世界4大産業用ロボットメーカーのABBはどんな会社?事業内容・業績

ABBは、世界4大産業用ロボットメーカーの1つで、モーターの分野においても世界1位を獲得しています。同社の現状や業績を知りたいビジネスパーソンに向けて、本記事ではABBの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

ABBはどんな会社?

出典:ABB Group

ABBはスイスに本社を置く電力関連や重電、重工業の大手企業です。ここでは同社の会社概要や歴史、事業内容について紹介します。

会社概要

ABBの会社概要は以下のとおりです。

会社名ABB Ltd.
本社スイス
設立1988年
従業員数107,900人(2023年)
進出地域100カ国以上
売上高332億ドル(2023年)

ABBは前進企業を含めると140年以上の歴史があり、電力関連製品や産業用ロボットなどに強みを持っています。

歴史

ABBの歴史は、1988年のASEAとBBCの合併が始まりです。

前身企業のASEAは、1883年に設立した企業で発電機や変圧器、モーター向けの三相交流を発明しました。1978年には世界初の産業用ロボットを開発しています。一方、BBCは、1891年に高圧電流を送電する企業として設立されました。1901年には欧州初の蒸気タービンを製造しています。

このような電力関連企業として歴史を持つ2社が合併したことで、ABBの設立当初の従業員数は16万人という規模でした。そして、1998年にはピッキング・パッキング産業向けに特化したロボットを開発し、現在では高速ロボットのピッキング・パッキング技術で世界をリードしています。※ピッキングは梱包するために倉庫内から商品を集めることで、パッキングは梱包のことです。

2015年には協働ロボット「YuMi®」を発表しています。「YuMi®」は協働型双腕ロボットで、人とロボットが安全に隣り合って作業することを実現します。

事業内容

ABBは4つの事業があり、それぞれの事業で取り扱っている製品は以下のとおりです。

・エレクトリフィケーション事業本部

電気自動車用充電インフラや低圧・高圧機器、UPS(無停電電源装置)、パワーコンディショニングなどの開発・販売をしています。※パワーコンディショニングとは、電力保護を目的とした電力調整装置のことです。

・モーション事業本部

主力製品として、モーターや発電機を開発・販売している事業です。同社はモーター分野において世界1位のシェアを獲得しています。

・プロセスオートメーション事業本部

様々な産業用の制御システムや計測・分析機器を開発・販売しています。

・ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部

産業用ロボットや協働ロボットの開発・販売をしている事業です。ロボティクス市場において世界2位を獲得しています。

ABBの経営状況

ABBの経営状況として、直近6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

2023年の売上高は、322億ドル(4兆8,300億円)で、2022年の294億ドル(4兆4,100億円)から28億ドル(4,200億円)の増加でした。2023年の営業利益は、49億ドル(7,350億円)で、2022年より16億ドル(2,400億円)増加しました。※1ドル=150円換算

2020年に落ち込んだものの、2021年以降は回復し、現在は好調を維持しています。また、地域別の売上高の推移は以下のとおりです。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

世界100カ国以上に進出し、各地域でバランスよく売り上げていることが分かります。なお、ビョルン・ローゼングレン最高経営責任者(CEO)によると、2023年はアメリカ、EU、中国でエネルギー効率と脱炭素化への投資が増加したとのことです。

参考:ABB Group「CEO interview

ABBの事業別売上高

ABBの経営状況を4つの事業からさらに深掘りします。まずは事業別売上高の構成割合です。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

次に、各事業の売上高とEBITAの推移を紹介します。※EBITAは、利息前・税引前・無形固定資産減価償却前の利益のこと。

エレクトリフィケーション事業本部

エレクトリフィケーション事業本部の直近6年間の売上高とEBITAの推移は、以下のとおりです。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

2023年の売上高は145億ドル(2兆1,750億円)で、2022年の136億ドル(2兆400億円)と比較すると、9億ドル(1,350億円)の増加となりました。EBITAについても2023年は29億ドル(4,350億円)で、2022年から6億ドル(900億円)増加しています。

エレクトリフィケーション事業本部は、売上高・EBITAが右肩上がりに増加しており、同社の成長を支えている事業と言えます。

モーション事業本部

モーション事業本部の直近6年間の売上高とEBITAの推移は、以下のとおりです。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

2023年の売上高は78億ドル(1兆1,700億円)で、2022年の67億ドル(1兆50億円)から11億ドル(1,650億円)の増加でした。2023年のEBITAは14億ドル(2,100億円)で、2022年から3億ドル(450億円)の増加でした。このように、2023年にモーション事業本部の売上高・EBITAは、急激に拡大しています。

プロセスオートメーション事業本部

プロセスオートメーション事業本部の直近6年間の売上高とEBITAの推移は、以下のとおりです。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

2023年の売上高は62億ドル(9,300億円)でした。2022年の60億ドル(9,000億円)から2億ドル(300億円)増加したものの、例年の水準を維持しています。

一方、2023年のEBITAは9億ドル(1,350億円)で、2022年から1億ドル(150億円)増加しました。EBITAについては直近6年間の中で、高い水準となっています。

ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部

ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部の直近6年間の売上高とEBITAの推移は、以下のとおりです。

出典:ABB Group「ABB Annual Reporting Suite

2023年度の売上高は36億ドル(5,400億円)で、2022年の31億ドル(4,650億円)から5億ドル(750億円)の増加でした。2023年のEBITAは5億ドルで、2022年より2億ドル増加しました。売上高・EBITAのどちらも2018年の水準に回復しています。

ABBの4つの成長目標

ABBは成長戦略として4つの成長目標を掲げています。

  • 将来的にはオペレーティングモデルの一貫性、成長の加速、継続的な改善に重点を置く
  • 長期比較可能収益成長率の目標を5~7%に引き上げ
  • オペレーショナルEBITAマージンの目標を16~19%に引き上げ
  • より野心的な2030年および2050年の科学的根拠に基づくネットゼロ目標

引用:ABB「ABBは Capital Markets Day 2023において、 新たな基準を設定

また、上記の目標に加えて、年間5から10件のボルトオン型M&Aによる中小企業の買収を目指しています。※ボルトオン型M&Aとは、既存事業と関係の深い企業に対して行う、シナジー効果を狙った買収のことです。

2024年の買収事例

  • Siemens社の中国の配線器具事業を買収
  • ソフトウェアサービスプロバイダであるMeshmind社のマジョリティを買収
  • 自律移動ロボット向けのAI対応3Dビジョンナビゲーション技術のリーディングプロバイダであるSevensense社を買収

このように2024年7月時点で、すでに2024年に入ってから6件の買収を実施しています。

積極的にM&AをするABBに注目

ABBは世界4大産業用ロボットメーカーの1つで、モーターの分野においても世界1位を獲得しているグローバル企業です。電力関連製品や産業用ロボットなどに強みを持っています。成長戦略として年間5から10件の中小企業の買収を目標に掲げており、業界再編の動きが活発化するかもしれません。そのため、今後の同社の動向に注目しましょう。

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