
2025年のAPEC首脳会議は、10月31日と11月1日に韓国で開催されます。アジア太平洋地域の首脳や閣僚が集まり、幅広い課題について議論する予定です。ビジネス環境にも影響を及ぼす可能性があるため、注目すべきイベントの一つです。
合わせて米中首脳会談の開催も報じられており、実現すれば6年ぶりとなることから、国際社会の関心が一層高まっています。本記事では、APEC首脳会議の概要や主要議題、米中首脳会談の注目ポイント、日本企業への影響について解説します。
APEC首脳会議とは
APEC(アジア太平洋経済協力)は、アジア太平洋地域の国や地域を中心に構成される経済協力の枠組みです。毎年開催されるAPEC首脳会議では、加盟国の首脳や閣僚が一堂に会し、同地域や世界の様々な課題について議論します。まずはAPECの設立の目的、加盟国の構成、歴史について紹介します。
目的
APECは1989年に設立され、その目的は次のとおりです。
- アジア太平洋地域の成長と発展
- 自由貿易体制の推進
- 経済協力の推進
- 地域及び世界が直面する課題への対応
簡単に言えば、加盟国同士が経済協力を深めることで、地域全体の経済的利益を最大化することです。APEC首脳会議は、こうした目的を具体的な政策や行動へとつなげるための重要な場となっています。
加盟国
APECは21の国と地域が参加しています。加盟国の一覧は以下のとおりです。
| APEC加盟国一覧 | ||
| ・日本 ・韓国 ・米国 ・カナダ ・オーストラリア ・ニュージーランド ・ブルネイ | ・インドネシア ・マレーシア ・フィリピン ・シンガポール ・タイ ・中国 ・台湾 | ・香港 ・メキシコ ・パプアニューギニア ・チリ ・ロシア ・ベトナム ・ペルー |
このように、加盟国は太平洋を取り囲む形で広がり、巨大な経済圏を形成しています。
加盟国の総人口は約30億人で世界の36.9%を占め、輸入総額は12.2兆ドルと世界全体の49.5%に達します。さらに、GDPは56.9兆ドルにのぼり、世界の61.0%を占める規模です。こうした背景から、APECは国際経済に対して強い影響力があります。
参考:StatsAPEC
歴史
APECは1989年に設立され、当初は12か国でスタートしました。1993年には、当時のクリントン米大統領の提案により初のAPEC首脳会議が実現し、それ以降は毎年秋に開催されています。
1994年には「自由で開かれた貿易・投資」を掲げたボゴール宣言が採択され、以後も首脳会議や閣僚会議を通じて地域課題の解決に取り組んできました。具体的には、アジア通貨危機への対応、テロ対策、気候変動への取り組みなどが挙げられます。
このようにAPECは、アジア太平洋地域のみならず世界全体の持続的な成長を目指しています。
2025年APEC首脳会議の概要

2025年のAPEC首脳会議は、韓国の慶州(キョンジュ)で、10月31日と11月1日の2日間にわたり開催されます。慶州は韓国南東部に位置し、新羅の都として約1,000年にわたり栄えた古都です。市内には古墳や寺院、遺跡が点在し、その豊富な文化遺産から「屋根のない博物館」とも呼ばれています。
なお、2026年の開催国は中国です。
2025年APEC首脳会議の主要議題
2025年のAPEC首脳会議のテーマは「持続可能な未来の構築」です。その実現に向けて、3つの優先課題が主要議題として取り上げられます。
優先課題① 連結
優先課題の「連結」では、貿易や投資の促進、物理的・制度的な人的交流の強化について議論されます。具体的な内容は以下のとおりです。
- 予測可能な自由で安定した貿易・投資環境の促進
- サービス分野の貿易・投資の促進及び競争力の強化
- アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に係る議論の進展
- 持続可能なサプライチェーンの構築
- 構造改革の推進
- 新たなロードマップの策定(財務大臣プロセス)
- 人の交流の促進
- 連結性ブループリント(2015-2025)
引用:外務省経済局アジア太平洋経済協力室「2025年韓国APECのテーマと優先課題」
これらの議論を通じて、地域全体の連携の強化を目指しています。
優先課題② 革新
優先課題の「革新」では、地域間のデジタル格差の縮小、AI分野での協力について議論されます。具体的な内容は以下のとおりです。
- デジタル革新を実現させるための環境整備
- 持続可能な成長のためのデジタル技術の利用
- AIを含むデジタル技術の利用の拡大
AI活用に係る協力引用:外務省経済局アジア太平洋経済協力室「2025年韓国APECのテーマと優先課題」
これらの議論を通じて、デジタルイノベーションの促進を目指しています。
優先課題③ 繁栄
優先課題の「繁栄」では、世界的な課題について議論されます。具体的な内容は以下のとおりです。
- クリーンエネルギーへの移行の加速
- 食料供給システムの強化
- 持続可能な海洋の確保及び強靱性の向上
- アジア太平洋の未来のための投資
- 女性のエンパワーメントの推進
- 中小・零細企業支援・人材確保
- 公衆衛生に係る協力の強化
少子高齢化など人口動態の新たな課題引用:外務省経済局アジア太平洋経済協力室「2025年韓国APECのテーマと優先課題」
これらの議論を通じて、持続可能な成長と繁栄の実現を目指しています。
APECに合わせて米中首脳会談が開催予定

APEC首脳会議に合わせて米中首脳会談も開催される予定です。両国の関係は悪化しており、関税政策や合成麻薬の流入、台湾をめぐる緊張など、様々な課題を抱えています。実現すれば6年ぶりの開催で、こうした問題解決の糸口を探る機会として期待されています。
さらに、トランプ米大統領は来年初めに中国を訪問することも発表しました。両首脳が接近していることから、米中関係の改善に対する期待は一層高まっています。
日本企業への影響
2025年のAPEC首脳会議と米中首脳会談は、日本企業にとっても注目すべき重要なイベントです。ここでは、日本企業に与える影響について考察します。
サプライチェーンの再構築
優先課題「連結」の議論は、日本企業にとってサプライチェーンの安定化や効率化を進める絶好の機会となる可能性があります。自由貿易圏が広がれば、部品や原材料の調達ルートを多様化・最適化しやすくなるためです。このようなサプライチェーンの見直しは、リスク分散に貢献します。
デジタル技術やAI技術の利用拡大
優先課題「革新」の議論は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスを生む可能性があります。APECでデジタル技術やAIの活用が拡大すれば、半導体やクラウドサービス、AI関連の需要が高まることが期待されるためです。さらに、地域間のデジタル格差が縮小すれば、新興国への進出がしやすくなるという効果もあります。
サステナブルな取り組みの強化
優先課題「繁栄」の議論は、日本企業に持続可能な取り組みの強化を促す可能性があります。例えば、クリーンエネルギーの導入や女性が活躍できる職場環境の整備などが挙げられます。場合によっては、関連する法制度が改訂される可能性もあるため、議論の動向に注意が必要です。
米中首脳会談による影響
米中関係の悪化を背景に、半導体やAIなどの先端技術、エネルギー、サプライチェーンの再構築など、米中は経済面でも摩擦が生じています。会談の結果次第では、こうした対立が緩和され、日本企業に新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
2025年APEC首脳会議に注目しよう
2025年APEC首脳会議では、「連結」「革新」「繁栄」の3つの優先課題が議論されます。議論内容によっては、日本企業のビジネス環境にも影響します。また、並行して開催される米中首脳会談も世界経済の行方を左右する重要なイベントです。変化に迅速に対応するためにも、これらの動向に注目しましょう。