アメリカが主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)とは?

2023年11月13日からアメリカで「IPEF」の会合が開催されました。

IPEFはアメリカが主導する経済圏構想です。しかし、「何を目的としているの?」と感じている方もいるでしょう。

本記事ではIPEFの概要やメリット・デメリット、アメリカが発足を呼びかけた理由をわかりやすく解説します。

インド太平洋経済枠組み(IPEF)とは?

IPEFは、(Indo Pacific Economic Framework)の頭文字を取った言葉で、インド太平洋経済枠組みを意味します。2022年5月23日、アメリカのバイデン大統領の呼びかけにより発足した新たな経済圏構想です。IPEFを理解するのに重要なポイントは、「参加国」と「4つの柱」です。 

IPEFの参加国

IPEF(インド太平洋経済枠組み)の名前のとおり、インド太平洋地域における経済圏構造の構築を目的としています。そのため、参加国はインド太平洋地域の周辺国が中心です。

IPEFの参加国は14カ国

・アメリカ
・インド
・インドネシア
・オーストラリア
・韓国
・シンガポール
・タイ
・日本
・ニュージーランド
・フィジー
・フィリピン
・ブルネイ
・ベトナム
・マレーシア

IPEFの4つの柱

IPEFの協議分野は以下の4つで、「4つの柱」と呼ばれています。

・貿易

・サプライチェーン

・クリーン経済

・公正な経済

各分野の協議内容や進捗状況について解説します。

貿易

「貿易」では労働・環境・デジタル経済・農業・透明性などに関する協議をしています。例えば、税関のペーパーレス化や貿易の手続きのオンライン公表などです。

2022年11月に開催された会合では、貿易分野の妥結に至りませんでした。まだ各国の意見に隔たりがあります。また貿易分野において、関税引き下げを協議しないのもIPEFの特徴です。

サプライチェーン

「サプライチェーン」は、4つの柱のうち最も早く妥結した分野です。重要な品目の流通に混乱が生じた場合は、各国が協力して供給し合い対応することになりました。例えば、半導体や鉱物が紛争などで流通がストップしても対応できるようになります。

クリーン経済

2023年11月16日、IPEFの会合において「クリーン経済」が実質妥結しました。参加国が脱炭素に向けた取り組みを推進することで合意しています。妥結により同分野において、一層の技術開発や技術協力を推進するとみられています。

公正な経済

クリーン経済と同様に、2023年11月16日に「公正な経済」も妥結しました。汚職の防止や摘発といった腐敗行為への対策や、税制に関する透明性の向上、情報交換などについて合意に至っています。

アメリカがIPEFの発足を呼びかけた理由

インド太平洋地域で影響力を強める中国の対抗措置として、アメリカはIPEFを立ち上げたと考えられています。アメリカがIPEFの発足を呼びかけた理由を、2つの経済協定から紐解きます。

RCEPの台頭

RCEPは日本や韓国、中国、ASEANなど15カ国が参加している包括的経済連携協定です。インドがRCEPの参加を見送ったことから、参加国のなかで最大の市場規模を持つ中国の影響力が強まりつつあります。つまりRCEPが台頭するほど、中国が影響力を増すと考えられています。

RCEP参加国のGDPの合計は世界全体の約3割を占めています。また日本の貿易額の5割はRCEP参加国との貿易です。日本にとってRCEPは関税の撤廃により、日中韓の貿易を促進できるというメリットがあります。

日本にはメリットのあるRCEPですが、アメリカは中国の影響力が増すのを懸念しています。

TPPからの離脱

アメリカは、環太平洋パートナーシップ(TPP)の設立を目指していました。しかし、前大統領のトランプ氏が離脱を表明したことで、アメリカの同地域における影響力は弱まったといえるでしょう。

反対に中国がTPPに加盟を申請しており、もし中国が加盟することになれば、巨大な経済圏が誕生します。このように、アジア地域を中心としたRCEPやTPPに対抗するために、アメリカはIPEFを立ち上げたのです。

IPEFとTPPの違い

IPEFとTPPはどちらも経済圏構想ですが、大きな違いは関税の撤廃を目指しているかどうかです。TPPは参加国間の自由貿易を目指すのに対して、IPEFは4つの柱で経済的な協力があるものの、関税の引き下げについての議論はされていません。

それには、前大統領のトランプ氏がTPPを離脱した経緯が関係しています。トランプ氏により、「アメリカにとって関税撤廃は利益にならない」という考え方が浸透しているためです。そのため、バイデン大統領になった現在でもTPPへの復帰は難しいのが現状です。

IPEFに参加するメリット・デメリット

我が国を含めて14カ国がIPEFに参加しています。この章で、参加国のメリット・デメリットについて解説します。

メリット① 脱中国依存

参加国の1つ目のメリットは、脱中国依存ができることです。新型コロナやウクライナ侵攻などにより、1つの国に依存した経済は大きなリスクがあると認識されました。そのため、現在の中国に依存した経済からの脱却を図るために、IPEFに参加するのは意味があります。

メリット② サプライチェーンの確保

現代社会において、半導体や鉱物などは国家戦略に関わるほど重要な資源です。新型コロナやウクライナ侵攻は、このような半導体や鉱物などのサプライチェーンに大きな混乱をもたらしました。

今後も感染が増加するかもしれませんし、地政学的リスクでサプライチェーンが機能しなくなる可能性もあります。

そこで、IPEFでは信頼できるサプライチェーンの構築を目指しています。強固なサプライチェーンを構築することで、地政学的リスクを下げられるのがメリットです。

デメリット① 関税撤廃を協議対象としない

IPEFが関税を撤廃し、世界1位の規模を誇るアメリカの市場が開放されれば、参加国にとって大きなチャンスになるでしょう。しかし、実際は関税撤廃を議論対象としていません。

参加国はIPEFに加盟することで様々な規制が増えるのに対し、関税撤廃がないと加盟するうま味が小さくなります。アメリカ以外の国にとって、関税撤廃を議論しないのはデメリットといえます。

4つの柱のうち残るのは「貿易」 

2023年5月に「サプライチェーン」、11月に「クリーン経済」と「公正な経済」が妥結しました。4つの柱のうち、妥結できていないのは「貿易」のみです。

データ流通に関するルールや強制労働による製品の輸入禁止などで、各国の隔たりを埋められなかったためです。「貿易」の妥結については、2024年のIPEFの会合に持ち越されることになりました。

まとめ

2023年11月に開催されたIPEFの会合では、4つの柱が妥結するかに注目が集まっていました。結果は、「貿易」のみが各国間の隔たりが大きく、次に持ち越されています。

TPPに中国が加入申請し、アメリカが関税撤廃に消極的な姿勢を示すなか、IPEFが妥結できるかに注目が集まっています。

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