
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品の特許が切れた後に発売される同じ成分・効果を持つ医薬品です。先発医薬品よりも安く購入できることから、日本においては医療費の負担軽減につながることが認識されています。
実際に2023年9月の後発医薬品の使用割合は81.86%でした。
そこで今回は、後発医薬品メーカーのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの会社概要や業績、成長戦略を紹介します。
参考:厚生労働省「保険者別の後発医薬品の使用割合(令和5年9月診療分)を公表します」
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズとは

テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは、イスラエルに本社を置く後発医薬品メーカーです。deallabの「ジェネリック・後発医薬品業界の世界市場シェアの分析」によると、2020年の後発医薬品の市場シェアで世界1位を獲得しました。この章では、同社の会社概要・歴史・事業内容を紹介します。
会社概要
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Teva Pharmaceutical Industries Limited |
本社 | イスラエル |
設立 | 1901年 |
従業員数 | 37,851人(2023年末時点) |
医薬品数 | 3,600種類以上(2022年時点) |
売上高 | 約158億ドル(2023年) |
拠点 | 製造拠点:33カ国以上に53拠点(2022年時点) 研究開発拠点:世界中に27拠点(2022年時点) |
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは、日本にもすでに進出しています。具体的には、2016年に武田薬品工業株式会社と合弁会社を設立しました。合弁会社は武田テバファーマ株式会社と武田テバ薬品株式会社の2社で構成されています。
参考:武田テバ「武田テバについて」
歴史
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは1901年にエルサレムで設立し、当初は輸入医薬品を取り扱う卸売業でした。そして、1935年に製薬工場を開設して医薬品の製造を開始します。
1984年、アメリカでハッチ・ワックスマン法が可決され、同社の後発医薬品業界への参入の道が開かれました。ハッチ・ワックスマン法とは、薬品価格競争及び特許期間回復法の通称です。後発医薬品メーカーに簡略申請を認め、後発医薬品の許可承認過程が迅速化されました。
1985年にはアメリカのLemmon Pharmacal Companyを買収し、アメリカ進出の足掛かりを作りました。
1990年以降はアメリカとヨーロッパを中心に進出し、2000年には北米最大の後発医薬品メーカーに成長します。現在では世界最大の後発医薬品メーカーとなり、毎日世界中の約2億人に医薬品を提供しています。
事業内容
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは3,600種類以上の医薬品を販売しており、主な製品は後発医薬品です。2020年時点で同社は後発医薬品の研究開発に約10億ドル(約1,500億円)を投資し、1,160種類以上の後発医薬品の開発パイプラインを構築しています。※1ドル=150円換算
また毎年、約200種類の後発医薬品・バイオシミラー・その他の医薬品の臨床や研究を行い、ポートフォリオの強化を図っています。※バイオシミラーとはバイオ医薬品の後発医薬品のことです。
同社は後発医薬品以外に、中核治療領域(呼吸器、疼痛、片頭痛、運動障害、神経変性疾患、腫瘍)における治療薬の開発も行っています。さらに、市販薬(OTC治療薬)の開発も行っており、100以上のブランドを保有しています。
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの経営状況
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの直近6年間の売上高・営業利益は以下のとおりです。

出典:テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ「Quarterly Results」
2023年の売上高は約158億ドル(約2兆3,700億円)で、前年より約9億ドル(約1,350億円)の増加となりました。また、営業利益は約4億ドル(約600億円)で、前年の約22億ドル(約3,300億円)の赤字から大幅に回復しています。
直近6年間の推移を見ると営業利益が赤字の年が多く、苦戦を強いられているだけに2023年は業績が改善したと言えるでしょう。
事業別売上高の推移
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの事業は、北米事業・ヨーロッパ事業・国際市場事業に分類されています。この章では各事業の売上高から業績を考察します。
2023年の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ「Quarterly Results」
北米事業とヨーロッパ事業で全体の売上の8割を占めています。次に、各事業の売上高とセグメント利益の推移を紹介します。
North America Segment:北米事業
北米事業の進出先は、アメリカとカナダです。アメリカでは約500種類の後発医薬品を販売しています。北米事業の売上高・セグメント利益の推移は以下のとおりです。

出典:テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ「Quarterly Results」
2023年の売上高は約81億ドル(約1兆2,150億円)で、前年から約7億ドル(約1,050億円)の増加となりました。営業利益も約24億ドル(約3,600億円)で、こちらも前年と比べて増加しました。
Europe Segment:ヨーロッパ事業
ヨーロッパ市場事業の進出先はEUやイギリス、それ以外のヨーロッパ諸国です。売上高・セグメント利益の推移は以下のとおりです。

出典:テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ「Quarterly Results」
2023年の売上高は約48億ドル(約7,200億円)で、前年から約3億ドル(約450億円)の増加でした。営業利益は約15億ドル(約2,250億円)で、前年と同水準を維持しています。
International Markets Segment:国際市場事業
国際市場事業で対象となるのは、北米事業・ヨーロッパ事業の対象外の国や地域です。日本やオーストラリア、イスラエル、韓国、ブラジル、中国など35カ国以上あります。売上高・セグメント利益の推移は以下のとおりです。

出典:テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ「Quarterly Results」
2023年の売上高は約20億ドル(約3,000億円)で、前年と比較すると増加しました。しかし、セグメント利益は為替レート変動の影響を受けて減少しました。
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズの成長戦略
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは、「Pivot to Growth Strategy(成長戦略への転換)」を成長戦略として掲げています。
- 統合失調症・片頭痛・不随意運動などの患者を支援する。
- 喘息や関節リウマチなど、世界中で増加する疾患の治療法の開発に取り組むことでイノベーションを推進する。
- 後発医薬品メーカー大手の地位を維持し、世界中で手頃な価格の医薬品を提供する。
- ポートフォリオを最適化し、事業の成長に注力する。
まとめ
テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズは、イスラエルに本社を置く世界1位の後発医薬品メーカーです。近年、営業利益が赤字になることも多くありましたが、2023年には回復の傾向を見せています。同社は世界的な大企業で医薬品業界への影響も大きいため、今後の動向に注目しましょう。