2025年トランプ関税政策の動向まとめ

2025年の世界経済を語る上で、欠かせないテーマがトランプ関税です。この政策の実施により、米中関係は再び悪化し、各国でサプライチェーンの見直しが進むなど、日本経済にも大きな影響を与えました。本記事では、2025年に実施されたトランプ関税政策を時系列で整理するとともに、主要国・地域がどのように対応したのかをわかりやすく解説します。

【時系列】2025年トランプ関税政策の動向

2025年、米国大統領に返り咲いたトランプ大統領は、自国産業の保護や貿易赤字の是正を目的に、「トランプ関税」を実施。毎月のように新たな動きが見られ、2025年の世界経済の不確実性を高める主な要因となりました。ここでは、2025年のトランプ関税の主要トピックを、時系列に沿って振り返ります。

1月:トランプ政権の誕生

2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代米国大統領に就任しました。同氏は「米国第一主義」を掲げ、移民規制の強化や貿易相手国に対する関税施策など、強硬な政策方針を打ち出しました。

トランプ氏は第1期政権時代も中国を中心に高関税政策を実施し、米中関係の悪化を招いた経緯があります。そのため、再び米国の関税政策によって国際経済に混乱が生じるのではないかとの警戒感が広がりました。

2月:カナダ・メキシコ・中国への関税を開始

2月、カナダ・メキシコ・中国を対象に追加関税を発動しました。この措置は各国から強い反発を招き、特にカナダでは対米感情が大きく悪化。その影響は政治にも及び、4月28日に行われたカナダ総選挙では、米国の関税政策に対して強硬姿勢を示していたマーク・カーニー氏が勝利しました。こうした動きから、トランプ関税は中国だけでなく、長年の同盟国であるカナダとの関係にも軋轢を生じています。

3月:アルミニウム製品の追加関税を25%に引き上げ

3月、アルミニウム製品への追加関税を10%から25%へ引き上げました。このようにトランプ関税の特徴は、国・地域別の措置にとどまらず、特定の産業を対象に高い関税を課すことで、自国産業の保護を強力に推し進めている点にあります。この施策はEUからも反発を招きました。

4月:100カ国以上への追加関税を発表

4月、米国は全ての輸入品に対して10%の基本関税をかけ、57カ国に対してはさらに追加関税を上乗せすることを発表しました。

この段階で発表された日本への追加関税は24%です。

世界100カ国以上の基本関税を引き上げることを発表したことで、世界経済に大きな混乱をもたらしました。この時点では10%の基本関税の引き上げが実施され、追加関税については交渉の余地が残されました。

7月下旬~8月初旬:各国との交渉妥結と本格運用

トランプ米大統領は7月初旬以降、貿易相手国に対して相次いで新たな関税措置を通知。日本には、8月1日から25%の関税を課す方針が通告され、当初の24%から引き上げられたことで大きな波紋を呼びました。

この通告を受け、日米間の交渉が加速。最終的に7月23日に追加関税を15%とすることで合意しました。

8月7日には69カ国を対象にトランプ関税の追加関税が引き上げられ、本格的な運用段階へと移行しました。

参考:ツギノジダイ「トランプ関税の10月時点の最新状況 日本への影響をJETROが解説

10月:特許医薬品・大型トラックに追加関税を導入

8月の本格運用以降もトランプ関税の変更は続き、10月1日からは特許医薬品に100%、11月1日からは大型トラックに25%の関税を課しています。これにより、トランプ関税政策は、製造業だけではなく、医療や物流といった社会インフラ分野にも波及しました。

10月:米中首脳会談の結果一部の追加関税引き下げ

トランプ関税の発動以降、米中関係は報復関税の応酬が続くなど関係が悪化。そのような中、10月30日に米中首脳会談が行われました。その結果、フェンタニル流入への対策強化に加え、レアアース輸出規制の1年間延期や大豆などの米国の農産物を中国が輸入することを条件に、フェンタニル関税が20%から10%へ引き下げられました。

フェンタニル関税とは、合成麻薬フェンタニルの米国への流入を理由に、カナダ・メキシコ・中国に課されているトランプ関税のことです。米国では薬物の過剰摂取による年間死亡者数が約10万人に達しており、その主因の一つが合成麻薬フェンタニルとされています。こうした深刻な社会問題を背景に、米国は流入元とされる国々に対して厳しい措置を講じてきました。

