これから伸びる男性用化粧品市場。日本の動向から中国・タイ・韓国・インドネシアの海外動向まで紹介

フランスのマクロン大統領は、就任後の3ケ月でメンズメイクに約300万円(日本円にして)費やしたと言われています。

化粧品業界は今、化粧品のラベルから「FOR MEN」という記述を削除するという新しい動きを見せており、世界的に「男性はこうあるべき」というステレオタイプが急激に変化しています。この世界的な動きは、次々と市場に販売される男性向けの化粧品やメイクに比例する需要に顕著に現れています。

2020年に起こった新型コロナウイルスの感染拡大によりZoomなどのテレビ会議が主流になりました。「テレビ会議の画面に映る自分の見栄えを良くしたい」と感じる男性が増え、男性向けのスキンケア商品やファンデーション市場に追い風が吹いています。ここでは、海外と日本の男性向けの化粧品市場動向や、各国の代表的なブランドのご紹介をします。

男性化粧品の成功事例

マンダムの商品ラインアップ例

https://yutai.net-ir.ne.jp/company/4917/

日本において男性化粧品の草分け的な存在であるマンダムは、主に頭髪化粧品の事業を展開してきました。日本の男性化粧品市場は今や約1,200億円規模となりましたが、マンダムが設立した当時はまだまだ男性向け化粧品の市場は小さく、売上を拡大するには市場創造が必要不可欠でした。

そこでマンダムが取った戦略は「今までの化粧品の概念に捉われず、生活者のニーズに真正面から向き合う」というものでした。他社に先駆けて、泡状整髪料、黒髪用ヘアカラー、シートタイプの洗顔料などの商品を発売し、新たなカテゴリーに挑戦することで新しい市場を創造してきたのです。その結果、1999年に、ギャツビーブランドが男性向けブランドとして売上100億円を突破し、男性化粧品ブランドとしてマンダムは男性化粧品メーカーの確固たる地位を築くことに成功しました。

その中でも、「ギャツビー」は、ヘアスタイリング、シェービング、香水、ヘアカラー、フェイスケアなどの身だしなみからおしゃれまで幅広いカテゴリーで商品展開し、多くのカテゴリーにおいてシェアNo.1を獲得してきました。2020年8月には新商品として、ミドル世代男性向け化粧品ブランド「ルシード」から、シワとシミにアプローチするスキンケアの販売を開始しています。

マンダムのシワ・シミ対策商品(LUCIDO)

https://www.syogyo.jp/news/2020/07/post_028276

男性化粧品の市場

富士経済の「国内化粧品市場調査」によると、男性向け化粧品は2012年に1,000億円以上の規模の市場へと成長し、男性の美容への関心に比例して伸長しています。

富士経済では、2018年の売上を1,175億円と7年連続増加を見込んでおり、市場が飽和状態にある女性向け化粧品市場に比べ、まだ伸びしろが大いに期待できる市場です。

富士経済 国内化粧品市場調査(男性向け化粧品)

https://www.beautician-surbible.net/future/skincare/

2018年に資生堂が行った「男性の美容意識実態調査」において、調査対象となった7,500人の男性うち約半数が、化粧水やリップクリームなどの保湿製品を使用していることが分かりました。そのうちの6割の男性は「週に5日以上使用」と答えています。

資生堂男性の美容意識実態調査

https://www.just-research.co.jp/pdf/20131121S.pdf

最近ではスキンケアアイテムのみならず、男性向けのファンデーションも少しずつ販売されています。男性も女性と同じように自分の肌がどう見られているかに気を配るようになり、BBクリーム(補正ファンデーション)やアイブロウを身だしなみとして使う男性も少しずつ増えているのです。

2019年資生堂が発売した男性用BBクリーム「UNOフェイスカラークリエイター」は、同年末までに38万4000個も売れるほどヒット商品になりました。

uno商品画像例

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=mBWMvOD6uTw&feature=emb_logo

男性用化粧品の最大の市場は西ヨーロッパ地域で、少し古いデータですが、2015年の市場規模は124億ドルとされています。その次にラテンアメリカ、北米、第4位はアジア太平洋地域で、年平均成長率8.1%と急激に伸びていることが分かりました。世界人口の6割強を占めるこのアジア太平洋地域がこのまま成長を維持すれば、2020年には115億ドルに拡大することが見込まれています。

