最もサステナブルなオリンピック!パリ2024の取り組みを解説

2024年7月26日~8月11日に、フランスのパリで夏季オリンピック(パリ2024)が開催されます。

先日のラグビーやバスケットボール、バレーボールなど、オリンピックの出場権をかけた戦いは大いに盛り上がりました。このように出場チーム・選手が続々と決まっており、パリ大会まで1年を切ったいま、開催を心待ちにしている方も多いでしょう。

一方で、これまでのオリンピックは環境の負荷が大きいと批判されることもありました。そこでパリ大会は持続可能な大会を目指しており、どのように実現するのかに注目が集まっています。

本記事ではパリ2024のビジョン、オリンピックと環境問題について解説します。

パリ2024のビジョン 

パリ2024はこれまでの大会のなかで、最もサステナブルな大会の実現を目指しています。その実現のために、以下の3つを柱とした持続可能性とレガシー戦略を策定しました。

①スポーツで結ばれた世界

②多様性

③環境保護

これらを実現するために、パリ2024で実施される取り組みを紹介します。

・競技施設の95%は既存・仮設の施設を利用

大会用の競技施設の建設を抑えることで、環境への負荷を抑え、大会後に施設が地域の負のレガシーになることを防ぎます。

・観客の移動手段は公共交通機関・自転車・徒歩のみ

大会のチケットを持っている観客は、パリの公共機関が使い放題です。

・大会中にパリを走行するバスはゼロエミッション車

ゼロエミッションとはCO2など廃棄物の排出をゼロにすることです。代表例は、バッテリーの充電で走行する電気自動車(EV)です。トヨタはパリ2024に、2,650台以上の電気自動車の提供を表明しています。

・競技施設の85%は、オリンピック村から30分で移動可能

選手の移動を最小限に抑えるだけではなく、移動にはゼロエミッション車が使われます。

またトヨタは水素を燃料とした電気で走るFCEV(MIRAI)を500台提供し、大会関係者・アスリート・ボランティアが使用する予定です。大会終了後はタクシーとして利用され、パリの持続的な社会の実現に貢献します。

・低炭素で環境に配慮した選手村

パリのオリンピック選手村は、低炭素で環境に配慮したデザインに加えて、100%再生利用エネルギーを使用します。

・パリはヨーロッパの中心に位置

多くの首都が鉄道や飛行機が3時間以内の距離にあることも、環境負荷を抑えるという点においてメリットです。

これらによりパリ2024では、二酸化炭素排出量をロンドン2012より55%削減することを目標に掲げています。

注目は、セーヌ川でのオリンピック開会式パレード 

オリンピックの見どころの1つは開会式です。国を挙げた盛大な式典を楽しみにしている方は多いでしょう。

パリ2024ではスタジアムではなく、パリ中心部のセーヌ川で開会式パレードが行われます。具体的には各国の代表団がボートでセーヌ川を6km移動し、トロカデロ広場前でフィナーレを迎える予定です。

ノートルダム大聖堂やルーヴル美術館、アレクサンドル3世橋などの名所を通過するため、見どころ満載のパレードになると期待されています。

最大の特徴は、一般の観客が無料で観覧できることです。セーヌ川の広い範囲で開会式を実施することで、60万人以上の観客が参加すると予想されています。※一部のエリアは有料となる予定です。

またパリ2024のスローガンは「Games wide open」で、日本語では広く開かれた大会を意味します。スローガンにふさわしい開会式パレードとなるでしょう。

オリンピックと環境問題 

近代オリンピックは1896年のアテネ大会が始まりです。100年以上経ったいまでは、世界最大のスポーツイベントに発展しています。

その証拠に前回大会の東京2020では、以下のように多くの国・地域から選手が参加しています。

東京2020オリンピック:206カ国から11,420人

東京2020パラリンピック:162カ国から4,403人

一方、このように大規模化したがゆえにオリンピックは問題も抱えています。

例えば東京2020の開催費用は、1兆4,328億円で当初予定していた約2倍の費用がかかり、多くの批判を招きました。これほど費用がかかる主な原因は、1万人以上の選手が宿泊する選手村の整備や移動手段の確保、競技会場の建設などが必要なためです。

