皆さんは家電を購入する際、何を参考にしていますか?「価格.com」のような価格比較サイトでしょうか。それとも家電量販店のサイトでしょうか。Amazonのユーザーレビューを参考にしている人も多いと思います。
今回は、ヨーロッパの消費者が家電を購入する際に何を参考にしているのか、またどういった基準で商品を選んでいるのかについて、現地調査の結果を元にお伝えしていきます。
ヨーロッパの消費者は何を参考に商品を選ぶのか
今回訪れたのはイギリス(ロンドン)、ドイツ(フランクフルト)、フランス(パリ)の3ヵ国です。
ドイツとフランスでは家電量販店に、そしてイギリスではデパートで家電を購入する人も多いため、デパートと家電量販店でヒアリングを行いました。
現地で話を聞いてみると、ほとんどの人が日本と同じく事前にインターネットなどで情報収集をしてから店舗に足を運んでいるようです。
情報収集の方法はさまざまですが、大きく分けるとGoogleなどで気になるメーカーや検討中の商品について検索する人と、お気に入りのサイトを使って調べる人の2パターンとなっていました。
ここで、ヨーロッパの消費者が実際に利用している主なサイトをご紹介します。
イギリス
What HI-FI?
イギリスで最も権威あるオーディオ誌「WHAT HI-FI?」のサイト。同誌はその評価の厳しさから、ヨーロッパやアジア各国において絶大な影響力を誇っています。
TechRadar
イギリスの家電情報サイト「TechRadar」。スマートフォンやタブレット端末といったガジェット系家電を中心に、製品レビューやコラムなどを掲載しています。
AV Forum
「AV Forum」では、AV機器のレビューをはじめ、テレビ番組や映画に関する記事なども幅広く取り扱っています。「Yahoo!知恵袋」のようにユーザー同士が質問し合うコミュニティも人気です。
T3
「T3」は月間150万人のユーザーが利用しているイギリスの人気サイト。家電をはじめ、旅行グッズやアウトドア製品などライフスタイル全般の情報を扱っています。
Which?
イギリスの商品テスト誌「Which?」のサイト。約60年の歴史を誇る同誌は、イギリス国民から強い信頼を得ています。
ドイツ
TEST
ドイツを代表する商品テスト誌「TEST」のサイト。同誌はドイツ政府からも出資を受けており、国内だけでなくヨーロッパ各国において社会的な影響力を持つといわれています。
Geizhals
ドイツの価格比較サイト「Geizhals」。日本の「価格.com」と同じく、製品ごとに家電量販店やネットショップでの販売価格を比較し、ユーザーからの口コミなどを掲載しています。
Computer Bild
1996年に創刊されたドイツのIT誌「Computer Bild」のサイト。同誌はドイツ国内をはじめロシアでも人気があり、ヨーロッパ最大の発行部数を誇るコンピューター専門誌とされています。
idealo
ドイツの価格比較サイト「idealo」。家電だけでなく、旅費やホテル宿泊費の価格比較なども行っています。
フランス
Les Numériques
https://www.lesnumeriques.com/
フランスのITメディアサイト「Les Numériques」。ガジェット系の家電を中心に、製品レビューやコラムなどを掲載しています。
LCD-Compare
「LCD-Compare」はテレビや周辺機器を中心としたフランス版の価格比較サイト。製品ごとに詳細なスペックやユーザーレビューなどを掲載しています。
ヨーロッパの家電購入における特徴
多くの人がこういったサイトを利用し、商品をある程度絞り込んでから店舗を訪れています。
ここまでの行動は日本の消費者と変わりないですが、ヨーロッパの場合は実際に店舗で商品を見た後、もう一度持ち帰って検討するという人が多く見られました。
ヨーロッパではモノを長く使う文化が根付いていることもあり、日本やアメリカに比べて買い替えには慎重なようです。そのため、じっくりと悩んでから結論を出す人が多く、購入決定までの期間が日本の消費者に比べてやや長い傾向にあります。
特にドイツとフランスはその傾向が顕著で、中には何年も家電の買い替えについて悩んでいるという人もいました。
商品を購入する際の基準としては、イギリスでは商品テストの文化が発達しているため、テスト誌やユーザーのレビューが大きな判断材料となるようです。
また、環境大国として知られるドイツでは省エネやエコといった観点から商品を選択する人が多く、家電選びにおいても環境意識の高さが表れる結果となりました。
国民性よりも個人に目を向けたマーケティングを
こうした判断基準には多少の差があったものの、購入に至るまでの過程に国民性の違いはほとんどなく、消費者個人間の差が大きいことがわかりました。
単純な消費者の場合、店舗での販売面積が大きい商品や店員がおすすめする商品をそのまま「良い商品である」と認識してしまい、あまり深く考えずに購入しているケースも見られました。
また、インターネットで商品を購入する人の中には事前に商品を見ることもなく、数字で表せるデータだけを比較して購入する人もいるようです。
しかし、ヨーロッパのどの国においても賢い消費者は事前の情報収集を怠らず、ブランドへの単純な愛着よりもその時代におけるプレゼンスをきちんと見極めて購入に至っています。
そういった点では、ブランド名や流行に踊らされにくいスマートコンシューマーが多いと言えるでしょう。
今回の調査であらためて感じたのは、海外に商品を展開する際、消費者を国民性だけで捉えるマスマーケティングはもはや通用しないということです。
今後は消費者セグメントごとの実態やニーズを把握し、よりターゲットを絞ったマーケティングを行っていく必要があるのではないでしょうか。