世界の男性用化粧品市場規模

https://transcosmos.com/jp/global_male_grooming_ec_market/

世界の男性向け化粧品のブランド

AXE商品イメージ

https://www.axeblack.jp/

大手化粧品ブランドは、ユニリーバの「アックス」やP&Gの「ジレット」などを展開していますが、男性化粧品市場では、独自の強みを持ったスタートアップや小さなブランドが市場で存在感を示すような動きが見られます。新規参入しているスタートアップの多くがオンラインのみで販売していることも特徴です。

世界的な潮流は化粧品を「ジェンダーニュートラルにする」という流れがあり、NPDの”iGen Beauty Consumer”のレポートでは、18〜22歳の成人のほぼ40%がジェンダーニュートラルな美容製品に関心があると答えています。

War Paint

Warpaint商品イメージ

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000055521.html

自身が体の問題から20年間化粧品を使用してきたダニエル・グレイさんは「性的にノーマルな自分が化粧品を買うことが快適ではなかった」という個人的な経験から、男性向けメイクアップブランドWar Paintブランドを設立しました。

ロンドンが発祥のこのブランドは、販売当初はまだ「化粧品は女性のもの」という認識が強かったため、不快感を持つ人々が多く、炎上となったそうです。しかしジェンダーニュートラルな時代に突入した今では、英大手ヴァージン航空が同ブランドを扱うなど男性向け化粧品は幅広く認知され始めています。

CHANEL

男性用化粧品の第4位のアジア太平洋地域では、シャネルは男性向けのメイクアップ商品「ボーイ」の先行販売をアジア市場の最初に韓国を選んだことからも分かるように、「美容大国」呼ばれる韓国が圧倒的にプレゼンスを示しています。

シャネル男性用化粧品イメージ

http://clarewiththehair.com/chanel-mens-make-line-boy-de-chanel-launches/

「韓国では若く見られたい」というプレッシャーは相当強く、リサーチ会社のユーロモニターによると、韓国人男性1人当たりがスキンケアに使う費用は、米国やフランスの10倍以上となっています。

2018年の韓国国内メンズコスメの市場規模は、1兆2800億ウォン(約1,186億円)と言われています。

驚くべきなのは、日本ではスキンケア商品が圧倒的に売れている一方で、韓国では「メイクアップ商品の売上が急成長している」点です。H&Bストアの「オリーブヤング」では、前年に比べ、男性向けメイクアップの売上が76%増加し、中でもリップケア商品は前年比約21倍と急増したそうです。

LAKA

LAKAイメージ

https://en.laka.co.kr/

2018年5月にスタートした韓国初、ジェンダーレスを打ち出す「LAKA」は、韓国で男女から指示されているブランドです。発売からわずか1年で急速に高まり、2019年9月に発売された「ジャストアイパレット」は、2週間で初回販売分が完売となりました。

BULK HOMME(バルクオム)

BULKHOMMEイメージ

https://customlife-media.jp/bulkhomme-effect

男性向けスキンケアのスタートアップブランドであるBULK HOMMEは、2020年7月~8月の売上が前年同月比で約200%以上となりました。同社は、「メンズスキンケアのハイクラス部門」において売上が首位であることを発表しています。

メンズスキンケアハイクラス部門ブランド売上Share

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000029463.html

男性用化粧品は実際の成分は女性用とあまり変わりませんが、販売が見込めるロット数の関係から、女性向け商品よりも価格が高くなる傾向が事業者にとってのデメリットとなっていました。しかしBULK HOMMEのブランドは女性向け化粧品の延長線上ではなく、「男性のために作られたブランド」ということを強調し、このブランドイメージがユーザーの心を掴みました。

男性用化粧品ポジショニング

https://manamina.valuesccg.com/articles/1026

今回の売上急成長の背景にあるのは「コロナ渦における新しい生活様式の導入」「在宅時間の増加」です。この好機を今後の市場拡大につなげるために、2020年9月、同社は丸井グループ、きらぼしキャピタルなどからの融資総額約15億円の資金調達し、今後はまだメンズスキンケアの伸びしろの大きいアジア市場に乗り出す意向を示しています。

中国の男性化粧品の動向

ニベア花王は、日本・中国・アメリカ・ヨーロッパの20~59歳の男性を対象にし、「ビジネスと男性スキンア」に関する調査を実施しました。この調査結果では、中国の男性が最も意識が高いということが示されています。

ニベア花王男性用化粧品市場調査

https://womanslabo.com/world-191218-2

中国中央テレビのニュースでは、2016年の男性ユーザーのうち「絶対に化粧品を使わない」とした人は3割だったが、2019年にこの3割が「3分の2減少している」と報道されており、男性にとって化粧品が年々身近なものになっていることが分かります。

