません。アルコールに関しては、調味料として料理やお菓子に使われている場合も、食べることが禁じられています。
また、「ラマダン」と呼ばれる、1ヶ月間の断食も行われます。この期間は、日の出から日没までの時間に飲食をすることが禁じられています。イスラム教徒にとってラマダンは修行の一つであり、自身の信仰心を清めることが目的とされます。そのため、食欲だけではなく、その他の禁欲も課せられます。
日の出から日没までの時間には、コーランを読んだり、アッラーへの祈りを捧げる時間を多くとります。
また、人に会いに行くことが敬虔なムスリムとしての崇高な行いとされており、普段あまり会えない友人や親戚などに積極的に会いに行きます。しかし、人へ会いに行くのはモスクでの礼拝を終えてからになるため、どうしても夜の時間になってしまうことが多く、ラマダン中は、寝不足になってしまうイスラム教徒が多いと言われています。
企業や役所などの勤務時間も、始業は9時~から10時、終業は午後3時くらいまでとなるところが多く、仕事の生産効率はかなり落ち、売上にも影響します。
インフラ状況の把握
インドネシアは、交通渋滞世界第1位と言われます。
実際に、首都・ジャカルタへの出張の際、空港から都心までのわずかな距離の移動に車で3時間もかかる体験をしました。このように渋滞してしまう理由は、歩道がなく、公共交通機関も整っていないため、ほとんどの人が車移動をするために車の台数が多くなってしまうことにあります。
以上のポイントは、情報として頭に入れるだけであれば、日本にいても知ることができるでしょう。
しかし、実際に現地に赴き、自分の五感を使ってその国を理解することで、より深く実情を知ることができるのではないでしょうか。「自分の足で得た情報」というものを、当社では重要視しています。
今回の出張においても、インドネシアの宗教観や文化、また経済が成長していっている勢いのある空気感を肌で感じ取ることができました。
当社の現地調査では、報告内容をまとめる際に必ず、社内の他のコンサルタントやアナリストにも相談をし、客観的な意見を出し合うようにしています。また、現地調査では複数のパートナー企業や関連企業様などへ幅広いヒアリングを行っています。それらの幅広い視野を集めた上で、現状についての分析を行い、全体感をより深く把握していきます。そうすることで企業進出成功のカギとなる、現地の購買力を見極めていくことができるのです。