「東南アジア最貧国」と呼ばれて久しいミャンマー。しかし、近年では日本をはじめとする海外企業の進出が相次ぎ、その様相は徐々に変わりつつあります。
約5,200万人の人口を抱えるミャンマーは若年層が多く、地理的に見ても中国とインドの中間に位置していることから、市場としての将来的な成長が期待されています。
今回は、変容するミャンマーへの進出可能性について、現地の状況などを交えながらお伝えします。
<ミャンマーのインフラ事情に変化の兆し>
長らく軍事政権が続いていたミャンマーは2011年に民政移管を果たし、2016年3月にはアウンサン・スーチー国家顧問率いる新政権が発足しました。約半世紀ぶりに文民出身の大統領が誕生するなど、ミャンマーは今ようやく民主国家としての第一歩を踏み出しています。
しかし、長年にわたる軍事政権の支配によって、これまでミャンマーのインフラ整備は大幅に遅れを取ってきました。2016年時点のインフラ整備状況は、道路舗装率23%、電化率34%、水道普及率8%と周辺諸国に比べても低く、目下の課題となっています。特に電力不足は大きな問題となっており、主要都市のヤンゴンでも電化率78%、地方に至っては20%にも満たない状況です。
こうした背景から、これまで海外企業の進出先は電化率が比較的高い首都ネピドーやヤンゴン、そして日系企業が集中するティラワ工業団地といった一部の地域に限られていました。電力不足は現地の人だけでなく、ミャンマーへの進出を狙う企業にとってもネックになっているのです。
ところが、近年この状況にも変化の兆しが現れはじめました。
ミャンマー政府は2030年までに電化率100%達成という目標を打ち出し、発電所の建設や計画策定を急ピッチで進めています。これにより、電化率の低かった地方の活性化が期待され、主要都市以外の地域への進出可能性も広がりを見せています。
また、現在はミャンマーでは携帯電話の普及率も増加の一途を辿っています。
通信市場の自由化をきっかけとする海外企業の参入で、2013年には13%だった普及率が2017年には90%に達するなど、急速にインターネットをベースとして通信インフラが整いつつあるのです。
<都市化が進むミャンマーの街並>
インフラの充実に伴い、ミャンマーの街並も刻一刻と変化を見せています。
以前は路面店などの小売店舗が主流でしたが、ヤンゴンでは近年コンビニやスーパーマーケット、ショッピングモールといった大型店舗の建設が相次ぎ、市場はトラディショナルトレードからモダントレードへと変わりつつあります。
路面店ではいまだに商品が床に直置きされているものの、最近ではモダントレードの影響か、きちんと店内に商品が陳列されているところも見かけるようになりました。
ヤンゴン市内におけるショッピングモールと路面店の店頭
また、ミャンマーでは電力不足などの問題から家電の普及率も低く、食料品は多くの家庭で常温保存され、特に生鮮食料品は購入したその日中に食べ切るのが一般的な生活スタイルとなっています。
しかし、最近では電化率の上昇に伴って家電の需要も増え、冷凍・冷蔵品へのニーズが高まっていることから、今後はコールドチェーン物流の発展にも期待が集まっています。
食料品が並ぶ店頭
ミャンマーに足を運ぶたび、こうした市場の変化に伴って文化や生活スタイルそのものが洗練されつつある印象を受けます。
<現地で感じたビジネスのしやすさ>
最後に、日系企業におけるミャンマー進出の魅力的な側面をもう1つご紹介します。
ミャンマーは東南アジアの中でもタイと並ぶ親日国とされ、日本人を尊敬している人が多く、日本の文化に対しても理解が深いといわれています。実際に現地を訪れると、日本語を話せるビジネスマンの多さにも驚きます。
また、ミャンマー人の国民性は日本人によく似ており、「今ある環境が快適であればいい」という保守的な考えから、1つの企業に長く勤める人が多いといわれています。
どこか日本人に似た感覚を持っているミャンマー人は、性格がのんびりしていて仕事も丁寧な人が多く、親近感を覚えずにはいられません。
インフラの未整備などハード面での課題はあるものの、人と人とのつながりという面では、日本人にとってミャンマーはビジネスがしやすい国の1つといえます。
しかし、民政移管を果たしたとはいえ、まだまだ軍事政権時代の影響が色濃く残っていることも忘れてはなりません。
ミャンマー進出時には、そうした歴史や文化を深く理解した上でビジネスを進めていくことが成功の鍵となるでしょう。