海外進出先として、オーストラリアを検討している企業はいませんか?
オーストラリアは物価が高いことで知られ、その理由には特有の事情が関係しています。進出するのであれば、特有の事情について理解を深めておく必要があるでしょう。
本記事ではオーストラリアの物価が高い理由と、日本企業が進出する際のポイントについて紹介します。
オーストラリアはなぜ物価が高いか
そもそも「オーストラリアの物価はどれくらい高いの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
世界の都市における生活費のデータを収集している「Expatistan」によると、オーストラリアのシドニーは東京よりも37%も物価が高いとのことです。※2023年7月時点
なぜ、これほどオーストラリアの物価が高いのかといえば、以下の3つの理由が挙げられます。
- 輸送コストが高い
- 売り手間での競争が少ない
- 人件費が高い
これらの理由はオーストラリアの経済活動の背景を理解するのにも役立つので、海外進出を検討している企業はぜひ押さえておきましょう。
理由①輸送コストが高い
物価が高い理由に、輸送コストの高さが挙げられます。その主な要因は人口密度が低く、輸送効率が悪いためです。
オーストラリアは世界の6大陸の1つに数えられ、日本の20倍以上の広さがあるのに対して、人口は約2,500万人で日本の20%程度しかいません。そのため、オーストラリアの都市シドニーでも人口密度は1k㎡あたり431人で、東京23区の1万5,560人と比較すると圧倒的に少ないことがわかります。
出典:オーストラリア発見
また上記の人口密度の分布図からもわかるように、内陸部にほとんど人は住んでおらず、沿岸部に沿って都市が点在しています。
このような人口分布状況のため、商品が消費者に届くまでに膨大な輸送コストがかかり、物価を押し上げているのです。
理由②売り手間での競争が少ない
オーストラリアの物価が高い理由に、売り手間の競争の少なさが挙げられます。人口が少なく人口密度も低いため、そもそも会社や店の数が少なく、競争原理が働きにくいためです。
つまり、競合店が少ないので高値に設定しても消費者は購入せざるを得ず、販売側からすると価格を上げやすいのがオーストラリアの物価が高い要因といえます。
理由③人件費が高い
オーストラリアの物価が高い理由は、人件費が高いためです。
OECDの調査によると、2022年のオーストラリアの平均賃金が785万円、日本が547万円なので、日本よりも人件費が40%以上も高いことになります。※1米ドル=132円で算出
なぜこれほど人件費が高いかといえば、オーストラリアの最低賃金が高いためです。また2023年7月から時給21.28豪ドル、週給812.60豪ドルと、さらに引き上げられています。円に換算すると時給2,000円にもなります。※1豪ドル=94円で算出
日本で最も高く設定されている、東京の最低賃金でも1,072円です。このことからも、オーストラリアの人件費の高さがわかるでしょう。
日本企業が物価の高いオーストラリアに進出するメリット
日本企業がオーストラリアに進出するメリットは以下の3つです。
- 大手企業が少ない
- 経済成長が安定している
- 世界のテストマーケットである
物価の高さはデメリットとなり得るかもしれませんが、オーストラリアの市場には魅力もあります。進出を希望している企業は、メリットについても押さえておきましょう。
メリット①大手企業が少ない
日本企業がオーストラリアに進出するメリットは、大手企業が少ないため中小企業にチャンスがあることです。
先述したようにオーストラリアは人口が少なく、人件費も高いため大手企業が進出しにくい市場です。しかし、言い換えると大手企業が進出していないため、どの市場でも競合が少なくビジネスチャンスを掴める可能性があります。また、国策としてスモールビジネスを推進しているので、日本の中小企業にとっては魅力的な市場といえます。
メリット②経済成長が安定している
日本企業がオーストラリアに進出するメリットは、経済成長が安定して見込めることです。日本は人口減少が始まっていますが、オーストラリアは積極的に移民を受け入れることで、人口が増加しています。
また近年の実質GDP成長率の推移は以下のとおりです。
年度 | 実質GDP成長率 |
---|---|
2013年度 | +2.5% |
2014年度 | +2.2% |
2015年度 | +2.8% |
2016年度 | +2.3% |
2017年度 | +2.9% |
2018年度 | +2.2% |
2019年度 | -0.2% |
2020年度 | +1.4% |
コロナ禍による経済へのダメージにより、2019年度はマイナス成長になっているものの、その年以外は2%前後の成長を保っています。これらから今後も安定して経済成長すると見込まれており、今のうちに進出することで、将来より大きなビジネスに成長する可能性もあります。
メリット③世界のテストマーケットである
日本企業がオーストラリアに進出するメリットは、他地域への進出の参考にできることです。なぜなら、オーストラリアは欧州やアジア、北米など様々なルーツを持つ移民が暮らしているため、世界のテストマーケットといえるためです。
つまりオーストラリアにおける商品・サービスの反響を分析することで、海外進出のヒントを得られるでしょう。
日本企業がオーストラリアに進出する際に留意するポイント
ビジネスチャンスの多いオーストラリア市場ですが、進出する際は以下の3つのポイントに気をつける必要があります。
- 人件費が高い
- 物流コストが高い
- マーケット規模が大きくない
ポイント①人件費が高い
留意すべきポイントの1つ目は、人件費が高いことです。
オーストラリアの最低賃金は時給21.28豪ドル(日本円で約2,000円)で、平均賃金も日本より40%以上も高いため、現地に拠点を構える際には人件費を確保しておく必要があります。
ポイント②物流コストが高い
進出する際に留意すべき2つ目のポイントは、物流コストが高いことです。
オーストラリアは日本の約20倍の広さがあるため、物流コストを考慮したうえで拠点の場所を検討する必要があります。例えば、シドニーなら成田から飛行機で約9時間30分ですが、ケアンズなら約7時間30分です。このように、同じオーストラリアでも拠点を構える場所により、人の移動時間や物流コストが大きく変わってきます。
ポイント③マーケット規模が大きくない
オーストラリアのマーケット規模が大きくないことも留意すべき点です。
魅力的な市場といってもオーストラリアの人口は約2,500万人で、日本や中国、アメリカなどと比較するとマーケット規模は大きくありません。2022年の名目GDPランキングでは、1.7兆米ドルで12位でした。3位の日本が4.3兆米ドルであることから、日本の半分以下の市場規模といえます。
ただし、人口増加や安定した経済成長などから、今後もオーストラリアの市場規模が拡大すると予想され、魅力的な市場であることは間違いないでしょう。
まとめ
本記事ではオーストラリアの物価が高い理由と、日本企業がオーストラリアに進出するメリットについて紹介しました。
その中でも触れたように、オーストラリアは世界のテストマーケットであることから、海外進出を検討されている企業にとって注目すべき地域でしょう。
今後、オーストラリアなどに海外進出を検討している企業は、海外進出支援のプロであるProveにぜひご相談ください。