ロンドン・上海から得られた次世代の「食」と「生活」の在り方

今回は、イギリス(ロンドン)と中国(上海)のライフスタイルに関するリサーチを基に、次世代の「食」と「生活」のあり方と、それに付随する産業の今後の可能性についてお話したいと思います。

それぞれの食文化の特徴

近年、特に先進国では、女性の社会進出などライフスタイルの変化により、とりわけ「食」に対する考え方にも変化が生まれています。
それは日本も同様で、時代の移り変わりによって「食」の在り方が多様化しているように感じます。後ほど詳しく説明しますが、共働きの家庭が増えることで、以前のように「かならず家に誰か(妻・母親など)がいて、食事を作ってくれる」というスタイルは、今では古いもの、もしくは少数派になっているのではないでしょうか。
ライフスタイルと食文化などがどのように移り変わっているのか、また近年のトレンドは何かというところを焦点に、ロンドンと上海、そして東京の三大都市に私が実際に足を運び、家庭訪問を通じてお話を伺ってきました。
色々な世代によっても結果は様々でしたが、国によって面白い結果が出ました。
というのも、今回調査したロンドンと上海で、双方ともに世界を代表する大都市ですが相反する特徴があることが判明したのです。

<ロンドンの食文化>

イギリス ロンドンの様子1
イギリス ロンドンの様子2

【ロンドンの様子】

まずロンドンの食文化の特徴として、
・自炊を行う家庭が多い
・作り置き文化(多めに作って翌日のお弁当につめる等)
・レディミール(※)への関心

※レディミール(READY MEAL)…チルドや冷凍保存され、電子レンジやオーブンで加熱するだけの調理済み食品のこと。

という結果が出ました。
その根本を探ると、イギリスは2016年にEU離脱を決定し、それまでのユーロからポンドに変化しました。これにより物価が高騰した影響で、外食ばかりしていては家計に大打撃ですので自炊の割合が比較的高いです。夜ご飯もわざと多めに作り、次の日のランチにとタッパーに詰めて翌日持っていく人も少なくありません。
また、イギリスの家庭にはオーブンが備わっていることがほとんどです。日本だと電子レンジで温めるレディミールがほとんどですが、ロンドンではオーブンで温めるレディーミール(コテージパイやローストチキンなど)も存在しレパートリーが大変豊富ですし、値段も外食するよりかは安く済ませることが出来ます。

<上海の食文化>

上海の様子

【上海の様子】

次に上海の食文化の特徴はというと、
・食べることに対する意識や欲が強い人が多い
・作り置きをせずに出来立ての料理を食べる(その場で食べられるだけの料理を作る)
・外食やデリバリーの利用頻度が高い

という結果でした。
もともとの文化的背景(食べ物へのこだわりが強いこと)と社会的要素(電子決済サービス、デリバリーの発達)という2つの要因によって、現在の上海の食トレンドが形成されています。デリバリーは値段も高くないので気軽に利用できるサービスとして、社会人世代を中心に頻繁に使用されています。スマートホンで簡単に決済ができ、賃金格差が大きい中国だからこその特徴です。上海においても日本のようにコンビニの店舗数が多くないことは、温かい出来立ての料理を求めてデリバリーや外食を利用する人の方が多いことが理由の一つかもしれないですね。

日本の食文化と比較して

日本の場合、「食」そのものへの関心というよりも、どちらかというと「食」に付随した物事への関心が高いように見受けられました。
シニア世代の場合ですと高齢化に伴い「健康」志向が高まっており、若い世代の場合ですと仕事が優先という考え方をしている方が多く、「食」に関する関心は二の次、もしくは「時短調理」という傾向が出ました。
若い世代の結果は上海での結果と共通点があり、やはり時短レシピの流行やネット・SNSの普及に伴い簡単にデリバリーできるアプリやネットで簡単に注文できて、食事を作る労力を他のことに回したいという、ある種現代の余裕のなさを感じました。
健康についての考え方も東京と他都市とで異なり、例えば日本では野菜や栄養バランスを考えて献立を考えたり、料理を作ったりという考え方が当たり前ですが、イギリス(ロンドン)では運動したり体を鍛えたりすることが「健康」であり、健康のために食生活を改善するという考え方は特に上海と比べると低い印象がありました。
そういった文化間の違いも垣間見え、それを踏まえて「これからのライフスタイル」に関する産業の可能性はどこにあるのか、というポイントが徐々に浮き彫りになってきたように思います。

現在の課題と「次世代」にむけて

上海 トマト卵麺
上海で食べたトマト卵麺
ロンドン ポークベリー
ロンドンで食べたポークベリー

私は「食」はその土地に根付いた文化だと考えています。社会的な要因で近年の食は以前のそれと比べて形を変えて来てはいますが、根本にある食への意識は各国それぞれ異なります。海外と接する機会が多い仕事をしていますので、自分とは異なる文化を持った人と商談を交わしたり、一緒にプロジェクトを進めて行く機会が多いです。
その際に、他人の文化や考え方を受け入れるのにわかりやすく目に見えやすいのは、やはり日本でも昔から言われている「衣・食・住」ではないかと思います。
ただ単に「食に関心がない」という結果を見るだけではなく、「仕事が忙しいので調理に時間が割けない」といった現代の社会的要因に起因するものと、「調理よりも運動に時間を割きたい」といったような個人のニーズを区分して整理する。そうすることで、世界をとりまく次世代の「衣・食・住」のライフスタイルはどこに向かっているのか、次世代にむけたトレンドをある程度推測でき、顧客のニーズにも応えられるのではなないではないでしょうか。

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