このように、2025年後半には、激化していた米中対立が一部で軟化する兆しも見られています。

参考:ビッグイシュー「関税では解決しない米国のオピオイド危機ー年間10万人が死亡

【国・地域別】トランプ関税政策への対応

ここからは、中国・カナダ・EU・日本・ASEANがトランプ関税に、どのように対応したのかを解説します。

中国|強硬姿勢を示しつつ対話も模索

中国はトランプ関税の発動を受け、対抗措置として報復関税を実施しました。その結果、報復関税の応酬が続き、一時は関税率が100%を超える事態にまで発展しました。

そのような中、5月に行われた協議を経て、双方は報復関税をいったん撤廃。しかし、中国が10月に「レアアースの輸出規制の強化策」を発表したことで事態は悪化します。これに対し、トランプ米大統領は再び100%を超える追加関税を課す方針を示し、米中関係は緊張状態に陥りました。

しかし、その後10月30日に米中首脳会談が実施され、関税の一部引き下げが合意されるなど、米中対立は次第に軟化しています。

このように中国の対応の特徴は、強硬な姿勢を維持しつつも、同時に対話による関係改善を模索する姿勢を見せている点です。

カナダ|同盟国としての反発と協議

カナダは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であり、米国と長年にわたる同盟関係を築いてきました。そのカナダに対して米国が厳しい関税政策を打ち出したことで、カナダ国内では反米感情が高まっています。

実際に、3月にはカナダがトランプ関税の25%に対抗し、同率の報復関税を発動しました。一方で、9月には報復関税の多くを撤廃し、米国との交渉を優先する姿勢へと転換しています。

また、現在注目されているのは米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しです。USMCAは2020年に発効した北米地域の自由貿易協定で、2026年に見直しが予定されています。トランプ関税によって各国の関係に亀裂が生じる中、今後の交渉の行方に関心が集まっています。

参考:Bloomberg「カナダ、対米報復関税の多くを撤廃-トランプ政権に歩み寄り

EU|自由貿易協定による貿易連携の模索

EUは4月、トランプ関税への対抗措置として報復関税を課す方針を発表しました。ただし、実際には米国との交渉に向けて、発動を一時停止。その結果、最終的にEUは関税率15%で米国と合意しています。

一方、EUでは自由貿易協定(FTA)を推進する動きが活発化しています。具体的には、メキシコやインドネシアとのFTAが進められており、協定の対象地域はさらに拡大する見込みです。このようにEUは、米国以外の国・地域との貿易連携を強化する動きを加速させています。

また12月には、EUのIT規制をめぐり米国が批判を強め、対抗措置を講じる可能性を示しました。米欧関係における新たな火種として、今後の動向に注目が集まっています。

日本|政府対応と日本企業への影響

日本政府はトランプ関税に対し、日米同盟を重視しながら影響の最小化を図るため、米国との協議を重ねてきました。対象品目や関税率の引き下げを要請した結果、当初24%とされていた日本への追加関税は、15%まで引き下げられています。併せて、米国の関税措置に対応するため、国内企業への支援策も実施しています。

ASEAN|生産移転先としての存在感拡大

米国向けに製品を製造・輸出する企業の間では、トランプ関税の影響を受けにくい地域へ生産拠点を移す動きが広がりました。その有力な移転先として注目を集めたのがASEANです。日本企業においても、中国に加えて別の地域へ拠点を分散させる「チャイナプラスワン戦略」への関心が高まっています。こうした流れを受け、ASEAN各国では企業・サプライチェーン誘致を強化する動きが一段と活発化しています。

トランプ関税は2026年も世界経済の重要テーマに

トランプ関税は、2026年も世界経済を左右する重要なテーマとなる見通しです。

今後の動向の中で特に注目されているのは、トランプ関税の合憲性について米連邦最高裁判所が下す判断です。遅くとも2026年6月までに示されると見られており、その内容次第では、関税政策の継続や見直しに影響を及ぼす可能性があります。

2026年も各国政府や企業は、こうした司法判断を含む情勢の変化を注視しながら、状況に応じた対応を迫られることになるでしょう。

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