タイの医薬品流通事情

今回、タイに訪問し、医薬品の流通について調査を行いました。
タイでの医薬品販売の現状と、そこから見えてきた調査ポイントについてお伝えします。

病院よりも市販薬を選ぶタイの人々

タイ料理と言えば、代表的なものにトムヤムクンやガパオライスなどがありますが、その味付けは唐辛子の効いたピリっと辛いものが多く見られます。
タイの人々は、このように辛い食べ物が大好きなのですが、実は決して胃腸が強いわけではありません。
そのため、辛いものを食べて腹痛になる前、または腹痛になると胃薬を服用します。
しかし、タイの人々は体調を崩してもなかなか病院に行こうとしません。
タイの病院は主に国立病院と私立病院に分類されますが、国立病院は患者が多く、大混雑しており、朝一の診察を受けるためには夜中から並ぶ必要があるほどです。
一方、私立病院はサービスも整っており、国立病院ほど混雑していませんが、医療費が高額なために診察を受けられるのは富裕層に限られます。
このように、病院での診察は長時間待つか高額になってしまうため、タイの人々は病院から足が遠のいてしまっているのです。
このような背景から、タイの人々は市販薬を服用する頻度が高く、より安価で即効性のある薬に需要があります。

販売店ごとの薬の特徴

タイでは、すぐに薬が購入できるようにドラッグストア、薬局だけでなく、コンビニでも薬が販売されています。
また、タイで販売されている薬はタイで製造されたものだけではなく、イギリスやドイツなど海外製品も多く流通していることから、その種類は豊富です。薬の形状は、日本と同様にタブレット・粉末・液体のものが販売されていますが、飲みやすさからタブレットと液体の薬に需要があります。

タイ コンビニの薬 商品陳列の様子
さまざまな種類の薬が大量に陳列されているコンビニ
タイ 薬陳列 液体の薬
液体の薬も多く並ぶ

コンビニ、ドラッグストア、薬局それぞれの売り場ごとにどのような特徴があるのかご紹介します。

・調剤薬局
タイの薬局は、家族経営、または数店舗規模の展開をしており、薬局数はタイ全土で1万店舗以上存在します。医療用医薬品も、ドラッグストアより品揃えが豊富なことが特徴です。
日本の調剤薬局と同様、処方箋を持参し薬を購入します。

・コンビニ
コンビニで薬を購入する消費者は、常備薬として自宅に保管したり、持ち歩くのではなく、その場で服用する人がほとんどのため、多くの商品がバラ売りされています。
価格は薬局よりも安めです。
・ドラッグストア(調剤薬局を除く)
ドラッグストアはコンビニとは異なり、薬剤師が扱うことのできる薬も売っています。
また、常備薬として購入する人向けに、大容量の商品も販売されています。
価格はコンビニに比べ、10-20円程度安くなっています。
日本では、コンビニにドラッグストアが併設された店舗は見かけますが、コンビニに薬が陳列されていることは少ないため、これだけバラ売りの薬が陳列されている光景は初めて目にしました。
しかし、日本のドラッグストアで見られる、効能などの説明が書かれているPOPがタイの売り場には見当たらなかったため、どの商品が何に効くのか、どれが売れ筋商品なのかが分かりませんでした。
また、同じ効能でも多くの種類の薬が置かれていました。
この多くの種類の薬からタイの人々は選択して購入していると思うとさらに驚きますが、薬剤師に相談をすれば症状を詳しく聞かれ、合う薬を選んでくれます。

現地調査から見えてきた成功するための課題

このように、外資企業も参入しており、競合も多いタイの医薬品市場。
市場自体は大きいため、日本製品も参入すれば成功できる可能性はあるのかもしれません。
しかし、市場に進出し、さらに成功を収めるためには、膨大な商品の中から日本製品を選んでもらわなければなりません。
そのためには、いくつかの課題をクリアする必要があります。
①競合他社調査
タイのそれぞれの売り場で高い売り上げを上げている商品が、「なぜ選ばれているのか」、「どのような消費者に選ばれているのか」を調査する必要があるでしょう。
「なぜ選ばれているのか」を紐解くと、
・認知度と認知経路
・卸価格と販売価格
・品質と効能
という視点から分析ができるのではないでしょうか。
まず、認知度については、高い売り上げを上げている他社商品がどのようなPRを実施して認知度を向上させたのか、PRのためにどのような代理店と提携しているのかを知る必要があります。
また、競合が外資企業の場合には、パッケージの言語は自国語のままなのか、タイに合わせた表記に変更しているのかなど、パッケージデザインも調査する必要があるでしょう。
現在のタイでは日本ブームが起こっているようで、日本製品や日本語表示を目にする機会が多くありました。
また、ドラッグストアについても日本でおなじみの店舗も何軒か見かけました。
このようにタイでは日本文化が受け入れられつつあり、日本の薬の品質に対しても即効性があることから成分や副作用の面での信頼性が高く認知されていました。
しかし、価格という面では、中国製品などと比較するとどうしても高額であると認識されているようです。
競合調査においても、価格調査は外せません。
また、品質・効能についても、どのような効能のものが受け入れられているのかを調査する必要があります。
さらに、現在はシェアがなくても、消費者が潜在的に求めている効能についても検討してみる余地はありそうです。
②ターゲット設定
①の調査から、自社製品の強みを検討します。
そして、自社製品のニーズがあるターゲットを予測していきます。
この後も、代理店検討など、実際に進出するためにはさまざまな準備が必要となります。しかし、調査のみに時間を費やしすぎてしまうと進出のタイミングを逃してしまいかねません。
私たちプルーヴは、現地のパートナー会社とも連携をしながら、代理店・小売店・消費者などさまざまな視点に立った調査をスピーディーに実施していきます。
一緒に、市場の可能性を探っていきましょう。

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