ベーシックインカムとは?仕組みやメリット・デメリットなどを解説! 

2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの方が仕事等を失って「生活困窮者」となりました。これをきっかけに、「ベーシックインカム」という制度が注目されています。内容を聞くと、「本当に可能なのか」と思うほど理想的なものですが、もちろん良いことばかりではありません。 

今回は、ベーシックインカムの仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。 

ベーシックインカムとは 

ベーシックインカムとは、世界的に導入が議論されている制度の一つです。国が、国民一人ひとりに対して、性別や年齢などあらゆるものに制限されることなく生活に必要な現金を定期的かつ継続的に支給することで、国民の生活を支えます。 

全国民を対象として支給されるものであり、収入の増減等に関係なく支給されるものであるため、「お金に困って生活できない」というようなことや「お金がないから子どもを諦めている」ということに対応できると考えられています。 

公的扶助(生活保護)との違い 

現在の日本における社会保障制度としては、「生活保護」があります。生活保護は、経済的に困窮する人々が最低限の生活を営むための制度ですが、ベーシックインカムとの違いは「お金を受け取る条件の有無」です。 

生活保護を受給するためには収入面をはじめとした様々な条件があり、それらを満たさなければなりませんが、ベーシックインカムは収入や保有している財産に関わらず、全ての人に平等かつ無条件で現金が支給されます。 

ベーシックインカムはどうして話題になったのか 

ベーシックインカムは、新型コロナウイルスが世界的なパンデミックを起こしたことにより、多くの人の雇用が失われたり労働時間が制限されたことによって収入が減ってしまったことをきっかけに、注目されるようになりました。 

多くの人は仕事をしていても収入が減っており、現状の社会保障制度によって救済を受けることができないため、生活困窮者が急増することになりました。 

そういった中で、政治家や有識者が「ベーシックインカム」に注目するようになり、国によっては実際に制度を導入を始めています。 

ベーシックインカムを導入している国は? 

ベーシックインカムは、世界的に見ても本格的に導入している国は、アメリカやドイツ、イタリア、オランダなど数える程度です。また、導入している国の中には「試験的に」導入しているところばかりであり、本来の意味である無条件の支給ではなく何かしらの条件をクリアした人に支給する仕組みになっています。そのため、完全なベーシックインカムを導入している国はありません。 

例えば、2017〜2018年の2年間に渡って制度を導入したフィンランドでは、失業者の中から無作為に2000人を抽出し、失業手当と同等である金額(日本円で73,000円ほど)を毎月支給したようです。本来の制度である「性別や年齢関係なく全員」ではありませんが、支給された人に調査をしたところ、労働意欲や雇用の促進に影響はあまりなかったものの、ストレスが軽減されたことで幸福度が向上したという結果が出ています。 

なお、これは新型コロナウイルスが流行する前の話なので、2020年以降に支給していたら、結果は変わっていたかもしれません。 

日本の場合 

日本では、ベーシックインカムは導入されていません。しかし、日本ではコロナ禍の「緊急経済対策」として国民全員に10万円が支給されました。これは、いわゆる「一時的なベーシックインカム」は経験しています。この10万円ような「国民全員に一律の金額が支給されること」が継続的に続くことがベーシックインカムだというイメージをすると、わかりやすいのではないでしょうか。 

ベーシックインカム導入のメリット・デメリット 

ここからは、ベーシックインカムのメリット・デメリットについて解説します。今後、ベーシックインカムに対して「賛成か」「反対か」などご自分の意見を考える上では、メリット・デメリットを理解しておくことが重要です。

メリット 

①貧困問題の解消 

ベーシックインカムを導入する最大のメリットは、最低限の生活を維持することができるようになることです。ベーシックインカムを導入することでお金の不安が解消されるため、多くの人が日常をポジティブに過ごすことができるようになります。また、趣味や自己投資に時間とお金を使うことができるため、優秀な人材が育つことにもつながります。 

さらに、金銭面が不安で子どもを産み育てる自信がなかった人でも、安心できる材料となることが期待できます。 

②長時間労働の削減 

ベーシックインカムによってある程度の収入が保障されることで、多くの人が「生きるために働く」ような状態から脱することができます。安心・安全な働き方が実現できるようになるため、良い意味での「働き方改革」につながっていきます。また、仕事に対するモチベーションも方向性が変わる(お金儲けから違う方向性)可能性があるため、私たちの生活がより良くなるものも開発されるようなケースが考えられます。 

③多様な働き方が可能 

一定の収入があることから、フルタイムだけの仕事ではなくパートタイムや副業など幅広い仕事の選択肢が増えて、家庭環境の改善や健康状態などが良くなったり、現状よりも余裕を持って働くことができるようになることが期待できます。 

また、収入が安定することで「本当に自分がやりたいこと」に集中できる環境が整うこともメリットとして考えられます。 

④生活保護の不正受給問題の解決 

ベーシックインカムは、現在問題となっている「生活保護の不正受給」の解決につながることが期待されています。国民全員を対象として支給されるものであるため、これまでのように不正を考えたり、支給額によっては不正するほどのことができなくなる可能性が考えられるためです。 

⑤社会保障制度が簡素化できる 

国民全員に一律支給するベーシックインカムは、支給要件の確認などに関する行政事務がほとんど不要になること、年金や生活保護を全てまとめることが可能になるというメリットが考えられます。 

