インド進出の前に知っておきたいポイント3選! 

事業拡大で海外進出を検討されている人の中には、進出先についてのお悩みも多いことでしょう。インドは今後の経済成長や労働力の拡大が見込まれており、海外進出先として注目されている国です。 

海外進出を検討する際は、進出するにあたっての事前知識が必要です。本記事ではインドに焦点を当て、今後のインドの成長性やインド進出におけるメリット・デメリットについてご紹介します。 

また、インド進出を成功させるための「事前に知っておきたいポイント」についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。 

インド事情

まずはインドの基礎知識として、インドの概要や宗教事情、主力産業について解説していきます。 

インドの概要 

インドは南アジアに位置し、国土面積は日本の約8.8倍にあたる約328.7万km²です。この国土面積は世界第7位にあたり、パキスタンやネパール、中国などと隣接。人口は14億人を超え、2023年中には中国を抜いて第1位の人口になる見通しです。面積・人口ともに世界上位クラスのインドは、州により法律・民族・言語・宗教が大きく異なる多民族国家として知られています。 

また、インド人には親日家が多いといわれています。インドに行ったことがある人なら分かるかもしれませんが、日本人と判明すればたちまち好意的な態度を示してくれることもあるほど。日本人の「礼儀正しい姿」と、日本製品に対する「技術力と品質の高さ」が評価されています。インドでは「日本製品=高級品」といった思考をもたれる場合も多く、訪日旅行では日本製品がお土産に好まれる傾向にあります。 

インドの宗教事情 

インドは世界一の宗教国家で、人口の約8割がヒンドゥー教徒です。その他にはイスラム教徒、シーク教徒、キリスト教徒、ジャイナ教徒など多様な宗教が入り混じっています。 

インドの多様性は働き方にも影響しています。例えば、食文化が異なるため会社帰りは飲み屋に行くことなく、自宅で家族とお酒を飲む人が多いようです。多様な宗教を理解したうえで働く文化は、日本と違う部分だといえます。 

インドの主力産業 

インドの主要産業は、農業、工業、IT業です。 

インドは農業大国ともいわれており、農地面積は世界上位です。特に米、小麦、穀物類などは世界でもトップクラスの生産量を誇っています。 

また、工業にも力を入れており、インド政府はものづくり国家の実現を目指す「メイク・イン・インディア」のスローガンを掲げています。特に自動車産業の存在が高まりつつあり、経済成長による生活水準の向上と人口増加による自動車購買層の拡大から、今後さらなる発展が期待できるでしょう。 

近年、インドで急成長を遂げているのがIT産業です。インドは英語が広く共用語として使用されていることや、数学に強い傾向もあり、優秀な人材が増加傾向にあります。レベルの高い教育からなる優秀なエンジニアたちは多くの海外事業が目をつけており、インド人エンジニアのヘッドハンティングなども実施されています。 

インド経済最新情報 

インド進出を検討する際には、インドの経済情報を把握する必要があります。ここでは次の4項目について、最新の経済情報をご紹介します。 

  • 経済成長率 
  • 金利 
  • 為替相場 
  • 株式市場 

インドの経済成長率 

近年、インドは経済大国として注目されています。前年の実績をみてみると、2022年4〜6月期(2022年度第1四半期)の経済成長率は前年同期比13.5%と大幅な成長を遂げました。2022年7〜9月期(2022年度第2四半期)の経済成長率は、前年同期比6.3%と第1四半期の成長率を下回るものの、確実に数値を伸ばしています。2022年における名目GDP基準では世界5位に位置し、経済大国として成長している国といえます。 

国際通貨基金(IMF)が予想した2023年のインドの経済成長率は6.1%です。これは世界成長見通しの2.7%や、経済成長率トップクラスの米国(1.0%)や中国(4.4%)の見通しよりも高い値になります。 

また、モルガン・スタンレーとS&Pグローバルが2022年末に発表した見通しでは、インドが10年以内に日本とドイツを抜き、世界3位の経済大国になるといわれています。 

インドにおける金利 

2022年、インフレ率急上昇の影響を受け、インド準備銀行(中銀)は5会合連続で利上げを実施しました。5会合目となった2022年12月の金融政策決定会合(MPC)では、6.25%に利上げすることが決定。2023年以降は利上げペースが鈍るとの見方が強まっていますが、利上げの高止まりによる景気下振れリスクに注意が必要です。 

