ニデック株式会社(以降は、「ニデック」と言います。)は、ゲーム機用モータ・プロジェクター用モータなど、数多くのモータで世界シェアNo.1を獲得している企業です。本記事ではニデックの会社概要や業績、中期戦略目標を紹介します。
ニデックとはどんな会社
出典:ニデック株式会社
ニデックは、モータの分野で日本を代表するメーカーです。ここでは、会社概要や歴史、事業内容を紹介します。
会社概要
ニデックの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | ニデック株式会社 |
本社 | 京都府 |
設立 | 1973年7月 |
拠点数 | アジア:198拠点 ヨーロッパ:87拠点 北米:33拠点 中南米:26拠点 中東・アフリカ:3拠点 |
従業員数 | 101,112人(2024年3月末時点) |
売上高 | 2兆3,482億円(2023年度) |
グループ会社数 | 347社 |
海外売上比率 | 83.7%(2023年度) |
歴史
ニデックの始まりは、1973年の日本電産株式会社の設立です。
創業当初は精密小型モータを製造・販売しており、早い段階から海外へ進出していました。具体的には1974年にアメリカ、1975年にアジアやヨーロッパ各国に代理店を置いています。
1975年にブラシレスDCモータを本格的に生産して以降、アメリカに現地法人を設立するなど、海外進出も本格化します。ブラシレスDCモータとは、駆動回路で電流を制御して回転子を回すモータです。機械的な接点がなく、部品の摩耗を抑えられるため、メンテナンス性に優れているのが特徴です。
出典:ニデック株式会社「ブラシレスDCモータとは」
また、同社は多くの企業を買収して事業を拡大しています。買収した企業の一例は以下のとおりです。
- 1984年:アメリカのトリン社の軸流ファン部門を買収
- 1991年:電源装置メーカーのパワーゼネラルを買収
- 1993年:真坂電子株式会社を買収
- 2000年:シーゲート社のタイのHDD用モータ工場を買収
- 2006年:フランスのヴァレオ社のMotors & Actuators事業を買収
- 2007年:シンガポールのブリリアント マニュファクチャリング社を買収
- 2015年:アメリカのモータドライブメーカーのKB Electronics, Inc.を買収
- 2019年:ドイツ・プレス機用周辺機器メーカーのズィステーメ・シュトイエ ルンゲン社を買収
- 2021年:日本の工作機械の三菱重工工作機械を買収
- 2022年:小型マシニングセンターのOKKを買収
2023年、日本電産株式会社はグローバルブランドの「NIDEC(ニデック)」に社名を変更し、現在に至ります。
事業内容
ニデックは超小型モータから超大型モータ、電子デバイス、電気自動車用部品など、数多くの製品を展開しています。特に、高効率・高機能のモータの開発・製造に強みがあります。世界シェアNo.1を獲得しているニデック製品の一例は、以下のとおりです。
- ブラシレスDCモータ
- HDD(ハードディスク)用モータ
- ゲーム機用ファンモータ
- プロジェクター用モータ
- 温水洗浄便座用ファンモータ
- IH圧力炊飯器用ファンモータ
- 携帯電話、スマートフォン用振動モータ 等
ニデックの経営状況
ニデックの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は2兆3,482億円で、2022年度の2兆2,428億円から1,054億円増加しました。2023年度の営業利益は1,631億円で、2022年度の1,000億円から大幅に増加しました。
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
日本の売上高の比率が16.3%であることから、ニデックの海外売上比率は83.7%であることが分かります。アメリカ・中国・ヨーロッパなど、主要地域への進出に成功しています。
ニデックの事業別売上高の推移
ニデックの経営状況を事業別の売上高から考察します。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
各事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。
家電・商業・産業用
家電・商業・産業用事業は、エアコン用モータや家庭用冷蔵庫用コンプレッサーなどを開発・販売している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は9,660億円で、2022年度の9,139億円から521億円の増加でした。2023年度の営業利益は1,148億円で、2022年度の708億円から大幅に伸びています。2023年度に事業が成長した要因として、発電機市場やクリーンエネルギー市場拡大の影響によるインフラ関連需要の拡大があげられます。
車載
車載事業は、電動オイルポンプや電気自動車用駆動モータシステムなどを開発・販売している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は5,809億円で、2022年度の5,196億円から613億円増加しました。しかし、2023年度の営業利益は311億円の赤字で、2年連続の赤字となりました。要因として、中国における電気自動車(EV)市場で極端な価格競争があげられます。
精密小型モータ
精密小型モータ事業は、HDD用モータや駆動用モータを開発・販売している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は4,156億円で、2022年度の4,253億円から97億円の減少となりました。一方、2023年度の営業利益は374億円で、2022年度の266億円から108億円の増加となりました。営業利益が改善した主な要因は、固定費の大幅な削減と販売価格の見直しがあげられます。
機器装置
機器装置事業は、ロボット用精密減速機などを開発・販売している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は2,994億円で、2022年度の2,964億円から30億円増加しました。一方、2023年度の営業利益は444億円で、2022年度の454億円から10億円減少しました。
電子・光学部品
電子・光学部品事業は、デジタルカメラ用シャッターなどを開発・販売している事業です。売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:ニデック株式会社「決算短信・決算説明資料」
2023年度の売上高は818億円で、2022年度の830億円から12億円減少しました。同様に、2023年度の営業利益は132億円で、2022年度の135億円から2億円減少しました。売上高と営業利益が減少しているものの、直近の6年間でみると高水準を維持しています。
ニデックの中期戦略目標
ニデックは成長戦略として、中期戦略目標「Vision 2025」を掲げています。「Vision 2025」の4つの目標は以下のとおりです。
- 2025年度に売上高4兆円を達成する
- 従業員一人当たりの売上高と営業利益を倍増する
- ROIC(投下資本利益率)を15%以上にする
- ESGで評価される企業になる
※ESGは、環境・社会・企業統治を考慮した活動や経営を指します。
さらに、同社は長期目標として2030年度の売上高10兆円の達成を掲げています。
ニデックを参考に海外進出しよう
ニデックは、モータを中心に様々な製品を展開しているメーカーです。ゲーム機用モータ・プロジェクター用モータなど、多くの製品で世界シェアNo.1を獲得しています。このように世界で活躍する企業に成長した大きな要因として、戦略的な企業買収が挙げられます。
海外進出を検討している方は、ニデックのように戦略的な企業買収による進出を目指してみてはいかがでしょうか。