中国の男性用化粧品市場は2023年に5400億元にまで達すると言われていますが、なぜここまで男性向けの化粧品が人気なのでしょうか。理由は下記の2つが挙げられます。

若年層の男性がTikTokに影響を受けている

メイクに興味を示す若い男性「メイク男子」が増加傾向にあるのは、生活に不自由することなく育った一人っ子世代の男子の中で、動画投稿アプリTikTokを使って化粧をして撮影・投稿することが流行っているようです。

女性の男性に求める条件がここ最近変化している

1990年代以降に生まれた女性の男性に求める条件が変わりつつあることが中国の調査会社で分かっています。

「恋愛や結婚する相手に求める条件」について聞いたところ、かつては「高い収入」などの経済的な条件を上げる女性が多い傾向にありましたが、現在1位は「容姿」となっているそうです。

タイの男性化粧品の動向

タイ人には「色白=お金持ち」というイメージが浸透しています。タイ人に比べ色白である華僑の人々は東南アジアで事業を起こし財をなしていることや、お金持ちは屋外で仕事をしないから日焼けしないことからこのようなイメージが作られていったのでしょう。

そのため「お金持ちに見られたい」「お金持ちに見られて女性に好かれたい」という欲求を持っている男性は肌に気を遣うことに抵抗がないようです。

タイの化粧品市場規模推移

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2020/c5fa6dbdacf93ba8/JTR_Cosme_2020.pdf

タイの男性用化粧品市場規模は 2013 年では 109 億 9,200 万バーツ、2018 年には 148

億7,400万バーツへと35.3%も拡大ししました。その中でもスキンケアとヘアケアがそれぞれ20~30%を占めており、特に2000 年以降は「ニベア」や「ロレアル」などのグローバルブランドがドラッグストアに並ぶようになりました。

2020年現在、タイで最も人気コスメブランドは「シーチャン」で、老若男女問わず人気があり、5年半で累計500万個以上も売り上げるロングセラー商品となっています。

シーチェン
シーチェン2

https://be-story.jp/article/31953

インドネシアの男性化粧品の動向

インドネシアでは日本の男性向け化粧品ブランド「ギャツビー」が大成功を収めた国で、完全に現地に根付き、首都ジャカルタでのブランドの認知度はほぼ100%と言われています。

男性化粧品市場の中のヘアスタイリング剤市場が確立される以前から参入したことで先駆者メリットを得ました。市場定着が図れたというのは「間違いなくニーズがあったから」と同社担当者は当時について述べています。

日本人の肌マネジメントは世界最下位

https://www.syogyo.jp/news/2018/05/post_021224

リッチメディアは、2018年2月、世界9カ国(アメリカ、欧州、中国、タイ、インドネシア、日本など)の都市に住む20~30代ビジネスマンを対象に、「仕事と見た目に関する比較調査」を行いました。

その際に分かったことは、「社会人としてふさわしくありたい」「成功しているように見られたい」と答えたインドネシア人男性が多く、ビジネスシーンでスキンケアを重視する傾向にあるようです。

最後に

日本において、男性化粧品市場の成長は全体的にはまだまだ緩やかな伸びとなっている状況です。韓国や中国に比べると、日本人男性はスキンケアへの意識は上がってはいるものの、ファンデーションなどのメイクをする光景はほとんど見られません。しかし、世界がジェンダーニュートラルな時代にシフトしていく中、日本人男性のスキンケアやメイクへの意識が高まることが予想されます。今後男性用化粧品の市場はますます成長が期待できるでしょう。

<参考>
https://zoorel.elephantstone.net/archive/3768/

https://www.criteo.com/jp/blog/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%81%A7%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BE%8E%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%82%82%E5%90%91%E4%B8%8A%EF%BC%9F%E7%94%B7%E6%80%A7%E7%94%A8%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E5%B8%82%E5%A0%B4/

https://www.news24.jp/articles/2020/10/23/06747121.html

https://www.mandom.co.jp/ir/investors_strength.html

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000349.000012002.html

http://tnc-trend.jp/korea27/

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52350760Z11C19A1FFJ000?unlock=1

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/150819/mcb1508190500004-n3.htm

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2018/12/post-11478_2.php

https://spydergrp.com/columns/global/1670/

https://warpaintformen.jp/blogs/journal/more-men-wear-makeup-than-you-think-here-s-why

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