Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.(読み方はティンイー・ホールディングで、以降「Tingyi」と言います。)は、飲料や即席麺を生産・販売している中国の大手メーカーです。代表的なブランドに康師傅(カンシーフ)があります。本記事ではTingyiの会社概要や業績、今後の展望について紹介します。
Tingyiとはどんな会社?
Tingyiは中国に本社を置く、飲料・即席麺のメーカーです。巨大な中国市場を背景に、成長を続けています。その証拠に、Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の即席めん会社ランキング時価総額TOP25」によると、即席麺会社の時価総額ランキングで世界3位でした。ここでは、同社の会社概要や歴史、事業内容を紹介します。
会社概要
Tingyiの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | 康師傅控股有限公司(カンシーフコウコーフウゲンシ) 英文社名:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp. |
本社 | 中国 |
設立 | 1991年 |
拠点数 | 営業所:348拠点 倉庫:303拠点 代理店:76,875店舗 直営店:217,087店舗 生産拠点:76拠点 |
従業員数 | 66,807人 |
売上高 | 804億元(2023年) |
なお、Tingyiは日本企業と関係の深い企業です。日本の即席麺メーカーのサンヨー食品はTingyiに出資しており、株の33.48%を保有しています。※サンヨー食品は、「サッポロ一番」ブランドを展開している企業です。
歴史
Tingyiは1991年に設立されました。そして、1992年には即席麺の製造を開始します。
1996年に飲料事業に参入し、2012年にはアメリカのペプシコの中国炭酸飲料部門を買収しました。※ペプシコは、「ペプシコーラ」で知られる飲料メーカーです。
2015年には、コーヒーチェーン大手のスターバックスと提携し、中国市場向けのスターバックス製品の製造・販売を担っています。
事業内容
Tingyiの事業内容は大きく分類すると、飲料事業と即席麺事業です。それぞれの主要製品を紹介します。
・飲料事業
出典:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「2023 Annual Report」
飲料事業の主要製品は、お茶・ジュース・水・炭酸飲料です。消費者の健康志向の高まりを受けて、近年では無糖茶や無糖炭酸飲料、無糖コーヒーなども販売しています。
・即席麺事業
出典:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「2023 Annual Report」
即席麺事業の主要製品は、カップ麺や袋麺です。味だけではなく、価格帯やサイズの異なる製品を多数展開しています。
Tingyiの経営状況
Tingyiの経営状況を確認するために、直近6年間の売上高と売上総利益の推移を紹介します。
参考:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「Annual Reports」
2023年の売上高は804億元(1兆6,080億円)で、2022年の787億元(1兆5,740億円)から17億元(340億円)の増加でした。同様に、2023年の売上総利益は244億元(4,880億円)で、2022年の228億元(4,560億円)から16億元(320億円)の増加でした。※1元=20円換算
売上高と売上総利益が右肩上がりに拡大しているため、同社は好調を維持していると言えます。
好調の主な要因は、ECサイト経由の売上の大幅な増加です。また、2023年の中国のGDPは前年比5.2%増で、消費財の小売総額は前年比7.2%増でした。このような中国経済の発展も同社の成長を後押ししています。
Tingyiの事業別売上高の推移
Tingyiの経営状況を事業別の売上高から深掘りします。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「Annual Reports」
飲料事業の売上高が全体に占める割合は63.3%で、即席麺事業は35.8%でした。この章では、各事業の売上高の推移を紹介します。
飲料事業
飲料事業の売上高の推移は以下のとおりです。
参考:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「Annual Reports」
2023年の売上高は509億元(1兆180億円)で、2022年の483億元(9,660億円)から26億元(520億円)増加しました。直近6年間でみると、売上高は右肩上がりに増加しており、2018年と2023年を比較すると1.4倍に拡大しています。
なお、飲料事業の2023年の売上総利益は163億元(3,260億円)でした。※2022年以前の売上総利益は不明です。
2023年の好調の要因は、お茶・ジュース・水・炭酸飲料の需要の増加です。
・2023年の主な取り組み
お茶部門は、若者のニーズへの対応や無糖・健康志向の高まりから、トロピカルフレーバーや無糖アイスティーを発売しました。炭酸飲料部門も同様に、無糖ペプシコーラの販促を強化しています。
このように消費者のニーズに応えることで、同事業は成長を続けていると言えます。
即席麺事業
即席麺事業の売上高の推移は以下のとおりです。
参考:Tingyi (Cayman Islands) Holding Corp.「Annual Reports」
2023年の売上高は287億元(5,740億円)で、2022年の296億元(5,920億円)から9億元(180億円)減少しました。2020年以降、即席麺事業の売上高は横ばいの状態です。なお、即席麺事業の2023年の売上総利益は77億元(1,540億円)でした。
・2023年の主な取り組み
中国の大手ECモール「天猫(Tmall)」とコラボレーションし、高価格帯の商品を販売しました。インターネット上に数百万のレビューが投稿され、大きな反響を呼んでいます。※天猫は、アリババグループが運営する中国最大のECモールです。
2024年の展望
Tingyiは2023年の年次報告書において、2024年の展望を以下のように掲げています。
2024年の中国は、経済発展が安定すると予想され、内需が拡大する見込みです。そこで、Tingyiは「統合」「改革」「発展」を柱に、さらなる事業の拡大・強化を図ります。具体的には、健康的な商品の提供や価格・味・サイズの多様化といった商品開発です。加えて、ブランディングや販売チャネルの強化への投資も継続します。
海外進出の1つとして資本提携を検討しよう
Tingyiは、飲料・即席麺を開発・販売している中国メーカーです。中国において知名度が高く、76,875店舗の代理店、217,087店舗の直営店による販売網を構築しています。大規模な販売網と中国経済の発展により、売上高804億元(1兆6,080億円)の大手企業に成長しています。
また、サンヨー食品は同社との資本提携により中国への進出に成功しました。このように、海外企業との資本提携は、海外進出方法の1つです。海外進出を検討している経営者様は、この機会に海外企業との資本提携を検討してみてはいかがでしょうか。