メキシコにおける消費財の販売チャネル

今年2017年にメキシコシティ、グアダラハラ、モンテレイの3都市を調査してきました。

メキシコといえば、サッカーの本田選手がメキシコのチームに移籍して大活躍していますよね。現地でも、本田選手への期待をチラホラと耳にしました。

さて、今回は、調査を通して見えてきた、メキシコの販売チャネル(小売)の意外な実態をメキシコ人の国民性と絡めてお伝えしたいと思います。

メキシコについて

メキシコの人口は約1億2300万人(IMF,2017,4時点)で日本とほぼ同じ。
しかし、日本と違い、30代未満の若者が人口の半数を占め、2037年まで人口増加が続くと予測されています。
一人当たりGDPは日本の4割強ですが、ラテンアメリカにおいてはブラジルに次ぐ第二の経済国でもあります。

メキシコと日本 人口の推移


出典:世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LP&c1=MX&c2=JP

メキシコの小売店

メキシコには日本と同じように、スーパーマーケットやコンビニ、百貨店や専門店チェーンなどがありますが、実は、市場(いちば)や個人商店といった伝統的なチャネルが今も健在です。
市場には、食品から衣料品、おもちゃ、化粧品など、あらゆるものが売られています。
この中には正規品もあれば、模倣品も、中古品も、盗品なんかもあります。

メキシコ テピート市場
メキシコシティにあるテピート市場

市場や個人商店はチェーン店よりも安価な物が多く、価格交渉もできるので、今も多くのメキシコ人にとって欠かせないものです。
一方で、都市部にはショッピングモールが数多くでき、特に週末は多くの家族連れで賑わいます。
モール内には、ブランド専門店、百貨店、スーパーマーケット、フードコート、映画館などが一通り揃っています。

メキシコ ショッピングモール
平日はお年寄りの憩いの場となるショッピングモール内のフードコート

メキシコでは、関税の関係上、海外で製造されている衣料品などは、日本よりも高い価格で販売されていることが多いのですが、ショッピングモールには、決して富裕層だけがいるのではありません。
「どうしても欲しいものは、高くても買う」のがメキシコの消費者。
例えば、子どもに良い製品を与えたいと思ったら、月収の半分くらいの価格であっても買うことがあると言います。
そのため、デパートの売り場には、「48回分割払い 金利5%」の案内が掲示されています。

メキシコの百貨店 48回払いポップ
百貨店「SEARS」に掲示されている「48回分割払い 金利5%」の案内

例えば、靴を一足買うために48回払いをする人がいることに驚きましたが、クレジットカードが普及しているメキシコにおいては、安価な商品も分割払いにすることが多いのだそうです。
これは、メキシコ人の楽観的な性格とも大きく関係しています。基本的に貯蓄はせず、働いた分は全部使ってしまうのがメキシコ流。そのため、給与も月に2回支払われることになっているんだそうです。

メキシコ北部の街 モンテレイのお買い物事情

メキシコの北東部にあるモンテレイは、自動車部品、家電など大手外資メーカーの工場が数多く立地する経済都市です。経済発展の恩恵もあり、メキシコ全土と比較して所得水準が高いのが特徴です。

モンテレイの風景
雄大な山々に囲まれるモンテレイ

モンテレイの消費者は、メキシコシティやグアダラハラとは一つ、大きな違いがあります。
それは、買い物をしに、アメリカまで出かけるということです。
モンテレイから一番近いアメリカ国境の街ラレドまでは車(バス)でおよそ3時間。
バスだと片道480ペソ(約3000円)ほどかかります。
モンテレイの消費者は、アメリカのアウトレットモールのセール時期に渡米して、服、靴、シーツ、アクセサリー、おもちゃ、香水など、アメリカの方が安くて品質が良いものをまとめ買いするのだそうです。
自分の分だけでなく親戚や友人などの分まで買うことも多く、メキシコシティやグアダラハラでも、親戚や友人を介してアメリカで販売されているものを購入している人が数多くいました。
これはつまり、満足いく価格で、満足いく品質のものが手に入らない国内マーケットへの不満を表しているともいえるでしょう。
アメリカと陸続きのメキシコ。
2017年1月に発足した米国のトランプ政権において、「米国第一主義」を色濃く反映させるとみられる通商政策の行方が注目されています。
日本企業のなかにはトランプ政権の影響を懸念し、メキシコ進出を保留としている企業があるのも事実です。
一方、メキシコにとって日本はアジアで唯一、FTA(自由貿易協定)を結ぶ国です。
※FTAとは、関税や数量制限などの貿易障害となる壁を相互に撤廃し利益を享受するというもの。
日本企業が高付加価値商品を関税なく輸出できれば、国内マーケットに不満を抱くメキシコ人に歓迎される可能性が高いのではないでしょうか。
今後も、継続してメキシコ市場をウォッチしていこうと思います。

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