そのため、支給スピードが上がったり金額の変更に柔軟に対応できるでしょう。 

デメリット 

①労働意欲や競争意欲の低下 

ベーシックインカムが導入されることで、労働意欲や他者との競争意欲が低下する可能性が考えられます。「何もしなくても現金が手に入る」「生活できる程度の収入が手に入る」ということがわかっているため、「わざわざ働かなくても良い」「努力して人よりも優位に立つ必要はないのではないか」という感情が芽生える可能性は否定できません。 

②財源の確保が難しい 

ベーシックインカムを実際に行うためには、莫大な費用が必要です。これまでの生活保護などのようにある程度の条件の人にだけ保障を行うわけではないので、金額等を慎重に考えたり時代に合わせて柔軟にやらなければ、すぐに国が財政破綻してしまうでしょう。 

月に数万円を支給するために、100兆円規模の予算を立てなければならないなど、財源確保には苦労することがあるかもしれません。 

③適切な金額の算出が難しい(固定できない) 

ベーシックインカムは、時代の流れや財政状況などから柔軟に算出する必要があります。そのため、金額を固定することができません。その時々の生活状況等を考慮して、柔軟かつ迅速に判断していくスピードが求められます。 

大切なことは「最低限生活に必要な金額の支給を受けられる」ことです。物価等の状況を考えながら算出しなければなりません。 

④増税する可能性がある 

ベーシックインカムを行うためには、それ相応の費用が必要になります。財源確保をするために考えられるのは、「増税」が考えられます。 

ベーシックインカムを得られる分、増税というマイナスがある可能性は認識しておくと良いかもしれません。 

⑤自己責任が求められる 

ベーシックインカムによって既存の社会保障制度が廃止されたり縮小される場合、老後や病気などに対する貯蓄が必要になります。それらは自己責任となるため、注意が必要です。 

また、病気や障害などによって「自己責任が取れない」という人たちへのサポートも必要になりますので、そう言った点では専門的な人材確保も必要でしょう。 

ベーシックインカム導入による私たちへの影響 

ここまで、ベーシックインカムの仕組みやメリット・デメリットを解説しました。では、実際にベーシックインカムを導入することで私たちにどのような影響があるのでしょうか。 

セミリタイアが目指しやすくなる 

近年、若者で「セミリタイア」を目指す人が増えています。実際にベーシックインカムが導入されると、無条件で最低限の生活に困らない程度の収入を得ることができるため、「生活のために働く」ということはなくなります。そのため、「挑戦したかったけれど諦めた」ということにチャレンジしやすくなることが考えられます。そのためパートやアルバイト、副業などをやりながらいろいろなことに挑戦する機会は増えるでしょう。 

雇用に影響が出る 

現在、「生きるために働く」人はとても多く、どれだけ辛くても働き続けなければならないことがほとんどでしょう。しかし、ベーシックインカムが実現すれば、最低限の生活費を国が支給してくれるため、無理して働く必要はなく、企業としても不要な人材を雇い続ける必要がなくなります。現在、法律によって雇用を維持する役割を担っているわけですが、そういったことも改められるようになります。 

ベーシックインカムが導入されるのはいつ? 

ベーシックインカムはまだまだ導入が議論されていますが、日本では実現するのでしょうか。日本で実現するためには数々の壁を越えなければなりませんが、特に考えるべきことは「財政問題」です。 

ベーシックインカムは、月に7万円を国民全員に配ろうとすると年間で100兆円規模の予算が必要になります。100兆円を賄おうとすると、増税だけでなく他の予算も割り振らなければ賄うことができません。また、その予算を毎年確保し続けなければいけないため、現実的とは言えません。 

さらに、それらの財源を確保するための増税やその他の制度の廃止などに対して国民からの合意を得る必要があることから、簡単には導入できるわけではないかもしれません。しかし、時間とお金をかけて制度を整えることと多くの人が納得できるようなシステムを構築することができれば、ベーシックインカムは不可能ではありません。 

当分は自力でベーシックインカムを 

前述した通り、ベーシックインカムの導入は不可能ではありません。しかし、数年後に行われるわけではないと考えられます。そのため、まずは自力で資産運用などをうまく活用しながら「セルフベーシックインカム」をできるよう準備しておくと良いでしょう。 

将来的に自分や家族が生活に困ることのない程度の準備をしておくだけでも、万が一の時に気が楽になりますよ。 

ベーシックインカムの導入実現は遠くない 

新型コロナウイルスの感染拡大によって注目されるようになったベーシックインカムですが、この「夢物語」のようなシステムをどう実現していくかを考えていくことが重要です。 

毎月数万円が全員に支給されるという理想的なシステムの裏には、増税であったり社会保障制度を根本的に改革したり、生活保護や年金をもらっていた頃よりも減額してしまうことが考えられます。それらを受け入れられるかどうかなど、議論すべきことは数多くあります。 

いざ、「ベーシックインカムに賛成?反対?」と意見を求められたとき、周囲の意見に流されることなく自分の意見をしっかり伝えられるように、この機会にベーシックインカムのことを理解しておきましょう。 

全員に支給されるからこそじっくりと考えよう 

今回は、ベーシックインカムの仕組みやメリット・デメリットなどについて解説しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、思いがけず職を失ったり職はあるけれど生活でいないという生活困窮者たちが生まれたことで、ベーシックインカムはとても具体的に考えるべきという議論の声が聞かれます。 

いざ、ベーシックインカムが本格導入されたとしても財政的な厳しさはついてまわることが考えられるため、「ベーシックインカムを導入したことによって辛い思いをする人」があまり現れないよう、爪の甘いようなことがないように制度を構築しておくことが必要です。 

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