ヨーロッパの主要国において日本食が一つのトレンドとなったのはそれほど新しいニュースでもないですが、ロンドンに10年以上住んでいる弊社社員の知人から「この2、3年で日本の抹茶カフェが人気を得ている」との話を聞き、実際に店舗を訪問してみました。
今回は、ロンドンで抹茶ブームを牽引している2カ所のお店をご紹介します。
①Tsujiri
辻利は日本人なら誰でも知っている京都宇治のお茶専門店ですが、その老舗の辻利が2016年4月にロンドンのSOHOエリアに店舗をオープンしました。
それまでも海外に数店舗を展開していたようですが、ヨーロッパは初上陸のようです。
ローカルの人や観光客が多い場所にある少し狭めの店舗はいつもお客さんで賑わっており、その人気を実感することができます。
Tsujiriは現在、日本の上質な抹茶を利用したドリンクやデザート(抹茶アイス、パフェ)が食べられることから、SNSやブログ、ネットメディアでも多数掲載されており、SOHOエリアの有名店の一つとなっています。
そのため、ローカルの人にはもちろん、特にアジアからの観光客(中国、台湾、韓国など)の女性にも人気を得ていることは面白い点でした。
イギリスのロンドンまで来て、日本発の抹茶専門カフェでデザートを食べようと並んでいる光景は、なんだか新鮮で面白く感じます。
ロンドンは、さまざまな国のおいしい料理店が多いことでも有名です。
イギリスの代表的なメニューであるフィッシュアンドチップスより、インドカレー、中華、タイ料理、ベトナム料理など、他国の料理の方が遥かに美味しかったという話もあります。これもロンドンのインターナショナルさを表す一面ではないかと思います。
また、Tsujiriの話に戻ると、海外の旅行情報口コミサイトであるトリップアドバイザーでも利用者から高評価を得ており、サイト内ではロンドンのデザートショップ409軒中、100位以内にランクインしているほどの人気店です。(2017年7月末基準)
実際に入店してみた感想としては、抹茶もアイスも日本で食べるのと同様に美味しかったので、とても満足しましたが、せっかくの初ヨーロッパ店舗であれば伝統的な茶道のイメージを連想させるような、もう少しゆったりとした空間にしてはどうだろうかと思う部分もありました。
しかし、よくよく考えると、SOHOエリアという特徴(観光客でいつも賑わっている)やコストを考慮すれば、今のような狭い店舗で長居しにくい椅子とテーブルの方が、お客さんの回転率をアップさせるには適しているのだと思います。
メニューも本格的な抹茶だけではなく、デザート感覚のアイス、パフェのメニューを充実させることにより、現地の若者にも違和感なく受け入れられることができたのかもしれません。
②Tombo
次はTsujiriとは少し違う魅力の抹茶+和食カフェ「Tombo」です。
Tomboは、高級住宅が立ち並ぶ富裕層エリアであるSouth Kensingtonに位置した、ロンドンで初めて和食・抹茶カフェをコンセプトにした店として知られています。
ヘルシーな日本の家庭料理と抹茶関連メニューにこだわっており、ローカルの人々の評価も高く、平日でも行列ができる店です。(オープン時期は定かではありませんが、2013年以前より店舗があったようです)
少し遅いランチを食べに訪問した時も、店内は満席で約30分程度待ってから奥の席へ案内されました。メニューを見たら、日本の定食メニューのような食事メニューも充実して、日本のお酒なども揃っていました。
ランチの時間帯を過ぎていたために、周辺は食事よりは抹茶ラテ、抹茶アイス、抹茶●●..といった、名前は分かりませんが、綺麗な抹茶の色をした数々のデザートメニューを食べている人々でいっぱいでした。
そして、隣のイギリス人のカップルのテーブルを見てびっくりしました。
2人で来ていたのですが、4つのメニューを頼んでおり、それもすべてが抹茶のデザートメニューだったのです。
(アイス、ラテ、パフェのような似ているものばかり)
幸せそうに写真を撮りながら抹茶デザートを堪能している様子を見て、現在、イギリスで抹茶ブームが起きているということを再認識しました。
もう一つ、Tsujiriとの差別化ポイントは、Bento boxというテイクアウトメニューもあることです。
入口の近くのカウンターにデパ地下のお総菜屋さんのようにガラスケースがあり、その中に弁当用のメニューが陳列されています。お客さんは好きなメニューを選んで自分だけのBento boxを作ることが出来ます。
実は、日本の弁当スタイルの外食チェーンではロンドン市内でよく見かけるWasabiという店も有名ですが、こちらはファストフード的な位置づけの店なので、上質さを追求するTomboとはターゲット層が異なります。
そして、Tomboは2016年6月に、「poke bowl」というハワイアンスタイルの刺身サラダと丼ぶりを合わせた新しいメニューを中心とした2号店、「Tombo, Poké and Matcha Bar」をTsujiriがあるSohoエリアに(歩いて5分距離のところに!)オープンしています。
今後、SohoエリアがMatchaの文化を発信する中心的なエリアになることも期待できるかもしれません。
最後に。
今ロンドンでホットな日本の抹茶。
実は、この現象はロンドンだけではなく、アジア各国を訪問する際にも感じることです。
多くのカフェではMatchaという固有名詞で抹茶を活用した色々なデザートメニューを見かけます。
そして、この記事では触れていませんが、和食や日本の文化、そのイメージを売りにしている店舗は、海外を訪問するたびに年々増えていることを肌で感じます。
今回は抹茶カフェをキーワードにヨーロッパにおける和食のブームについてご紹介しましたが、今後どのような展開になるのか。そのヒントなりえる店をもう一軒紹介しながら、今回のコラムを終えたいと思います。
ベルリンで人気の「アレ」を使ったハンバーガー
最近、日本でもハンバーガー専門店が増えていますよね。海外由来の有名なブランドのハンバーガーもあれば、色んな独特なメニューで勝負する日本のお店もたくさんあります。
今年の2月にベルリン出張に行った際、今、ベルリンで最もホットなハンバーガー屋さんTop10に入る店に行ってきました。その店の名は「Shiso Burger」
日本の薬味である「シソ」のShisoです。
日本人の方が経営しているお店で、従業員の方も日本人が多かったです。しかし、お客さんのほとんどがローカルの人(に見える西洋人)。
店名の通り、シソが入ったハンバーガーやさつま芋で作ったほくほくのフライド(スイート)ポテトなど、普通のバーガーレストランとは差別化されたメニューで高い人気を得ており、ネットメディアなどのベルリンを代表するバーガー屋さんの記事には必ず紹介される店です。(もちろん、普通のメニューもありますし、それもおいしかったです!)
シソが入ったハンバーガーとさつま芋のフライドポテト
Googleの口コミは740件以上、トリップアドバイザーでも700件以上のレビュー数を持ちながら、ベルリンにある8,508軒のレストランの内、80位以内にランクインしているほどです。
伝統的な和食ではなく、西洋の料理に日本らしい食材を加えてアレンジした食べ物を考案し、海外で勝負すること。
今後、またどのような形で日本の文化が次のブームを起こすことになるのか、その変化を見守ることがとても楽しみです。