
株式会社村田製作所(以降は「村田製作所」と言います。)は、コンデンサに強みを持つ電子部品メーカーです。半世紀以上にわたりコンデンサ市場でトップの実績を誇っています。本記事では村田製作所の会社概要や業績、成長戦略について紹介します。
村田製作所とはどんな会社?

出典:村田製作所
村田製作所は主にコンデンサの開発・製造・販売を行う電子部品メーカーです。ここでは同社の会社概要や歴史、事業内容を紹介します。
会社概要
村田製作所の会社概要は以下のとおりです。
会社名 | 株式会社村田製作所 |
本社 | 京都府 |
創業 | 1944年10月 |
設立 | 1950年12月 |
従業員数 | 73,165人(2024年3月31日時点) |
海外関連会社 | 中華圏:20社 アジア・その他:15社 南北アメリカ:13社 ヨーロッパ:9社 |
売上高 | 1兆6,402億円(2024年3月期) |
村田製作所はdeallabの「コンデンサ・キャパシタ業界の世界市場シェアの分析」において、2021年のコンデンサ・キャパシタ業界の世界市場シェアと業界ランキングで世界1位を獲得しています。※キャパシタとは本来コンデンサと同じ意味ですが、コンデンサの中でも大容量のものを呼ぶ際に使われます。
歴史
1940年代、ラジオの民間放送が開始されたことによりコンデンサの需要が拡大しました。そのような時代背景の中、村田製作所は1944年に創業、1950年に設立します。
1950年代になると白黒テレビが普及し、電信電話市場が拡大します。さらに、1960年代になるとカラーテレビの放送が開始され、同社のセラミックフィルタがヒットしました。
1973年には、アメリカに生産子会社Murata Manufacturing Co., Inc.を設立し、生産体制のグローバル化に着手します。1988年にタイ、1994年に中国で生産・販売会社を設立し、さらなる生産体制の強化を図りました。
その後も海外進出を続け、2023年3月末時点で海外に57社の関連会社があります。
事業内容
村田製作所の事業内容は、ファンクショナルセラミックスをベースとした電子デバイスの開発・製造・販売です。※ファンクショナルセラミックスとは、電気的・磁気的・光学的特性を必要とする特殊な用途向けに作られたセラミックスのこと。
そして主力製品は、一時的に電流を蓄えたり、放出したりできる電子部品の積層セラミックコンデンサです。電子回路の電流を制御するために使用します。そのため、モバイル端末や家庭製品、自動車など身近なあらゆる製品に使われています。
コンデンサ以外の主力製品は、インダクタ(コイル)や表面波フィルタ(SAWフィルタ)などです。
インダクタは一般的にコイル状で、電子回路内の電気エネルギーの量が急増・あるいは急減するのを防ぐ電子部品です。交流成分のカットや電圧変換などに使用します。表面波フィルタは電波をキャッチするための電子部品で、アンテナの部品としてよく使われています。
村田製作所の経営状況
村田製作所の経営状況を売上高・営業利益の推移から考察します。直近6年間の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「財務ハイライト」
2023年度の売上高は1兆6,402億円で、前年から466億円の減少となりました。営業利益は2,154億円で、前年から825億円減少しています。
営業利益がこれほど大きく落ち込んだ要因は、円筒形リチウムイオン二次電池の設備等の減損損失として495億円を計上したためです。
同社は、リチウムイオン二次電池の需要拡大を見据えて増産投資を実施していました。しかし、コロナ禍の急激な需要増からの反動減により在庫調整が想定より長期化したことで、収益性が低下したとしています。※リチウムイオン二次電池は電気自動車やスマートフォンなどでよく使われるバッテリーのこと。
また、村田製作所の地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
村田製作所の主要な取引先の地域は中華圏で、売上高のおおよそ半分を占めています。また、日本での売上高は全体の7.7%のため、2023年度の海外売上比率は92.3%でした。
村田製作所の事業別売上高の推移
ここでは村田製作所の業績を深掘りするために、各事業の売上高に焦点を当てて解説します。まずは、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