インド通貨ルピーの為替相場 

2022年、インド通貨ルピーの為替は下落傾向にありました。2022年10月には1ドル82ルピーを超え史上最安値を更新する結果に。しかし、インドは経済大国としてさらなる経済成長が見込まれているので、下降基調から反転する可能性もあるでしょう。 

インドの株式市場 

インド株式市場における株式指数には、「SENSEX」や「NIFTY50」などがあります。2022年、米国のインフレによる利上げなどを受けて世界的には厳しい環境が続いていましたが、その中でもインドの株価は上昇傾向にありました。2020年にはコロナショックによる影響で下落する場面もありましたが、長期的にみると上昇トレンドにあり、世界からも注目されています。 

インドの経済成長が期待されていることも、株式市場に優位に働いた要因といえるでしょう。また、IT産業の発展により「人材の質の高さ」が評価されているインドは、海外企業の投資先としても人気を集めています。 

インド進出におけるメリット 

経済大国として注目されているインドは、日本企業の海外進出先としても検討されることが多いです。ここではインドに進出した場合のメリットについてご紹介します。 

経済の成長力 

前述の通り、インドは今後も経済成長が見込まれ、世界3位の経済大国になるのも時間の問題です。現在世界2位を誇る中国は成長率の低下が見込まれており、今後はインドが中国を抜いて世界2位の経済大国になる可能性もあります。 

インドは将来性の見込める巨大なマーケットであり、海外進出先として魅力的であることはいうまでもありません。現に、日本企業がインドへ進出した成功事例も多数あります。 

人口増加と労働力の拡大 

近年、インドは人口ボーナス期にあり、人口増加と働き盛り世代の増加が見込まれています。インドの人口はすでに14億人を超えており、2023中には中国を抜いて世界1位となる見通しです。一人っ子政策などの効果もあり人口が減少しつつある中国と、2040年頃まで人口ボーナス期になると推測されているインドの人口差は今後広がりを見せることでしょう。 

社会を担う中核とされる生産年齢人口の比率でみると、インドの生産年齢人口は67%以上と極めて高く、14歳以下の人口でみても25%以上を占めています。今後も増加する豊富な労働力は、さらなる経済発展の要因としても注目されています。 

SEZ・特定の地域における優遇制度 

インドでは、経済特別区(SEZ )への優遇制度や特定の地域(州)における優遇制度があります。SEZとは、インドからの輸出・雇用の促進を目的に、一定要件を満たした場合に免税などの税制優遇が受けられる「みなし外国領域」のことです。SEZでは法人税や関税などに対する優遇措置が設けられています。 

また、各々の州において州内の工業団地に進出する企業に対し、独自の優遇措置を与えているケースもあります。 

インド進出におけるデメリット 

インド進出を検討するうえで、デメリットについても把握しておく必要があります。ここでは3つのデメリットについてそれぞれ解説します。 

不十分なインフラ整備 

インドの経済は高成長にあるものの、インフラ整備については未だに発展途上といえます。道路や鉄道などの輸送・移動手段の整備不足や、水道・電気等の生活まわりのインフラなども整備が不十分なので、進出企業における事前調査も必要不可欠です。例えば、物資や製品の輸送方法、自社の使用電力とインドの電力供給の差などについて調べておくことも大切です。場合によっては輸送方法の変更や自家発電の導入が必要となる可能性もあります。 

異文化間における障壁の可能性 

インドは多様な宗教や言語が入り交じる国であるため、多様性を受け入れた働き方が日常化されています。日本もダイバーシティが進んできているとはいえ、働き方のスタイルはインドと異なる部分があり、異文化障壁が発生する場合もあるでしょう。 

インドではたとえ勤務時間中であったとしても、宗教によっては1日に数回、決まった方角に向かって礼拝する場合もあります。また、食文化の違いにより、日本のような「飲み会」の文化もインドではあまりみられません。日本の企業の多くは多様な宗教や言語の違いといった異文化交流が社内で行われることが少ないため、多様性を受け入れる働き方についても考慮が必要といえるでしょう。 

