ASUS(エイスース)は台湾に本社をおくPC・PCパーツメーカーです。マザーボードやハイエンドPCに強みを持っています。
PCパーツメーカーとして長年トップクラスの業績を誇っているため、ビジネスパーソンにとって、同社の事業内容や成長戦略は参考になる点も多いでしょう。本記事ではASUSの会社概要や事業内容、成長戦略について紹介します。
ASUSとは
出典:ASUS「About ASUS History」
ASUSの呼び方はエーサスやアサスなどさまざまな呼び方がありましたが、2012年に公式にエイスースと統一されました。この章では「ASUSはどんな企業なの?」という疑問をお持ちの方に向けて、ASUSの概要について詳しく紹介します。
会社概要
ASUSの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | ASUS(ASUSTEK COMPUTER INC.) |
本社 | 台湾 |
設立 | 1989年 |
売上高 | 4,934億台湾ドル(2022年) |
海外拠点 | アメリカ:10拠点 アジア:13拠点 中国:1拠点 ヨーロッパ:10拠点 |
従業員数 | 約12,500人 |
参考:ASUS「ASUSについて」
ASUSの歴史は、1989年にIBM製品に使用するマザーボード「ISA-386C」を発売したのが始まりです。その後、1995年に世界有数のマザーボードメーカーとなりました。さらには、1997年にノートパソコン、2003年には折り畳み携帯電話の販売を開始しています。
このようにASUSは30年以上の歴史があり、数多くのPCパーツやアクセサリーを販売しています。
企業理念
出典:ASUS「ASUSについて – 企業理念 – ASUS DNA」
ASUSの企業理念は、謙虚・誠実・勤勉・敏感・勇気を意味する「5つの美徳」です。さらに技術者・起業家・アーティストの異なる視点を身につけることで、デジタル新時代のリーディングカンパニーを目指しています。
事業内容
ASUSの事業内容は、主にパソコン・PCパーツ・スマホの3事業です。
・パソコン
パソコン事業では個人向けのノートパソコンやデスクトップ、ゲーミング用のハイエンドパソコン、商用パソコンを販売しています。
・PCパーツ
創業当初から開発・販売しているマザーボードをはじめ、グラフィックカード、自作PC用パーツを販売している事業です。
・スマホ
新たな成長分野として参入したのがスマホ事業です。スマートウォッチなどのウェアラブル端末の開発・販売も行っています。
・そのほか
ASUSはそのほかに、Windows搭載のポータブルゲーム機「ROG Ally」を販売しています。
ASUSの経営状況
ASUSの売上高の推移は以下のとおりです。
出典:ASUS「Business Highlights」
2022年は4,934億6,600万台湾ドルで前年比1.4%減でした。1台湾ドルを4.5円で換算すると2兆2,205億円です。やや減少しているものの、2021年は5,000億台湾ドルを突破し、前年比30%増を達成しています。このことから、高水準の売上を維持しているといえるでしょう。
また営業利益の推移は以下のとおりです。
出典:ASUS「Business Highlights」
2022年の営業利益は101億2,700万台湾ドル(約455億円)で、前年比79.0%減となりました。2020年と比較しても半分以下にまで営業利益が減少しています。このことから、現在のASUSの経営状況は売上を維持しているものの、利益率が急激に悪化しているといえるでしょう。主な要因として、近年の物価高騰が影響していると考えられます。
ASUSの売上に対する事業の構成比は以下のとおりです。
出典:ASUS「ASUSTEK 4Q 2022 Investor Conference」
パソコン事業が全体の67%を占めており、スマホ事業はわずか1%です。
地域別の売上高の割合はアジアが47%、ヨーロッパが30%、アメリカが23%でした。このことからASUSの主要市場はアジアといえます。
出典:ASUS「ASUSTEK 4Q 2022 Investor Conference」
ASUSの主力事業の現状
2022年は営業利益が減少したものの、売上高は維持しました。その売上を牽引しているマザーボードとパソコン事業の現状について詳しく解説します。
世界のPCの3台に1台がASUS製マザーボードを搭載
ASUSは2008年にマザーボードの売上個数が2,400万個を超え、現在でも世界シェアの約40%を占めています。
PCパーツ専門誌の「Tom’s Hardware Guide」では、6年連続で「ベストマザーボードブランド」にASUSを選出しました。このように、ASUSのマザーボードは機能性の高さで人気があり、パソコンの3台に1台がASUS製を使用しているとされています。
日本国内においてもASUSのマザーボードは人気が高く、「BCN AWARD 2024」によるとASUSの国内シェアは35.4%でトップでした。次いでASRockの33.7%、MSIの24%が続きます。また「BCN AWARD」のマザーボード部門において、ASUSは18年連続受賞しています。
※BCN AWARDとは、全国の量販店のPOSデータに基づいて販売台数1位の企業を表彰する賞です。
PCの世界シェアで5位を獲得
ASUSの売上高の60%以上を占めているのはパソコン事業です。そのASUSのパソコンは世界シェアで5位を獲得しています。パソコンの世界シェアランキングは以下のとおりです。
順位 | メーカー | シェア率(2022年) | シェア率(2021年) |
---|---|---|---|
1位 | Lenovo | 23.3% | 23.4% |
2位 | HP Inc. | 18.9% | 21.1% |
3位 | DELL Technologies | 17.0% | 16.9% |
4位 | Apple | 9.8% | 8.0% |
5位 | ASUS | 7.0% | 6.2% |
このように海外においてASUSはパソコンメーカーとして定着しています。
ASUSの今後の成長戦略
2022年のASUSは営業利益が激減しました。さらに2022年第4四半期の報告書において、2023年第1四半期の主要事業が-5%から-20%も減少すると見込まれるほど、環境が悪化しています。
そのようななかでASUSは今後の成長戦略として「Growth Enterprise Transformation(成長企業への変革)」を掲げています。成長企業への変革のイメージ図は以下のとおりです。
出典:ASUS「ASUSTEK 3Q 2023 Investor Conference」
具体的には商用パソコンを2倍、AIoTやAI Serverを5倍に成長させることを目標としています。
※AIoTとはAIとIoTを組み合わせた造語です。
これらの取り組みにより、ASUSは2023年第1四半期で2期連続の赤字に陥ったものの、第2四半期以降で回復傾向をみせています。
出典:ASUS「ASUSTEK 3Q 2023 Investor Conference」
ASUSはマザーボード・PCの世界的企業
ASUS(エイスース)は台湾に本社をおく、マザーボード・PCの世界的企業です。スマホ事業ではZenfoneなども販売していますが、売上高全体の約1~2%と苦戦しているのが現状です。同社は今後の成長産業として商用PCやAIoT事業に期待を寄せています。AIoTは、パソコン業界だけでなく他の業界でも取り入れられるアイデアなので、注目してみてはいかがでしょうか。