次に、どの事業が業績に影響を与えているかを各事業の売上高の推移で確認します。なお、村田製作所は事業編成を2023年3月期に変更しており、その影響から各事業で紹介する売上高は2022年度以降となります。
コンデンサ
コンデンサ事業は、積層セラミックコンデンサの開発・製造・販売を行っている事業です。売上高の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
2023年度の売上高は7,535億円で、前年よりも147億円増加しています。コンデンサ事業の売上が増加した要因は、自動車やスマートフォン向けの積層セラミックコンデンサの需要が増えたためです。
コンデンサ事業においては、5Gや自動車の電装化により今後も部品の需要が増加するとしています。※5Gはモバイル通信規格の第5世代移動通信システムのことです。自動車の電装化はIoT化や運転支援システムの搭載などが該当します。
高周波・通信
高周波・通信は、主力製品として表面波フィルタや高周波モジュール、コネクティビティモジュールなどを取り扱っている事業です。※高周波モジュールは無線機器に欠かせないアナログ高周波回路を含む電子部品を指します。コネクティビティモジュールは様々な機器を無線で接続するための電子部品です。
高周波・通信事業の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
2023年度の売上高は4,401億円で、2年連続で売上高が減少しています。売上高が減少した要因は、スマートフォン向けやパソコン向けのコネクティビティモジュールの販売量が減少したためです。
インダクタ・EMIフィルタ
インダクタ・EMIフィルタ事業では、インダクタの開発・製造・販売を行っています。売上高の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
2023年度の売上高は1,803億円で、前年と比較して50億円の増加となりました。スマートフォンや自動車向けのインダクタの需要が増加したためです。
エナジー・パワー
エナジー・パワーは、主にリチウムイオン二次電池を開発・製造・販売している事業です。円筒タイプ・ラミネートタイプ・リチウム一次電池の小型タイプなどを取り扱っています。売上高の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
2023年度の売上高は1,644億円で、リチウムイオン二次電池の在庫調整の長期化により急激に減少しました。同社全体の業績にもマイナスの影響を与えています。
機能デバイス
機能デバイスは、各種センサを開発・製造・販売する事業です。売上高の推移は以下のとおりです。

参考:村田製作所「セグメント別売上高」
2023年度の売上高は907億円で、ほぼ前年と横ばいとなりました。自動車向けのセンサの需要が増加したものの、コンピュータやスマートフォン向けのセンサが減少しています。
村田製作所の成長戦略
村田製作所の「Vision2030(長期構想)」では、2つの成長戦略を掲げています。それぞれの内容は以下のとおりです。
1. 基盤事業の深化とビジネスモデルの進化
通信・モビリティ・環境・ウェルネスの事業機会において、新たな価値を創出することを目指しています。
2. 4つの経営変革の実行
以下の経営変革を実行することを成長戦略としています。
①社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営
事業や企業活動全体で社会課題に積極的に取り組み、競争力強化にもつなげていくこと。
②自律分散型の組織運営の実践
「自律性」「全体性」「進歩性」を兼ね備えた組織運営を目指すこと。
③仮説思考にもとづく変化対応型経営
将来起こり得ることに仮説を立てて備え、変化に柔軟に対応できる事業経営を実践すること。
④デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
全社DXの戦略推進組織を新設し、全体的なデジタル推進を加速すること。
参考:村田製作所「Vision2030(長期構想)」
村田製作所を参考に海外進出に挑戦しよう
村田製作所はコンデンサやインダクタを開発・製造・販売する電子部品メーカーです。海外売上比率が90%を超えており、海外進出に成功した日本企業の1つです。これから海外進出を検討している方は、村田製作所の歴史や成長戦略などを参考にしてみてはいかがでしょうか。