アフリカ大陸の北西端に位置するモロッコ。
名前は知っていても、いざそのイメージを思い描こうとするとピンとこない。日本人にはあまり馴染みがない国の1つでしょう。
この漠然とした「馴染みのなさ」は、海外進出時においても一つの障壁となり得ます。
今回は、モロッコという国を通じてみえてきた、海外進出における“食わず嫌い”について考えたいと思います。
ヨーロッパとアフリカをつなぐ国・モロッコ
人口約3,500万人、日本の約1.2倍(西サハラを含めると約2倍)の国土を誇るモロッコ。
公用語のアラビア語とベルベル語に加え、かつてフランスの統治国だった背景からフランス語が広く使われています。フランス企業の進出も多く、現在もフランスの影響を大きく受けて成長している国です。
モロッコ北西部は大西洋と地中海に面し、ジブラルタル海峡を挟んで目と鼻の先にヨーロッパ大陸があります。北端にある都市・タンジェは、古くからヨーロッパとアフリカをつなぐ重要な玄関口です。
こうしたロケーションから、モロッコはヨーロッパやアラブ、アフリカなどの異なる文化が交差する場所となっており、その独特の文化は観光客にも人気があります。
現地、それも商業都市であるカサブランカで見かける日本人のほとんどは観光客で、ビジネスの場や一般生活に日本人がいる光景は非常に珍しいものとして現地人の目に映るようです。
日本人にとってのモロッコはあくまで観光地であり、経済活動をする場所としては捉えられていないのが現状です。
ヨーロッパに進出している日本企業の視線の先
地理的条件を考えれば、ヨーロッパに進出している日本企業が次の進出先候補としてモロッコを視野に入れてもおかしくはありません。にも拘わらず、日本企業の視線の先にあるのは多くの場合、ロシアや東ヨーロッパです。
アフリカ大陸に目を向けたとしても、北アフリカを飛び越えて南アフリカの市場規模や発展性に魅力を感じる企業の方が多いでしょう。
しかし、モロッコの経済成長率は1997年以降プラス成長を続けており、南アフリカに比べればヨーロッパからのアクセスもはるかに優れています。
それでもモロッコが視線の先から外れてしまう原因の1つは、物理的距離よりも先ほど述べた「馴染みのなさ」という心理的距離が影響しているのではないのでしょうか。
そこにあるのは未知のものに対する恐怖や躊躇、いわば“食わず嫌い”です。
“食わず嫌い国”へ踏み出す第一歩
進出先を選ぶ際、知らず知らずのうちに“食わず嫌い”によって自ら視界を狭めてはいないでしょうか?
こうした未知のものに対する消極的な姿勢は、日本人の保守的な性質も影響しているのかもしれません。
また、モロッコ進出については言語面の問題もあります。特に識字率が低いアフリカの場合、言葉の壁はさらに大きくなります。
ヨーロッパの言語の中には、イタリア語とスペイン語、オランダ語とドイツ語のように似ている言語も多いです。
フランス語が広く使われているモロッコにおいて、フランス企業が多く進出している現状は当然の結果と言えるでしょう。
モロッコに限らず、こうした言語の壁や心理的なハードルから“食わず嫌い”されている国も少なくないはずです。
しかし、当然ながら実際に食べて見なければその味は分かりません。
日本人に馴染みの薄い“食わず嫌い国”にこそ、まだ見ぬ魅力が隠れているのではないでしょうか。