BYDは、2022年に電気自動車の販売数でテスラを抜いて世界1位を獲得しました。
日本には2023年1月に1号店がオープンしていますが、進出してから日も浅いため同社についてあまり知らない方もいるでしょう。
本記事では、電気自動車分野で活躍するBYDの会社概要や経営状況について詳しく解説します。
BYDとはどんな会社?
出典:BYDジャパン
BYDは中国に本社を置く自動車メーカーです。中国語では「比亜迪(ビーヤーディ)」と表記します。この章ではBYDについて詳しく知りたい方に向けて、会社概要・企業理念・事業内容を紹介します。
会社概要
BYDの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | 比亜迪股份有限公司 BYD COMPANY LIMITED |
本社 | 中国 |
設立 | 1995年2月 |
従業員数 | 29万人以上 |
海外拠点 | 世界に27支社 30カ所の生産工場 |
売上高 | 4,240億元(2022年) |
BYDは2023年の年間販売台数が300万台を超え、2年連続で新エネルギー車の分野で世界をリードしています。同社は電気自動車や新エネルギー車の普及に貢献し、2022年4月19日時点で107億kgの炭素排出量を削減しました。
同社は世界に30カ所以上の工業団地を有しており、70以上の国、400以上の都市に進出しています。日本においては2023年1月31日に正規ディーラー1号店をオープンさせ、電気自動車事業の進出を果たしています。
企業理念
BYDの企業理念は「Technological innovations for a better life」です。日本語に訳すと、「より良い暮らしを実現するための技術革新」となります。また、企業理念を実現するための中核的価値は以下の4つです。
- Excellence:実行力をもって夢を実現
- Passion:情熱をもって夢を実現
- Innovation:技術革新で夢を実現
- Pragmatism:社会と人々に寄与する夢を実現
これらの企業理念をもとに、消費者に寄り添った事業を展開することで急激な成長を遂げています。なお社名のBYDの由来は「Build Your Dream(あなたの夢をつくる)」で、企業理念や中核的価値とも合致しています。
事業内容
BYDは1995年にバッテリーメーカーとして創業し、グローバル展開で培った技術力・経験をもとに電気自動車事業に参入しました。現在は以下の4つの事業に注力しています。
・ITエレクトロニクス
BYDは、2023年にアメリカのジェイビルの中国における製造事業を買収しました。買収理由はスマホ部品の事業拡大です。世界の携帯電話の10台のうち2台にBYDのパーツが使われているといわれています。
・電気自動車
電気自動車をはじめとした、eモビリティの開発・販売を担う事業です。乗用車だけではなく、EVフォークリフトや大型電気バスなどを販売しています。
・新エネルギー
新エネルギー事業ではリチウムイオン電池や太陽電池、エネルギー貯蔵システムの技術開発を担っています。
・モノレール
本社に自社開発したモノレールが走っているほど、モノレールはBYDの主要事業の1つです。同事業では国内外向けにモノレールを建設しています。
BYDの電気自動車の歩み
出典:BYDジャパン
BYDの電気自動車に関する歴史を簡単にまとめると以下のとおりです。
1995年:バッテリーメーカーとして創業
2003年:中国国営の自動車企業を買収し自動車事業に参入
2008年:量産型プラグインハイブリッド自動車(PHV)を販売
2010年:電気自動車のクロスオーバー「e6」を販売
2022年:電気自動車の販売台数で世界1位を獲得
2023年:日本に進出し「BYD ATTO 3」を販売
BYDは2008年の参入から14年で世界1位を獲得しており、急激に市場でのシェアを拡大していることがわかります。
※プラグインハイブリッド自動車とは、エンジンと電気モーターの動力を持ち、外部電源からの充電可能な自動車のことです。
BYDの経営状況
BYDの直近の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BYD「Periodic reports」
BYDの売上高・営業利益は2022年に急激に拡大しています。売上高は4,240億元(8兆4,800億円)で前年比96%増、営業利益は166億元(3,332億円)で前年比445%増を達成しています。つまり、1年で売上高が約2倍に、営業利益が約5.4倍に拡大したのです。
※1元=20円換算
地域別でみると中国国内の売上が78.43%で、海外売上比率が21.57%でした。
参考:BYD「Periodic reports」
BYDの事業別売上高の推移
BYDの売上構成比率は電気自動車や二次電池を含む自動車関連事業が76.57%、携帯部品関連事業が23.30%でした。この章では2事業の売上高の推移を紹介し、現状について考察します。
自動車関連事業
BYDの自動車関連事業の売上高の推移は以下のとおりです。
参考:BYD「Periodic reports」
※BYDの主力事業である二次電池や太陽光発電製品は、2022年より決算上、自動車関連事業に含まれることになりました。
中国市場において、最も販売台数の多い自動車メーカーはBYDです。中国でBYDの電気自動車が人気の理由は、価格面での優位性に優れている点です。日本で販売されている電気自動車「BYD ドルフィン」についても、約350万円~400万円で、日本のEV自動車と比較しても安い設定になっています。
また、中国では「3060ダブルカーボン」と呼ばれる脱炭素政策があります。「3060ダブルカーボン」とは、2030年に二酸化炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指す政策のことです。この3060ダブルカーボンにより、太陽光発電産業も好調で、自動車関連事業の急激な成長につながっています。
携帯部品関連事業
参考:BYD「Periodic reports」
BYDの主力事業の1つは携帯部品関連事業です。携帯電話の筐体や部品などの製造・販売および組立サービスを担う事業です。携帯部品関連事業の売上高は年々上昇しており、世界の携帯電話の10台のうち2台はBYDのパーツが含まれているといわれています。
また、携帯部品関連事業のさらなる拡大を目指して、2023年にジェイビルの中国事業の一部を158億元で買収しています。
今後のBYDの成長戦略
BYDは中国国内で大きな成功を収めていますが、海外売上比率が21.57%と低いのが課題です。そのため、BYDの成長には海外進出がカギとなります。
日本への進出を果たした今、BYDの次のターゲットと考えられるのはアメリカです。アメリカ進出の足掛かりとして、メキシコに生産拠点の設置を検討しているとのことです。ただし米中関係の悪化といった政治リスクがあることから、BYDの本格的なアメリカ進出が実現するのか、それがいつになるのかに注目が集まっています。
また高級電気自動車の投入により、利益率の改善を図ることもBYDの成長戦略の1つです。
電気自動車分野で影響力を増すBYD
BYDは売上高が8兆円を超え、電気自動車販売数世界1位として存在感を増しています。2023年に日本に進出し、次はアメリカへの進出を狙っていると考えられています。今後はBYDの欧米への進出状況についても注目してみましょう。