2023年11月にCOP28が開催!注目のグローバルストックテイクとは?

COP28は2023年11月30日~12月12日の日程で、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されます。

先日、岸田首相が出席の意向を示すなど、開催が近くなり日本でも関心が高まっています。しかし、以下のような疑問を持っている方もいるでしょう。

  • 日本はどのような気候変動に取り組んでいるの?
  • COP28で注目されているテーマはなに?

そこで本記事では、COPの概要とCOP28で注目されるポイントをわかりやすく紹介します。

COPとはなにか

COP(コップ)とは、「Conference of the Parties」の略で、条約を締結した国家の会議である「締結国会議」を意味します。一般的にCOPといえば、国際気候変動枠組条約(UNFCCC)のCOPを指し、気候変動の対応策について議論する会議のことです。

ただし、そのほかにも生物多様性条約(CBD)や砂漠化対処条約(UNCCD)など、多くの国際条約の最高決定機関としてCOPが設置されています。COPでは、各条約の目標実現に向けた国際的なルール作りが行われています。

なおCOP28の「28」は、28回目という意味です。

1995年のCOP1(ドイツ)からほぼ毎年開催

国際気候変動枠組条約は、1992年に採択されました。1995年のドイツのCOP1以降、ほぼ毎年開催されています。例えば1997年の京都のCOP3では、「京都議定書」が採択されました。

節目になったのは、2015年のフランスのパリで開催されたCOP21です。

COP21では「パリ協定」が採択され、「世界の平均上昇を産業革命以前より2℃抑える。1.5℃に抑える努力を追求する」という地球温暖化対策の目標が掲げられました。

日本:中期目標として、2013年比で26%削減

「パリ協定」では、温室効果ガスの排出削減の目標を定めています。COP3の「京都議定書」は先進国のみが対象だったのに対して、「パリ協定」は発展途上国を含む、すべての温室効果ガスの主要排出国が対象になったのが特徴です。

日本は「パリ協定」において、2030年度までに2013年比で26%の温室効果ガス削減を目標としました。日本の2013年から2021年までの、温室効果ガス排出・吸収量の推移は以下のとおりです。

出典:環境省「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要

2021年の温室効果ガス排出量は11億2,200万トンで、2013年比で20.3%減を達成しています。そこで、日本は野心的な目標として2030年に温室効果ガスを2013年比で46%を削減し、さらに50%の削減を目指して挑戦し続けることを表明しています。

なお各国の温室効果ガス削減目標と2016年度時点の削減実績、進捗状況は以下のとおりです。

温室効果ガス削減目標2016年度時点の削減実績進捗状況
日本2030年度に2013年度比で26%の削減7%の削減〇目標ラインと同水準
イギリス2030年度に1990年で57%の削減41%の削減〇目標ラインと同水準
アメリカ2025年に2005年比で26~28の削減12%の削減△目標ラインから上ぶれ
フランス2030年に1990年比で40%の削減18%の削減△目標ラインから上ぶれ
ドイツ2030年に1990年比で55%の削減27%の削減△目標ラインから上ぶれ

参考:経済産業省「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?

28回目になるCOPの注目されるポイント

COP28で注目されているのは、グローバルストックテイク(GST)です。

グローバルストックテイクとは、パリ協定の目標に対して、どの程度達成できたのかを評価する仕組みです。COP28で第1回GSTを実施し、あとは5年ごとに行われます。

パリ協定の目標の達成には、現在の各国の削減目標では不十分※との声があります。GSTの結果を受けて、COP28でどのようなメッセージを発表するのか、または各国の削減目標が引き上げられるのかなどに注目が集まっているのです。

※気候変動政府間パネルは、現在の削減目標について「極めて不十分」と指摘している

パリ協定の1.5℃目標

COP28のポイントは、パリ協定の1.5℃目標の実現に向けた取り組みです。

パリ協定の目標は、地球の平均気温の上昇を産業革命の前と比較して1.5℃に抑える努力を追求することです。しかし、すでに地球の平均気温は約1.1℃上昇しており、1.5℃に抑えるには、2050年ごろまでに世界の温室効果ガスの排出ゼロが必要といわれています。

そのため、各国や非国家アクターがカーボンニュートラルを目指して様々な施策を推進しています。これらの取り組みがGSTにより評価され、今後の取り組みにどのように影響するのか注目されているのです。

※非国家アクターとは、国・政府以外の行為主体のことで、企業・投資機関・市民団体などを指す

日本の脱炭素化への取り組み

日本は2020年10月に、2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言しました。その達成に向けた道筋として、2020年12月に「グリーン成長戦略」を公表しています。

グリーン成長戦略は、成長が期待される14の重点分野を選定し、金融・予算・補助金などにより支援する政策です。脱炭素電源の拡大や、脱炭素電源を使った電化・水素化・メタネーション・合成燃料などの推進が期待されています。

とくに、化石燃料に頼っている電力を脱炭素化できるかが注目ポイントです。

議長国UAEのエネルギー戦略

COP28の議長国UAEは、世界5位の原油輸出国です。そのため、脱炭素社会の実現を求めるCOPとUAEは、利益が相反すると思われるかもしれません。しかし、UAEは産油国でありながら、再生可能エネルギーの導入を促進するなど「脱石油」に力を入れていることで知られています。

UAEのエネルギー戦略は以下のとおりです。

  • 2050年に温室効果ガスの排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすると宣言
  • 2030年までの温室効果ガスの削減目標を31%に引き上げ
  • 2050年までにクリーンエネルギーに1,630億円の投資
  • 2050年までに年間1,400~2,200万トンのクリーン水素を製造

UAEは様々な戦略・政策で「グリーン成長」に言及しており、大規模なプロジェクトを進行しています。

世界最大級の太陽光発電所建設など新たなプロジェクトが進展 

UAEは「砂漠地帯が多い」「地価が安い」「豊富な日射量がある」という特徴を生かして、世界最大級の太陽光発電所の建設を進めています。具体的には300万枚の太陽光パネルにより、UAEの電力需給量の25%にもなると見込まれています。

これにより、国内のエネルギー消費をできる限り再生可能エネルギーにシフトする予定です。加えて、太陽光発電の容量が増えることで、グリーン水素製造に向けた取り組みも積極的に推進していく予定です。

まとめ

COP28は、2023年11月30日~12月12日にUAEで開催されます。産油国のUAEが議長国になることで、脱炭素に向けた議論が骨抜きにされるのではないかとの懸念もあります。しかし、UAEはもともと脱石油に積極的なため、世界が一体となった議論ができるでしょう。

またグローバルストックテイクによる目標達成の進捗状況の評価から、今後の行動の指針について、どのようなメッセージが打ち出されるのかについても注目されています。

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