インド進出の前に知っておきたいポイント3選 

インドに進出するにあたり、事前に知っておくべきポイントを3つご紹介します。インド特有の事業形態や文化を踏まえて、円滑なインド進出にお役立てください。 

インド進出における事業形態 

海外企業がインドに進出する場合の事業形態は、外国投資規制によって制限されています。ここでは主な進出形態である次の4つについてご紹介します。 

  • 会社(現地法人) 
  • 支店 
  • プロジェクトオフィス 
  • 駐在員事務所 

一般的な進出方法として現地法人の設立があります。最も活動内容の範囲が広い事業形態で、基本定款に定められている事業目的の範囲内であれば、自由な活動が認められていることが特徴です。新規法人を設立するだけではなく、既存のインド会社の株式を取得することにより、当該会社に出資することも可能です。 

支店は、インドの法令で定められている事業活動の範囲内であれば設立できます。商品の輸出入、専門的コンサルティング業務、ソフトウェアサービス、外資航空・船舶会社の業務などが可能です。支店設立にはインド国内で不動産を賃借することや、不動産を取得することが認められています。 

プロジェクトオフィスは、建設やインフラ整備等の特定のプロジェクトの遂行のためにだけ 

設立される事業拠点です。プロジェクト終了後は、すみやかにプロジェクトオフィスを閉鎖する必要があります。 

駐在員事務所は、インド国内における代表行為、輸出入の促進、国内外での技術上または財務上の提携の促進、コミュニケーション窓口業務が事業活動として認められています。オフィスとしての使用に不動産を賃借することは認められていますが、不動産を取得することは認められていません。 

カースト制度 

インド進出するうえで、カースト制度の理解が必要です。カースト制度とは、インドに古くから根付くヒンドゥー教における身分制度のことで、インドでは「ヴァルナ(種族)とジャーティ(生まれ)」と呼ばれています。 

カースト制度は、社会的階級として4つの区分にわけられる「ヴァルナ」に加え、世襲的な職業に結び付けられる「ジャーティ」によって身分が分かれています。ジャーティは生活において実感する場面が強く、内部での同族結婚の習慣があるなど、インドでは「日常生活におけるカースト」として扱われてきました。 

近年、インドではIT産業が急成長していると紹介しましたが、このIT産業こそカースト制度の影響を受けない新ジャンル職業として注目されています。今後は新職種の登場などによりカースト制度は緩和されていく見通しですが、古くからある身分制度が急になくなるわけではありません。カースト制度はインド人同士の問題なので、日本人との間でカーストについて問題になることは少ないと思われます。しかし、インド進出の際にはこのような異文化についても配慮する必要があるといえます。 

日本とのビジネス習慣の違い 

インド人は、行動優先型が多い傾向にあります。日本人は仕事を振られた場合に、まずはその仕事を受けられるかどうかの見通しを立てた上で返答する場合が多いですが、インド人はとりあえず行動に移すことが多いです。 

働くモチベーションにおいては、インド人は会社の利益のために働くのではなく、自分の成長や給料のために働いています。日本人は会社に対する所属意識が高い傾向にありますが、インド人は自分の成長のために働いているため、自分と働き方が合わないと感じた場合はすぐに転職する人も多いです。近年は日本でも転職が盛んになってきましたが、会社への所属意識により転職に踏み切れない人も多いでしょう。 

また、インド人は時間を正確に守らないことがあります。日本では時間を守ることは社会人として当たり前のマナーですが、インドではそもそも「必ず時間を守らなければいけない」といった感覚が日本ほどありません。その背景には、インドでは自動車文化による渋滞など、時間を守ろうとしても遅れてしまう要因が日本より多いこともあげられます。インド人と働く場合は、日本の常識を押し付けるだけではなく、その国の文化についても認識しておくとよいでしょう。 

まとめ 

本記事では、インド進出におけるメリット・デメリットや、進出前に知っておきたいことなどについて紹介しました。 

経済大国として急成長し、今後も労働人口の拡大が見込まれるインドは、海外進出を考えている事業者から注目されています。インド進出の際には、宗教の多様性やカースト制度の存在など、日本と異なる文化について配慮することも大切です。 

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