また、巨額な費用以外にもオリンピックは多くの環境問題を抱えています。

・自然破壊

選手村や競技会場の建設、交通手段の道路整備による自然破壊は、オリンピックの大きな課題です。

・ゴミの廃棄

多くの選手や観光客が訪れることで大量のゴミが廃棄され、開催地の環境に対して大きな負荷を与えています。

・廃墟化

オリンピックのために作られた施設や設備が廃墟化してしまうことも珍しくありません。例えば1998年の長野オリンピックでは、ジャンプ台やアイスホッケー会場、ボブスレー会場などの施設を建設しました。しかし、現在では利用を休止している施設もあります。

自然を切り開いて建設し、大会後には負のレガシーとして地域に負担をかけるのもオリンピックの問題点です。

・食品ロス

東京2020では約13万食の弁当の廃棄が問題となりました。食品ロスは世界的な課題のなか、多くの食品ロスを出すことが問題視されています。

2012年のロンドンオリンピック「持続可能なオリンピック」

ロンドン2012はオリンピックの課題に対して、プラン段階から「サステナブル」を取り入れて課題の解決を図った大会です。具体的に二酸化炭素を50%削減する「低炭素五輪」を掲げ、再生可能エネルギーや低炭素コンクリートを活用しサステナブルな大会の実現に貢献しました。

パリ202では、そのロンドン2012より二酸化炭素排出量を55%削減するという高い目標を掲げています。

東京2020の脱炭素とパリ2024でのクライメット・ポジティブ 

東京2020ではサステナブルな取り組みがなかったのかといえば、そうではありません。この章では、東京2020とパリ2024のサステナブルな取り組みについて紹介します。

東京2020で取り組まれた脱炭素「カーボンフットプリント、オフセット 」

東京2020では、二酸化炭素の排出量実質ゼロを目標に掲げていました。その取り組みに、「カーボンフットプリント」と「カーボンオフセット」があります。

カーボンフットプリントとは、商品やサービスのライフサイクル全体で排出した二酸化炭素の排出量を算出することです。そしてカーボンオフセットとは、他の場所のCO2吸収量でCO2排出量を相殺する方法です。

東京2020ではカーボンフットプリントで、大会の二酸化炭素の排出量を可視化しました。加えて地元企業にカーボンオフセットの協力を依頼し、153事業者から目標を大幅に上回る418万トンのCO2吸収量が寄せられました。

そのうち346万トンを東京2020のカーボンオフセットに使用することで、二酸化炭素の排出量実質ゼロを達成しています。なお東京2020関連の二酸化炭素排出量は196万トンで、吸収量が排出量を大幅に上回る結果に終わっています。

※418万トンの吸収量のうち72万トンは、東京2020オリンピック&パラリンピックの開会式・閉会式の4日間の都内の二酸化炭素排出量をゼロにするプロジェクト「東京ゼロカーボン 4デイズ in 2020」で使用されました。

パリ2024で取り組まれる「クライメット・ポジティブ」 

パリは2015年にパリ協定が採択された都市です。それだけに、気候変動や環境問題の課題解決に対して積極的な姿勢を示しています。

具体的にパリ2024は、「クライメット・ポジティブ」に取り組みます。

クライメット・ポジティブとは、二酸化炭素の排出量ゼロではなく、吸収量が上回ることを目指すことです。つまり吸収量を増やして、温暖化の原因である二酸化炭素の量を減らそうとする考え方です。

パリ2024では二酸化炭素の排出量を減らす1つの象徴的な取り組みとして、競技会場へのペットボトルの持ち込みを禁止します。再利用可能カップを使用することで、ゴミ問題や環境汚染への課題解決にもつながると期待されています。

まとめ

オリンピックは世界最大のスポーツイベントとして、深刻化する環境問題への対応が求められています。持続可能な大会の実現を目指すパリ2024は、今後のオリンピックの指針になるかもしれません。たくさんのドラマが生まれるオリンピックだからこそ、これからの環境問題への取り組みにも注目したいところです。

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